出生の秘密は墓場まで

しゃーりん

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ある日、突然、ラルゴ殿下がここ数年の少女拉致・監禁事件に関与していたと広まったのだ。

そしてすぐ、エスメラルダの父ルース公爵は国王陛下に呼ばれた。

国王陛下は、憔悴していた。 


「……ルース公爵の耳にも入っているだろうが、ラルゴが取り返しのつかない犯罪に加担していた。
エスメラルダ嬢との婚約はこちら有責での破棄となる。すまない。手続きをしてから帰ってくれ。」

「わかりました。最後に一度、ラルゴ殿下にお会いしたいのですが。」

「……ラルゴに?わかった。面会を許可する。」


公爵は確認できる最初で最後の機会だと思った。

尋問が始まったばかりのラルゴ殿下は、隠す様子もなく話をしているとのことで一応まだ貴族牢にいた。
他の仲間は一般牢にいるのだろう。

人払いをし、鉄格子越しに面会した。


「……ラース公爵。」


ラルゴ殿下が驚いたように呟いた。


「一つだけ確認したい。エスメラルダに手を出したか?」

「……はい。」

「いつ?」

「……彼女の誕生日に。眠らせて。」

「それ一度だけか?」

「はい。13歳になってしまったから。」 


ラルゴ殿下が言うには、10~12歳の少女を愛でるのが趣味らしい。
なので、13歳になってしまったエスメラルダは対象外だが最後に手を出してみたくなったという。 


「婚約は解消しようと思っていました。僕は少女しか好きになれないから。」 

「……最悪なクズだな。いいか、尋問で絶対にエスメラルダのことは口にするな。わかったか?」

「ええ。彼女のことだけは墓場まで持って行きます。」


エスメラルダのお腹の子供の父親はラルゴ殿下だと判明した。
だが、ラルゴ殿下にも王家にもエスメラルダの妊娠を伝える気などない。
 
エスメラルダは婚約者の犯罪にショックを受けたことにして、領地へと行くことになった。





ラルゴ殿下と貴族数名、そして拉致の実行犯は一斉に捕まった。 

数年前から少女が行方不明になっていた。
歳頃は8~13歳くらいまでがほとんどで、貴族・平民の女の子だった。

聞き込みやタレ込み、ちょっとしたキッカケからようやくある屋敷が目星をつけられた。
そして見張りから少女が運び込まれたと情報を得て、突入が行われた。

他の貴族や実行犯が抵抗して逃げようとする中、ラルゴ殿下はおとなしく捕まったという。
 


ラルゴ殿下は、可愛い女の子を人形のように着せ替えするのが好きだった。
なぜかそういう性癖に目覚めた。そして同志がいるということを知った。

愛でたかったのだ。舐めても撫でても口答えしない女の子を可愛がっていた。
だが、10~12歳までが良かった。初潮を迎えた女の子は要らなかった。

単に愛でていただけだったのに汚したくなったのは、あの屋敷にいた貴族のせいだ。

泣かせることを好んでいた貴族が少女を犯していた。
その男曰く、少女は妊娠しないし泣き顔が一番そそる年齢なのだとか。

確かに、少しそそられた。

だが、今まで愛でていた人形のような少女を壊す気にはなれなかった。 

そんな時、エスメラルダが13歳になるパーティーの招待が来た。
エスメラルダは可愛い婚約者で動く人形だったが、年齢的に対象外になってしまうし、もう初潮を迎えているかもしれない。

そう思った時、ふと最後に汚したくなったのだ。そして実行した。
 
しかし、眠っている状態では泣かないので人形と変わらなかった。

やはり汚すよりも愛でる人形の方がいい思った。


ラルゴにとって対象外になった少女たちが次にどうなったかは知らなかった。

拉致されてきた少女だということも知らなかった。
親に売られた少女なのだろうかと思っていた。そして愛でるために自分が買った。
要は金のために親に娼館に売られて娼婦になった女性に金を払って相手をしてもらうのと同じようなものだと思っていたのだ。


嗜虐趣味の男が甚振っていたことも知らなかった。庭には、13体の遺体があったという。
 
 
屋敷で保護された少女も、13人いたそうだ。


 
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