未必の故意は罪かしら?

しゃーりん

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王都の騎士団の服装をした3人がカステーロ伯爵家を訪れた。

聞きたいことがあるので、伯爵夫妻か令息夫妻を呼んでほしいと言われ、義両親も夫ルシアスも不在であったために私リラベルが応対した。


「みんな外出しておりまして、ルシアスの妻である私リラベルしかおりませんが、よろしいでしょうか?」

「ええ。確認していただきたいことがあり、伺いました。
 実は、王都の外れの崖下でカステーロ伯爵家の家紋がついた馬車が転落しているのが発見されました。」

「ああ、そんな!義両親の馬車でしょうか。義両親は無事ですか?」

「伯爵夫妻はどちらへ?」

「今日は劇場へ向かいましたが。」

「今日、ですか。朝お会いになりました?」

「はい。もちろんです。」

「では、ご主人は?」

「主人は10日ほど前でしょうか?領地へ向かいましたが。」

「お一人で?」

「ええ。おそらく。護衛を置いて行ってしまったので定かではありませんが。」

「……ちょっと待ってください。それは領地に行ったのではなく事故にあったのでは?」

「あら。姿が見えないと聞いたので、てっきり領地へ向かったのかと思っていましたわ。
 元々外泊も多いのです。護衛も置き去りにしてしまったり。先に走らせたり。
 外泊が続くと、勝手に領地に向かったのだといつも思っておりました。
 では崖下の馬車は夫が乗っていたのですか?夫は無事で?」 

「残念ですが……馬車の外に男性とみられる者が2人おりました。おそらくは御者とご主人かと。
 ですが……獣が荒らしたようで、1人は顔が判別できません。
 日数も経っているようですので。」

「まあ。では主人ではない可能性も?」

「顔の判別ができない遺体が着ていた服を持参したのですが、確認いただいても?
 服装からいって、こちらがご主人の可能性が高いと思われます。」

「あぁ、申し訳ございませんが、私ではわかりかねます。
 滅多に顔を合わせることもございませんので、主人の侍従に確認した方がよろしいかと。
 私ではどんな服を着ていたか、持っているかもわかりませんわ。」

「侍従の方もこちらにいらっしゃるのに一人で領地へ行かれたと思っていらしたのですか?」

「ええ。何度もありますもの。まぁ、その時は大体が女性連れで領地まで向かうそうですわ。
 向こうにも侍従はいますから。馬車の中では男より女性が一緒の方がいいのでしょう。
 あなたたちもご存知では?主人の遊び癖を。」

「え、あ、まあ。」


ルシアス・カステーロは、外で女性と交わることを好むらしい。

これは何人かがその場面を見てしまってから広まった噂だった。
夜会の庭園、公園の東屋、馬車の中、大きな木の裏、などいろいろな場所で見られていた。

相手は、浮気公認の夫人、未亡人、愛人狙いの令嬢、平民、これまたいろいろ幅が広い。 

騎士団も巡回中に何度も出くわしたり馬車を見かけたりした。
注意しても女性を襲っているわけではなく合意のため連行できない。
外で交わることを禁止する法律がないのだ。 
別の男が寄ってくるかもしれないと言っても、御者が見張ってるから怪しい男が来たら知らせてくれるし追い払ってくれると言われればどうしようもなかった。

この男のために、適切な法律を作るべきだという話も出ている。そんな迷惑な男だ。


「主人の侍従を呼んでもらいますね。」


リラベルは侍女に頼んで夫の侍従を呼んできてもらった。


 


 
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