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しおりを挟む今日は午前中に学園の卒業式があり、夜は卒業パーティー。
この卒業パーティーは王城で開催され、卒業生やパートナー、両親だけの参加のため、通常の夜会よりも少人数のパーティーである。
少し早めに来ていた侯爵令嬢アミディアは、一人で庭園を散歩していたところ、同じく卒業した令嬢3人に捕まった。
彼女たちは、学生時代からアミディアに一方的に文句を言う。
「アミディア様、あなたがサミール様との婚約を解消しなかったからメレディス様が泣いていたわ。
『卒業パーティーは婚約者であるアミディアをエスコートしなければならない』と言われたって。
でも、『1曲ダンスを踊れば後は君と踊れる』とも言われたそうよ。」
「いい加減、婚約解消に同意するべきじゃないのかしら。
愛されてもいないのに、将来の公爵夫人にしがみつこうだなんて愚かだと思うわ。」
「そうよね。あ、このままアミディア様をどこかに隔離したらどう?
サミール様もアミディア様が見つからなければメレディス様をエスコートされるわ。」
……ちなみに、彼女たち3人は子爵令嬢と男爵令嬢。ここにはいないけれどメレディスも子爵令嬢。
アミディアは侯爵令嬢なのだけれど、学生時代は爵位の違いで虐げたり命令したりすることを禁止されていたため、親の爵位を気にすることなく過ごすことを推奨していた。
ただ、それは学生の間の話。
午前中に卒業式を終えたため、アミディアたちはもう学生ではない。
友人でもない格下の令嬢3人にアミディアが我慢する必要はもう、ない。
しかし、反論しようとした寸前、上から男の声が聞こえた。
「この国の令嬢は物騒なことを言うんだな。令嬢が令嬢を隔離?
監禁ってことだよな。
それって、この国では犯罪にはならないのですか?」
男は、最初は私たちのいる方に向かって話し、最後は一緒にいる誰かに向かって話したようだった。
男が2人、テラスから下にいる私たちを見ていた。その後、更に2人増えた。
「いや、わが国でも監禁は犯罪だ。」
そう言ったのは、王太子殿下だった。
その言葉と、言った人物が王太子殿下であったことに驚いたのか令嬢3人は震え始めた。
「それに、3人の令嬢たちはアミディア嬢より爵位が上の令嬢か?違うだろう?
私が記憶している高位貴族令嬢の中に君たちの顔は覚えがないからな。
侯爵令嬢相手に、よくそんな口の利き方ができるな。
卒業したら、もう学生ではない。一貴族として社交界に出ることになる。
卒業式で言われたことを聞いていなかったのか?」
学園長が卒業式に言った言葉の意味をちゃんと理解していなかったのだろう。
学生時代は大目に見られた言動も、一貴族となれば自分の言動は親兄弟にまで影響を及ぼす。
大目に見られてはいるが、卒業後の要注意人物としてチェックされていることには気づいていない。
彼女たちもアミディアの侯爵家では注意人物とみなされている。
「それになぁ、さっき名前が出てきたメレディス嬢?
君たち3人の誰でもないよな。
全く関係のない君たちがアミディア嬢を責める筋合いはないんだ。
そのメレディス嬢に頼まれてアミディア嬢を脅しているのか?」
令嬢たちは青い顔をしたまま答えない。
王太子殿下は一人の令嬢を指差して答えさせた。
「お、脅していたつもりはありません。
メレディス様に頼まれていたわけでもありません。
ですが……メレディス様が公爵家に嫁いだ後も私たちと仲良くしてくださると……」
「へー。サミールは本当にメレディス嬢と結婚する気だったのか?
それともメレディス嬢の思い込みだったのか?わからないがどうでもいいか。
3人の令嬢、パーティーに行っていいよ。
だが、今のことはそれぞれの親には報告させてもらう。
しばらく社交界には出られないかもしれないから、楽しんでくるといい。」
3人の令嬢たちは青い顔をしたまま逃げるように去っていった。
アミディアもお礼を言って去ろうと思ったが、その前に上から声がかかった。
「ちょっと、上がってきてくれないか?」
最初に聞こえた男の声だった。
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