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4.
しおりを挟むもう卒業パーティーは始まっている。
アミディアは婚約者であったサミールからエスコートをするという連絡は受けていない。
婚約解消の手続きはサミールに隠して行われたため、本人はまだ知らないはず。
本当にメレディスに言ったようにアミディアをエスコートするつもりだったのであれば、入口でずっと待っていたことになる。
もう入場は終えているだろうから、どうだったかはわからないけれど。
メレディスという令嬢は、サミールが親しくしている子爵令嬢。
2年ほど前から恋人のように寄り添い、サミールはアミディアを蔑ろにし始めた。
その傾向は、その1年ほど前からあった。つまり、学園に入学した頃から。
それまでは普通の仲の良い婚約者だったと思う。
月に一度のお茶会、誕生日の贈り物、観劇に行ったこともある。
サミールがアミディアを避け始めたのは、おそらく周りが私の髪色に忌避感があるため。
同級生たちがそんなにも嫌がるとはサミールは思ってもいなかった。
彼自身は、子供の頃に綺麗な色だと言ってくれたから。
やがてサミールはメレディスを隣に置き始めた。
アミディアの反応を窺うような素振りもあった。
だが、アミディアが何も言わなかったので、彼は引っ込みがつかなくなった。
アミディアはそれがわかっていた。
だけど、私の髪色を気にして離れるような婚約者とは結婚できないと思った。
アミディアは、両親に婚約解消を伝えた。
両親は、もう少し様子を見るように言った。
それからも事あるごとに、サミールの不実を伝え婚約解消をお願いした。
1年経って、ようやく両親も動いてくれた。
だが、相手は公爵家。
円満に解消しようとお願いしたが、公爵家からの返事は婚約継続。
何度もサミールの不実を理由に破棄ではなく解消でいいから、と頼んだがダメだった。
サミールが認めないらしい。
アミディアたちは呆れてしまった。
両親によると、2人の婚約はサミールが望んだことだったらしい。
特に政略結婚というわけではなかった。
サミールが認めない間、メレディス本人でもないのに婚約解消を迫ってくる令嬢たちもいる。
下位貴族が公爵令息に望まれているのに、婚約者が邪魔をしていると噂にもなっている。
なぜか、勝手にアミディアが邪魔していることになっている。
意味がわからない。
アミディアは婚約解消を望んでいるのに、認めないのはサミールの方だ。
やがて、サミールがメレディスと肉体関係を結んだと監視から報告があった。
卒業式のひと月前だった。
この裏切りに、公爵もさすがに婚約解消を認めた。
公爵はサミールがアミディアに嫉妬してほしいがためにメレディスを隣に置いているのだと思っていた。
息子の拗れた感情なのだとわかっていた。
サミールはアミディアが好きなのに周りに流されて離れてしまった。
髪色なんか気にする必要はないと言ってやりたいのに、アミディアは頼ってくれない。
他の女性といる姿に嫉妬してくれるのではないかと期待してもアミディアに反応がない。
サミールはアミディアの意識を自分に向けさせ続ける方法を尽く間違えたのだ。
結婚してしまえば、屋敷に閉じ込めてしまえば、自分だけのアミディアを愛でるつもりだった。
そんな独りよがりのサミールの愛をアミディアは気づいていたが、必要なかった。
髪色を批判される婚約者の側にいてくれることもない。
婚約者がいるのに他の女性と懇意になっている。
そのことで婚約解消を伝えても受け入れてくれない。
令嬢たちに批判されているのを知っていても事実を言う気もない。
公にアミディアと一緒にいる勇気もない男など、アミディアはとっくに見放していた。
公爵もサミールを見限り、公爵家の跡継ぎをサミールの弟へと代えることにした。
サミールには子爵位を渡すらしい。
その上で、子爵令嬢のメレディスと結婚すればいいとのことだった。
今日のパーティー前に国王陛下の許可の元、サミールとアミディアの婚約は解消された。
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