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部屋に案内されて、侍女がお茶を入れてくれた。

何も持ってきていないので明日にでも取りに帰ると告げると、最低限の着替えはあるので、今日と明日はそれを借りることになった。

夕食に呼ばれて行くと、公爵様は来られない、とのことだった。
一人寂しく夕食を食べる。 

入浴を済まし、初夜をどうするか確認してくるので、ひとまずベッドで休んでいるように言われた。


しばらくして、扉がノックされて返事を返すと、公爵様が入ってきた。
初夜はするの?と驚いた時、まるで汚いものでも見るかのように私を見て言った。


「金目当てか何だか知らないが、抱く気はない。
 私には好きな人がいる。その人以外を抱きたいとは思わない。
 子供はいずれ、養子を取る。
 君は、好きなことをして暮らせ。自由だ。
 だが、この家で茶会はするな。令嬢や夫人を入れるな。
 君とは夜会にも行かないし、顔を合わせるつもりもない。
 私の邪魔をしなければそれでいい。」


それだけ告げて、部屋を出て行った。

金目当て?どうしてそんな勘違いを?

国王陛下、話が違いますよ?
何が子供二人以上産んだらいい、ですか?触れられもしませんが?
私の実家、アグリード伯爵家をどうしてくれるのですか。

公爵よりも、国王陛下に怒りを感じたまま、寝た。 




翌朝、目が覚めて侍女の手伝いで身だしなみを整えて朝食を食べた後、私は……王城へ行った。
 
いつまででも待つので国王陛下の時間が空いたら会ってもらえるようにお願いし、昼食時に叶えられた。

私の分の昼食もあった。


「ルクレツィア夫人、昨日の今日でどうしたんだ?食べながら話そう。」

「国王陛下。私の父が王命の撤回をお願いに参りました時に子供を二人以上産めばいいと言いましたね?」

「ああ、そうだね。アグリード伯爵家の跡継ぎがいなくなったからね。」

「公爵様は初夜どころか私との一切の関わりを拒否致しました。
 夜会にも参加しないし、公爵家での茶会も禁止。公爵様の邪魔をしなければ自由、だそうです。」

「……え?跡継ぎはどうするの?」

「公爵家は養子を取るそうです。私の実家はどうしてくれるのですか。
 私がいるというのに、養子を取れというのですか?
 冗談じゃありません。王命を撤回してください。私を家に帰してください。」

「えーーあーー。王命による結婚の場合、白い結婚の証明と同じで三年は離婚できない。」

「私に三年も我慢しろと言うのですか?
 この三年で何ができると思います?子供が二人は産めますよ?
 三年後、適齢期を逃した私と結婚してくれる人は?すぐに子供ができなければ?
 一番大事な三年間を無駄にしなければいけないなんて、陛下が王命なんて出したせいです!」


国王陛下に向かって言う言葉ではないが、どう考えても悪いのは陛下だ。
何としてでも家に帰らなければ。
あの公爵家で三年も暮らすなんて、考えられない。


「えーっと、じゃあ、愛人?を作って産む?……ダメだな。公爵家の子供と思われる。
 どうすればいいんだ……あーーー。あっ!言い手がある!」

「何ですか?」

「私の公妾になればいいんだ!」


は?何を言い出すのかしら、この国王陛下は。 



 
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