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3.
しおりを挟む生後3か月までは休職扱いで仕事を休んでいいことに決められていた。
リオルと名付けた息子は、生後ひと月は順調に成長した。
しかし、変化は急に訪れた。
「ねぇ、シャイニー。さっきまでご機嫌だったリオルだけど、熱っぽいわ。」
「ええ?……本当だわ。え?うそ……この子、魔力が溜まってる?」
「魔力熱ってこと?こんな小さな子に?」
魔力熱は魔力が多いことで熱が出る。
蓄積された過剰魔力が溜まって魔力熱の症状が出るのだ。
大体は体の成長に見合った魔力を持ち、魔力も体と一緒に成長していく場合が多いが、たまに魔力が多く産まれてくる子供がいる。
それも泣いたりすることで放出し安定していくが、それを上回る場合は放出を促してやる必要がある。
その場合は子供との魔力の波長が合う必要があるのだが……
「ダメだわ。私の魔力の波長では追いつかない。
……ザックの波長に似てしまったのね。どうしたらいいの?」
「とりあえず、病院に連れて行きましょう。」
しかし、医師には生後ひと月の子供には何もできないと言われてしまった。
自力で魔法も使えず、既に泣くこともできなくなっているリオルは放出を促すしかないのだと。
「魔法騎士団に行けば、少しは波長が合う者がいるかもしれん。」
医師にそう言われ、二度と行きたくなかった魔法騎士団に駆け込んだ。
「お願いします。子供が魔力熱なんです。どなたか波長が合う方がいませんか?助けてください。」
魔法騎士団はいきなり現れた親子に驚いたが、居合わせた人たちが一人ひとり試してくれた。
シャイニーと同じように少しだけ波長の合う人もいたが、二人で放出しても追いつかない。
「くそっ!誰か、クレール家の者に頼んできてもらえないか?白銀髪の赤子だと言えばいい。」
騎士の一人が指示を出した。
誰でもいいから助けてほしい。……どのくらい時間が経っただろうか、その人は現れた。
「この子か?」
リオルと同じ白銀髪のその人は、いとも簡単にリオルの魔力を放出した。
真っ赤だったリオルの顔色も普通に戻り、スヤスヤと寝ているのを見てホッとした。
「ありがとうございます。助かりました。ありがとうございます。」
「……いや。この子の父親は?」
「いません。私が一人で育てています。」
「そうか。だが、この調子だとまたひと月も経たずに魔力が溜まるぞ?
この子は膨大な魔力がある。
自分でコントロールできるようになるまでは手伝ってやらないと生きられないぞ?」
「……お願いします。この子が大きくなるまで助けてくれませんか?何でもします。」
「君は平民、だよな。ザイルという男を知ってるか?」
「ザイル?いえ、知りません。」
「この子の父親の名前は?」
「ザックと名乗っていました。本名かはわかりませんが。」
「ザックか。最後に会ったのは?」
「10か月ほど前でしょうか?私にプロポーズした次の日に姿を消しました。」
「なるほどな。もう少し詳しい話を聞きたい。すまないが一緒に家に来てほしい。」
「……え?家?」
「あぁ、心配はいらない。私は貴族だ。部屋はたくさんあるし使用人もたくさんいる。
二人というわけではない。」
確かに、いかにも貴族って感じの人だけど。リオルを助けてくれたし、変な人でもなさそうだけど。
「この子は弟の子かもしれない。10か月ほど前に死んだ弟の。」
死んだ?ザックが?この人の弟?
シャイニーがリオルを抱いて魔法騎士団に来てから出て行くまで、一人の男の顔が真っ青になっていたことに誰も気づかなかった。
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