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しおりを挟むエスメラルダの妊娠が確実になり、医師が言うには堕胎するにも難しいという。
もう四か月を過ぎており、エスメラルダにかかる負担が大きいからだ。
そして今後、不妊になる可能性が高くなるし、未成熟なエスメラルダの体にどういう影響があるかがわからないからである。
しかし、もちろん出産も命がけとなることは間違いなかった。
「どうしてこんなことに……相手はラルゴ殿下で間違いないのか?」
項垂れた公爵がエスメラルダの専属侍女に聞いた。
「それは、わかりません。お嬢様の記憶の最後がラルゴ殿下というだけなので。」
「……ラルゴ殿下に確認してみるしかないかしら。でもあの子は13歳になったばかりだったのに。18歳の殿下から見てもまだ子供にしか見えなかったはずなのに、どうして。」
気丈に言葉を発した公爵夫人も、とうとう泣き崩れた。
「ラルゴ殿下にしろ、他の者にしろ、許せることではない。だが公にできるはずもない。」
ラルゴ殿下の子供であったとしても、13歳のエスメラルダが妊娠したことは外聞が悪い。
どんな経緯や事情があろうとも、公表などできるわけがないのだ。
そしてラルゴ殿下の子供でなかった場合は、相手が全くわからない。
公爵家で働く使用人まで疑うことになる。
万が一確認してラルゴ殿下ではない場合は、もちろん婚約破棄となるだろう。
婚約破棄に至った理由を隠していても、どこで誰にバレるかはわからない。
それこそ、ラルゴ殿下が言いふらさない可能性はないのだから。
となると、確認できないのだ。どうすることもできない。
「エスメラルダを病気療養として領地に連れて行こう。ラルゴ殿下との婚約は、病気を理由に解消してもらう。子供を領地で産ませ、私たちの子供ということにしよう。」
侯爵は、自身の妻にそう告げた。
「ラルゴ殿下に確認を取らず、エスメラルダを領地に隔離するのですね?
わかりました。エスメラルダは出歩かせずに私が妊婦のフリをして領地の者に印象づけますわ。」
エスメラルダが妊娠していることは、現時点で公爵夫妻と侍女、医師の四人しか知らない。
だが、さすがにあと数人は味方になってもらう必要がある。
絶対に裏切らない者を。この秘密を墓場まで持って行ってくれる者を。
エスメラルダ本人には、領地に行くまで話さないつもりでいた。
妊娠のことも、ラルゴ殿下と婚約解消することも。
公爵夫妻は、医師とどんな病気ならば婚約解消とできるかを話し合っていた。
婚約解消せずに領地で産んで、王都に戻ってくるということもできる。
だが、ラルゴ殿下が13歳の娘を襲った可能性がある以上、結婚を許すことなどできなかった。
また同じことがないという保障がないし、信用できない。
それに、エスメラルダは純潔ではなくなったのだ。
ラルゴ殿下が相手ではなかった場合、初夜でバレたら王族を謀ったことになる。
どちらにせよ、ラルゴ殿下との婚約は解消しなければならない。
幸い、体調の悪いエスメラルダは最近ラルゴ殿下とは会っていない。
病気療養で婚約解消を告げるには受け入れてもらえやすいのではないかと思っていた。
エスメラルダを襲った者が誰か突き止められないことには腹立たしいが、娘の体裁を優先した。
しかし、公爵夫妻が王家に婚約解消を申し入れようとした直前、とんでもない事態になった。
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