自国から去りたかったので、怪しい求婚だけど受けました。

しゃーりん

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お前が何かしたのだろう?と言うようなアミディアの視線を受けて、オルビスは笑うのを止めて答えた。


「そうだな。もう婚約もしたし、君が知りたがっているいきなり求婚した理由を話そう。」


庭園にある東屋に座り、オルビスは話し始めた。
 


オルビスがアミディアの国を訪れる少し前、オルビスの前婚約者である王女が嫁いでいった国の友人から極秘で話を聞いた。
王女の夫が浮気をして別の女性を妊娠させたらしい。
王女との間にまだ子供はなく、王女は怒り狂っているという。
このまま離婚してしまっては王女が負けたみたいになるし、その女と再婚させるのも腹立たしい。
かと言って、夫を許せるかといえば難しい。
国に戻って出戻り王女と言われるのも我慢ならない。

そこで王女は思いついた。
まだ独身であるオルビスと結婚すればいい、と。

  *  *  *

元々婚約者であったオルビスは王女のことを愛していたけれど、王女の恋を応援して身を引いた。
だが、王女を忘れることができずに独り身のままでいる。
ところが幸せな結婚をしたはずの王女が蔑ろにされていることを聞き、オルビスは決心した。

『愛する王女を自国に連れ戻し、私と結婚させてください』

王女の父親である国王にオルビスが直談判したことにより、王女は離婚を決意して帰国。
そしてオルビスに望まれて公爵家に嫁ぐ。

めでたしめでたし。

  *  *  *

ということを王女が画策していると聞き、国王から打診される前にひとまず逃げようと考えて、隣国を訪れるジムニーについて行くのが都合がよいと国から出た。
 
道中も隣国に着いてからも、どうやって王女との結婚から逃げようか考えていた。
だが余程でないとあの王女からは逃げられない。
隣国で失踪してしまおうか、あるいは恋に落ちたフリをして追いかけられる令嬢を誰かに依頼してみようか。
両親には説明してきた。
私が王女を苦手に思っていることも知っているし、両親も嫁にはしたくない。
このままオルビスが逃げても賛成してくれるだろう。
弟がいるし公爵家に問題はない。

そんなことを考えていた時に、プラチナの髪色が見えた。

人目を避けるように建物に近寄ってきた4人。上から見られていることにも気づかずに。
1人対3人で、1人の方のプラチナ色の令嬢が理不尽な言いがかりをつけられていた。

この国では避けられるプラチナ色。
昔会ったことのある、友人のランスロットの従妹が暮らす国。
あんなに見事なプラチナ色の令嬢がこの国に何人もいるとは思えない。
年齢的にもランスロットの従妹だろうと思った。

どんな女性になったのか、話してみたくなって声をかけた。

美しく成長したなぁと思っていたら、婚約を解消したばかりだと知った。
自国に嫌気がさして隣国に行きたいというアミディアに、縁を感じた。

今ここには、この国の王太子殿下もいる。
まず、侯爵令嬢であるアミディアとオルビスの結婚をこの国の王族に認めてもらう。
国に戻って国王から王女との結婚を打診される前に動く必要があり、『隣国で運命の出会いがあり求婚を受けてもらった』とそれとなく言いふらした後で国王に婚約の承認を申し出た。
隣国の王族も祝福してくれたと言葉を添えて。

ここまで整えられた状況で、『オルビスが王女を愛しているため独り身を貫き不遇の身となった王女に再度求婚した』などと国王も嘘を口にすることはできず、アミディアとの婚約を認めることになった。
 

アミディアはここまでの話を聞いて、あの唐突な求婚の裏話をようやく納得した。
 

 


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