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しおりを挟むしかし、私はどうしよう。
ここから職場に通うの?護衛?馬車?毎日?
ダメだ。余計に目立つ気がする。
……ここで出来る仕事をして、職場に届けるっていうのはどう?
「すいません。
職場に確認しないとわからないですが、ここで薬の調合する部屋をいただくことはできますか?
毎日通うには距離がありますし、かといって、辞めて何もしないというのも収入面で不安です。」
「まあ!収入のことなんて気にしなくていいのよ?
あなたはリオルの母親なのですから、ザイルと結婚していなくても私たちの義娘と同じよ。」
え?そこまで歓迎してくれるの?
「確かに、母上の言う通りだが、シャイニーは何もせずにここにいるのは居心地が悪いんだろう。
貴族のように生活してきていないんだ。
ここに住んでいる時は、衣食住は気にしなくていい。かかる費用もだ。
仕事は、リオル優先で空いた時間にすればいい。部屋も用意する。
もちろん、働かなくても君が結婚しない限りは生活の保障はする。」
「ありがとうございます。助かります。」
貴族って太っ腹というか寛容というか……違うわね。この侯爵家が、かな。
あとひと月半はまだ産後休暇中なので、それが終わるまでに職場に相談することにしよう。
リオルと暮らしていた家の荷物も全部こちらに運び込まれた。
そして、リオルは前の魔力熱から20日ほどで限界がきた。
なるべく限界に近くなるまで溜まってから放出したほうが、魔力が多くなりやすいらしい。
ちなみに、今度は侯爵様がリオルの放出を手伝ってくれた。
やはり、クレール家の血筋で波長が合うのだろう。難なく終えられた。
「こんなに小さいのになぁ。熱が籠るのは可哀想だ。
リオル、もっと泣け。自分で放出しろ。といっても一日中泣いても手伝いが必要な魔力だがなぁ。」
侯爵様、赤ちゃんは泣くのが仕事だけど、もっと泣けって初めて聞きましたよ。
泣いてもしばらく構わない方がいいのかしら。でも、抱いたらご機嫌になるんだもの。
その方がいいじゃない?
侯爵家での生活にも慣れてきた頃、職場に行って今後の仕事を決めたいというと、アルフ様も一緒に行くと言い出した。
平民用の薬師の職場に貴族が行くと対応に困ると説明したのに、軽装で行くからと押し切られた。
目立たない馬車で少し離れたところで降りて、裏から入った。
みんなに挨拶をして、師長と今後の話をする。
「持ち帰りで出来る仕事か。そうだな。週2回取りに来て、出来たのと交換でいいか?」
「はい。大丈夫です。」
「すまないが、シャイニーが来るのではなく、うちの従者にやり取りさせることになる。」
「ああ、はい。わかりました。
シャイニーがここに来て働けるようになるのは随分と先、ということですかね?」
「そうだな。リオルが成長して、親離れするまでは確実に無理だろう。」
「え?アルフ様?それって10年以上は先じゃないですか。」
「師長殿、今のシャイニーを見て、ここに通えるのが随分と先だとわかってくれますよね?」
「ええ。こんな平民がノコノコと歩いていたら、攫われてしまいます。」
「でも、前みたいな生活に戻ったら大丈夫ですよ?平民の格好になったら。」
「シャイニー。お前さんはな、ザックと付き合い始めた頃から子供っぽさが抜けた。
その前まではな、可愛いなぁ。守ってやりたいなぁと遠くから見る腑抜けな男ばかりだ。
妊娠して出産して、今はその辺の貴族に負けないくらい輝いていて、男の目は明らかに変わる。
いくら平民の格好をしても、貴族のお遊びにしか見えないし護衛がいないと攫われる。
そのくらい自分の身が危険だと思え。」
師長の言葉にあ然としてアルフ様を見ると頷かれた。
「言い方は悪いが、綺麗な平民を手籠めにしたり愛人にしたりする貴族もいる。
危険なのは、貴族も平民も関係ない。男全員だ。
シャイニーは自分が平民だからと軽く考えすぎだ。
貴族令嬢ほど面倒事にならないからと、平民相手に傲慢になる男も多いんだ。
何があっても一人で行動するな。少なくともあと20年は。」
………アルフ様、期間がどんどん伸びています。
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