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しおりを挟む家に帰ると、さっそく両親に今日の出来事を話した。
「……つまり、ロメオ君はクレージュじゃなくて、そのリリス嬢を選んだってことだな?」
「そうだと思いますが……
いい方法を探そうとか、待ってるとか、諦めないでくれとか、まるで私が邪魔してるみたい?
まだ私と婚約したわけじゃないんだから、婚約の話をなかったことにしてくれってだけでしょ?
そうしたら、ロメオ様とリリスが付き合おうが勝手にしてくれればいいはずなのに。」
「まるでクレージュが思い合う2人を引き裂いたかのようね。
あなた、調査するどころか既にクレージュに相応しくないってハッキリしたわ。
婚約はお断りしてください。
事業に関しては、話し合いが抉れるようならブラック家を切ればいいわ。
結婚がなくなっても上手く付き合えるならいいけれど、この事業にロメオ君は入れない条件よ。」
「そうだな。婚約はなしの方向で進めることにする。
それにしても、彼は阿呆なのか?告白されただけで婿入りをふいにするとは。」
「……リリスが可愛い子だからです。彼の好みなのでしょう。」
ため息をつくと共に、婚約を結んだ後でなくて良かったと3人で笑い合った。
翌日、学園に行くと、一人の友人が戸惑っていた。
彼女は領地にいた祖母の葬儀でここ2週間ほど休んでいた、私と入学前から仲の良い友人ユナ。
「おはよう。久しぶりね、クレージュ。」
「おはよう。ユナ。ひょっとしてリリスに何か聞いた?」
「ええ。クレージュが裏切者だとか何とか。……どういうこと?」
クレージュはユナに、ここ最近に起きた出来事を全部話した。
「馬鹿じゃない?」
「……誰が?」
「リリスとそのロメオって男。」
「そうよね。良かった。ユナにまで私が悪者って思われたら耐えられないわ。」
この2か月間、一緒に過ごした他の友人たちはリリスに付いたみたいだけど、ユナが私のそばにいてくれるなら心強いわ。
それに、まだ入学して2か月だもの。他の友人も作れる。
私たちに何かあって仲間割れしたと周りは気づいている。
噂話が大好きな令嬢たちは、何があったのかを知りたがるから。
意地が悪いかもしれないけれど、自分有利に話をさせてもらうわ。まぁ、事実しか言わないけれど。
そして昼休憩時、興味深々の高位貴族、中でも公爵令嬢と侯爵令嬢に呼ばれたので経緯を話した。
「あぁ、あのロメオ・ブラックね。あの男はクズよ。」
「……クズ?」
「婿入り、あるいは婿入り先の保有爵位を期待して、公爵・侯爵家の令嬢に一通り声をかけてるわ。
伯爵位でも見合いしてるんだけど、その断り方がクズなの。
『自分の隣に似合わない』ですって。自分から声をかけた令嬢も好みの令嬢だけって聞いたし。
大体、婿入りを希望しておいて断るってあり得ないでしょ?
上級生の令嬢の中では『クズ男』で有名なの。
私たちはデビューもまだだし入学したばかりだから情報に疎いでしょ?
姉がいる令嬢から情報は回るわ。婚約前で良かったわね。」
本当に良かった。情報って大切ね。
ちなみに、ロメオ・ブラックに断られた令嬢はブスだと勘違いされそうなので、あまり噂が回っていないのだとか。
あの男のせいで次の見合い前に断られることがないように、ロメオのクズ度合を広めたくてもなかなか広めることもできないのだ。
その他のクズ男も数名教えてもらったので、父に伝えておこうと思う。
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