側妃としての役割

しゃーりん

文字の大きさ
上 下
2 / 14

2.

しおりを挟む
 
 
 
家族との別れを済ませ、王宮からの迎えの馬車に乗った。 

もう侯爵邸に来ることはないだろう。
寂しい思いを振り払い、王宮での新しい生活が明るい未来に繋がるようにと笑顔をつくっていた。



王宮の居住区に着き、サナと名乗った侍女に自分が過ごす部屋へと案内された。
内装は、派手でも地味でもなくシンプルかつ上品に纏められており、一目で気に入った。
寝室や風呂、洗面、クローゼット、テラス、侍女の待機部屋など一通り説明を受け、最後に説明されたドアを開けると…


「こちらは国王陛下とお使いになられる際の寝室です。
 向こう側にあるドアは国王陛下の私室に繋がっております。」


「えっ?ではここは本来王妃様がお使いになられるお部屋なのでは?」


「いえ、王妃様の私室は国王陛下の私室の向こう側にあり、こちらと同じような造りになっております。」


思わず顔が引きつりそうになった。まさか王妃様と同じ階で過ごすことになるとは。


「不思議な部屋の配置だと思われますよね?
 実は、昔の国王に性欲が強い方がおられたそうで…
 廊下に出ずに王妃の部屋から側妃の部屋まで中を通って裸のまま移動できる部屋造りにしたそうです。
 あ、現国王陛下はそういう使い方をされることはないはずですよ?
 王妃様もフェリシア様がこのお部屋を使われることは了承されておられます。」


……王妃や側妃という存在は国王の子を産むってことが重要で常識に目を瞑る必要がありそうね……


「国王陛下はもうまもなく、こちらに来られる予定となっております。
 お茶をご用意いたしますので、どうぞお座りください。」


そう言われソファに座ったところ、ドアがノックされ国王陛下、宰相、侍従、護衛と思われる方々が入ってきた。

立ち上がってカーテシーをすると、


「座ってくれ。話をしよう。」


と、気軽に声が掛けられ、再び座った。


「話をしたこともないのに側妃にと言われて戸惑ったことだろう。
 改めて、国王のウィリアムだ。よろしく。」


「フェリシアと申します。こちらこそよろしくお願い致します。」


「さて、今日からここで過ごしてもらうが、正式に側妃とするのは一週間後とする。
 側妃とは通常の結婚式は出来ないが、書面にサインする必要はある。
 侯爵夫妻と君の兄夫婦とも顔を合わせたいので、その日に身内だけで昼食会を予定している。
 まぁ、結婚式と披露宴の代わりみたいなものだ。
 それまでの一週間、非常に短い婚約期間みたいなものだが、毎日時間をとって話をしよう。
 全く知らないより少し知ってからの方が夫婦として過ごしやすいと思うんだ。いいかな?」


「お心遣い、ありがとうございます。楽しみにしております。」


「じゃあ、また後で。夕食後か寝る前になるかもしれないが声をかけるよ。
 この後、王妃が来るはずだ。問題はないと思うが…適当に付き合ってやってくれ。」


そう言って部屋を出て行った。いや、一人残ってる…


「「……」」


残った護衛と見られる人物と目が合った。が、どうしてここにいるのか首を傾げると、


「…お忙しい陛下は私を紹介するのを忘れたまま去ってしまいましたが…
 フェリシア様の護衛となりましたルイスと申します。あと4人担当護衛がおり順にお側につきます。
 よろしくお願いいたします。」


そして後ろからも声がかかった。


「改めまして、私はフェリシア様の筆頭侍女サナと申します。
 こちらもあと4名担当侍女がおります。
 フェリシア様が快適にお過ごし頂けるよう、誠心誠意お仕えいたします。よろしくお願いいたします。」
 

「まぁ。私の侍女の方だったのね。ごめんなさい、気がつかなくて。
 フェリシアです。
 王宮内のこともしきたりのことも、よくわからないから頼りにします。よろしくね。」


2人と挨拶を交わし、気になっていたことを聞いた。


「先程、陛下は王妃様がこちらまで来られるとおっしゃいましたが、私がお伺いすべきでは?」


「王妃様が言い出されたようですので、お気になさらなくて大丈夫です。」


その時、ドアがノックされた。王妃様が来られたようだ。

フェリシアは国王陛下に会うよりも緊張が高まった。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

麗しのラシェール

真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」 わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。 ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる? これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。 ………………………………………………………………………………………… 短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。

貴方でなくても良いのです。

豆狸
恋愛
彼が初めて淹れてくれたお茶を口に含むと、舌を刺すような刺激がありました。古い茶葉でもお使いになったのでしょうか。青い瞳に私を映すアントニオ様を傷つけないように、このことは秘密にしておきましょう。

王子様、あなたの不貞を私は知っております

岡暁舟
恋愛
第一王子アンソニーの婚約者、正妻として名高い公爵令嬢のクレアは、アンソニーが自分のことをそこまで本気に愛していないことを知っている。彼が夢中になっているのは、同じ公爵令嬢だが、自分よりも大部下品なソーニャだった。 「私は知っております。王子様の不貞を……」 場合によっては離縁……様々な危険をはらんでいたが、クレアはなぜか余裕で? 本編終了しました。明日以降、続編を新たに書いていきます。

どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。 無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。 彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。 ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。 居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。 こんな旦那様、いりません! 誰か、私の旦那様を貰って下さい……。

旦那様、愛人を作ってもいいですか?

ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。 「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」 これ、旦那様から、初夜での言葉です。 んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと? ’18/10/21…おまけ小話追加

最悪なお見合いと、執念の再会

当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。 しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。 それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。 相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。 最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。

冷酷王子と逃げたいのに逃げられなかった婚約者

月下 雪華
恋愛
我が国の第2王子ヴァサン・ジェミレアスは「氷の冷酷王子」と呼ばれている。彼はその渾名の通り誰に対しても無反応で、冷たかった。それは、彼の婚約者であるカトリーヌ・ブローニュにでさえ同じであった。そんな彼の前に現れた常識のない女に心を乱したカトリーヌは婚約者の席から逃げる事を思いつく。だが、それを阻止したのはカトリーヌに何も思っていなさそうなヴァサンで…… 誰に対しても冷たい反応を取る王子とそんな彼がずっと好きになれない令嬢の話

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

処理中です...