上 下
8 / 8

8.

しおりを挟む
 
 
10数年後、私とキースはまだ王都にいるわ。
学園を卒業して結婚したけれど、キースが王宮で頼りにされる存在になってしまったの。
彼が少し口を挟むと、怒っていた人が落ち着いたりするので重宝されてるそうなの。

じゃあ、しばらくは王都で生活するかってなったんだけど、キースのお父様が爵位はくれたの。
『実務は今まで通りうちでするから休暇で子爵領に遊びに行けばいい』ですって。
代々、管理がしっかりしてるから、特に問題ないらしいわ。
なので、子供が結婚したら領地でのんびり暮らすことになったの。

生まれてから15歳まで実家の領地で過ごして、15歳で学園入学で王都に来て多分25年くらいいることになって、それから子爵領で余生?という歳でもないけど20年くらい過ごして人生を終える。いい感じね。

今日は新年の夜会なの。
久しぶりにエルネスト様を見かけてしまったわ。
おそらく、爵位を継いだから両親ではなく自分が出席しているのね。
声を掛けられることはないだろうから、遠くから微笑んで会釈しておいたわ。





爵位を継いだので、今年から新年の夜会に出席することになった。
隣にいるのは、2度目の婚約解消の後に紹介された妻だ。
妻は僕の3つ上で、母親の看病で婚期を逃してしまっていたらしい。
…つまり直近で2度の婚約解消をした僕には訳あり令嬢しか望めなくなったのだ。

妻は結婚するつもりはなかったと言った。婚期を逃しただけでなく容姿的に。
初めて会った時、確かに驚いた。彼女は貴族令嬢にしては長身だったのだ。
決して美人でもなかったが、結婚を諦めたように寂しく微笑む彼女のそばにいたいと思った。
彼女に過去の自分の過ちを全部述べた上で、結婚してほしいと言った。
泣きそうな顔で微笑んで、受けてくれた。
彼女の微笑みを幸せな微笑みにしていきたいと思った。

子供にも恵まれ、働き者の妻と一緒にいることが幸せだと思える日々を過ごしている。
それを感じ取ってくれたのか、妻の微笑みも幸せに見える。 

オリビアが遠くから僕に気づいて、あの優しく穏やかな微笑みで会釈した。
ああ、キースと幸せそうで良かった。そう思った。
愚かな自分の身勝手でオリビアの未来も台無しにするところだった。申し訳なかった。
オリビアよりイザベルを選んだことを後悔したが、それは間違いだ。
僕はオリビアへの仕打ちを後悔しなければならなかったということにしばらくして気づいたのだ。

自分の罪は記憶から消えることはないが、あの微笑みが少し癒してくれた気がした。

 
 
<終わり>
 
 
 






 





 
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

貴方は何も知らない

富士山のぼり
恋愛
「アイラ、君との婚約は破棄させて欲しい。」 「破棄、ですか?」 「ああ。君も薄々気が付いていただろう。私に君以外の愛する女性が居るという事に。」 「はい。」 「そんな気持ちのまま君と偽りの関係を続けていく事に耐えられないんだ。」 「偽り……?」

結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。

真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。 親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。 そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。 (しかも私にだけ!!) 社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。 最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。 (((こんな仕打ち、あんまりよーー!!))) 旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。

[完結]思い出せませんので

シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」 父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。 同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。 直接会って訳を聞かねば 注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。 男性視点 四話完結済み。毎日、一話更新

誰でもよいのであれば、私でなくてもよろしいですよね?

miyumeri
恋愛
「まぁ、婚約者なんてそれなりの家格と財産があればだれでもよかったんだよ。」 2か月前に婚約した彼は、そう友人たちと談笑していた。 そうですか、誰でもいいんですね。だったら、私でなくてもよいですよね? 最初、この馬鹿子息を主人公に書いていたのですが なんだか、先にこのお嬢様のお話を書いたほうが 彼の心象を表現しやすいような気がして、急遽こちらを先に 投稿いたしました。来週お馬鹿君のストーリーを投稿させていただきます。 お読みいただければ幸いです。

アリシアの恋は終わったのです【完結】

ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。 その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。 そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。 反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。 案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。 ーーーーー 12話で完結します。 よろしくお願いします(´∀`)

「つまらない女」を捨ててやったつもりの王子様

七辻ゆゆ
恋愛
「父上! 俺は、あんなつまらない女とは結婚できません!」 婚約は解消になった。相手側からも、王子との相性を不安視して、解消の打診が行われていたのである。 王子はまだ「選ばれなかった」ことに気づいていない。

愛される日は来ないので

豆狸
恋愛
だけど体調を崩して寝込んだ途端、女主人の部屋から物置部屋へ移され、満足に食事ももらえずに死んでいったとき、私は悟ったのです。 ──なにをどんなに頑張ろうと、私がラミレス様に愛される日は来ないのだと。

これでお仕舞い~婚約者に捨てられたので、最後のお片付けは自分でしていきます~

ゆきみ山椒
恋愛
婚約者である王子からなされた、一方的な婚約破棄宣言。 それを聞いた侯爵令嬢は、すべてを受け入れる。 戸惑う王子を置いて部屋を辞した彼女は、その足で、王宮に与えられた自室へ向かう。 たくさんの思い出が詰まったものたちを自分の手で「仕舞う」ために――。 ※この作品は、「小説家になろう」にも掲載しています。

処理中です...