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しおりを挟む王城からの帰り道、グリーフ公爵ユーグンドは国王陛下から聞いたオリアナの15年間を再度思い出して、ようやく受け入れることができた。
自分はなぜ、あんなにもオリアナを信じていたのだろうか。
15年前も、他にも男がいたことを聞いていたのに。
それでも自分が恋人だと思っていた。
彼女に何度か話しかけられ、キスをされた時に婚約者と婚約解消しなければならないと思った。
私が結婚するのはキスをしたオリアナなんだと。責任を取らなければと。
何度親に説得されても、オリアナ以外は考えられなかった。
いやいや商人の妻になったオリアナは私の助けを待っているのだと。
何を根拠に?
自分が滑稽に思える。あまりにも愚かだ。
オリアナの顔すら、もうはっきりと思い出せないのに。
15年経った姿を想像したことすらなかったのに。
すれ違ったとしても気づかなかったかもしれない。
あぁ。ようやく頭にかかった靄がなくなった気分だ。
オリアナには会わないと国王陛下にも告げた。
もう探さない。
そういえば、何年か前に王命で結婚させられなかったか?
妻の名前は?どこの家名だったか?
自由に過ごせといった覚えはある。
屋敷で会った記憶がないな。
顔を合わせるつもりもないと言ったかもしれない。
悪いことをした。
屋敷に帰ったら、詫びなければならない。
養子を取ると言った気もするな。
選定をしなければ。
……それとも妻が産んでくれるだろうか。
聞いてみよう。
いつの間にか私も33歳になっていたんだな。
妻は何歳なんだろう。
若かった気がする。
まずは名前を確認してからだな。
本人に聞くのはさすがにマズい。執事にでも聞くか。
普段は何をしているのだろうか。
何年も放ったらかしにしておいて、アレコレ聞くのは嫌だろうか。
どんな性格なのか、侍女たちに確認してからの方がいいかもしれない。
そんなことを考えているうちに、屋敷に着いた。
「おかえりなさいませ。」
執事の挨拶に答えるように、妻のことを聞いてみた。
「ああ。そう言えば、今日、妻は何をしている?」
「妻……奥様はいらっしゃいません。
旦那様にお渡しする手紙がございます。後ほど、執務室の方へお持ちいたします。」
「ん?わかった。」
なんだ?妻からの手紙か?初めてだな。何か必要なものでもあるのかもしれない。
そう思いながら、執務室へと向かった。
「お手紙は2通、ございます。
まずはこちらから。これは5年前に国王陛下から届きました。
続いてこちら。これは2年前に国王陛下から届きました。
どちらも、旦那様が奥様のことを聞いた時に渡すように言われておりました。」
「5年前と2年前?随分と前ではないか。」
「御読みいただくとお分かりになるかと思います。」
執事の言葉に、まずは読んでみようと封を開けた。
最初の手紙は、妻ルクレツィアを公妾にするという通達。
次の手紙は、妻ルクレツィアとの離婚が成立したという通達。
公妾?離婚?どういうことだ?
「王命による結婚をした場合、3年間は離婚ができないのです。
ルクレツィア様は伯爵家の跡継ぎでもありました。
旦那様との結婚で子供を2人以上産んで、伯爵家を継がせる予定でした。
ですが、旦那様は養子を取ると言われた。
ルクレツィア様が自分の子を産むためには、公妾になるのが最短の方法でした。
陛下の提案を受け入れ、ルクレツィア様は陛下の子を2人産まれました。
そして、旦那様と離婚できる3年が経過した時点で離婚の手続きがなされました。
その後、王宮を去られ、お子様たちと共に伯爵家に戻られました。」
「……つまり、もう結婚していない?」
「はい。旦那様は独身でございます。」
…………………………もう今日は何も考えたくない。
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