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シャイニーが魔法騎士団を出ていくのを、こっそり見ていた男がいた。

その男は、シャイニーの対応をした者のところに行き、確認した。


「今の女性は何をしに?」

「婚約者が帰ってこないということでした。
 魔法騎士団の書記官をしていて、20日ほど前に仕事に行ったと。
 まだ仕事中なのかと聞かれました。
 しかし、ザックという書記官はおりませんし、今遠征中の部隊はありませんし。
 平民だと思っていたけど貴族かもしれない。って言ってました。
 貴族に騙されたと思ったのかもしれませんね。」

「……そうか。気の毒だな。婚約者、か。」 

「ひどい男ですよね。かわいい女性だったのに騙すなんて。」

「……そうだな。」





シャイニーは家に帰り、呆然としていた。

騙されたの?体が目当てだった?
でも、プロポーズしてくれるまで誠実だったわ。
家に連れ戻されたとか?
平民との結婚は許さないって。
……違うわね。仕事先も偽っていたんだもの。
あの貴族の離籍届はどういう意味なの?
本当は貴族なんだ。だから結婚できないって言いたかったの?
じゃあ、あの婚姻届は?
……何が何だかわからない。

だけど、仕事先が偽りだったということは、私にザックを探す手段はなくなった。

私の職場か、この家か、外食で訪れる店か、でしか会ったことがなかった。

つまり、私は捨てられたということ。

ザックのことを何も知らなかった。 

こんなに心配させておいて……この20日間の不安を返してほしい。

もういいわ、あんな男。私の人生のこの半年の記憶を抹消することにする。

でないと、怒りが爆発しそうだわ。









……抹消できなかった。

たった、一晩だったのに妊娠してしまったから。


いいわ。もう男なんて信用できない。

この子と二人で生きていくっていうのもいいかもしれない。

一人で育てる不安はあるけれど、自分の行動の結果だもの。
大切に育てるわ。



職場のみんなにも妊娠を告げた。

帰って来ないザックを私が心配していたことをみんなは知っている。
なのでザックに捨てられた話もしていたので、妊娠に驚かれた。
一人で産むという私を、みんなは協力すると言ってくれた。
ありがたい。
職を失うことになっていたら、親子で路頭に迷うことになっていただろうから。



月日が経ち、男の子を出産した。

しかし……私もザックを知っているみんなも戸惑った。
 
私は金髪、ザックはこげ茶色、産まれた子は……白銀髪だった。

え?白銀?なんで?どこにそんな要素が?隔世遺伝とか?

……いや、違う。おそらくザックが白銀髪だったのだ。

髪色まで騙されていた。そういうことだろうと結論付けた。


白銀髪の平民は見たことがない。
ということは、やはりザックは貴族だったのだろう。

しかし、貴族の中でも白銀髪が珍しいということは貴族社会に詳しくない私もみんなも知らなかった。




 
 


 
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