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しおりを挟むある日、友人のリリスが好きな人ができたと言った。
「あのね、廊下にハンカチを落としてしまったの。拾ってくれた方が素敵で……
ハンカチの刺繍がね、上手だねって褒めてくれたの。」
そう言って握りしめているハンカチの刺繍は私がしたものに見えるんだけど?
あなたが欲しいって言うからあげたそのハンカチのこと?
それとも刺繍が苦手なリリスが自分で刺繍したハンカチ?
あるいは買ったハンカチかしら?
なんて疑問に思いながらクレージュは話を聞いていた。
「ロメオって呼ばれてた。多分、1つ上の学年かも。誰かわかる?」
「ロメオ様ってブラック伯爵家の方じゃない?」
「伯爵家の方なの?婚約者はいるのかな……ねぇ、みんな協力してくれる?」
「「「もちろん。」」」
「クレージュは?」
「……思いが通じるといいわね。」
「うん。ありがとう。」
ブラック家のロメオ様って次男じゃなかったっけ?
リリスは伯爵令嬢だけど、弟がいるから跡継ぎじゃないわ。
どうするつもりなのかしら。
というより、親が許してくれる?継げる家ないけど。
リリスとは学園に入学してから親しくなったから、まだ2か月くらいなんだけど、恋愛脳なのかな。
後先考えずに友人に協力を仰いで、少し頭がお花畑な子なのかもしれないと不安になった。
協力すると言った友人たちにも、そんな約束して大丈夫かと不安になったけど。
でもどうなるかもわからないし、リリスとはまだ付き合いが浅くて指摘できるほどではないし。
詳しく調べていったら自分でも気づくだろうし?
ここで指摘して嫌な顔をされたくないと思ったクレージュは黙っていることにした。
リリスがいいならいいけど、向こうはどうかしら?思いが通じるといいわね?と心の中で思いながら。
調べてみると、やはりブラック家の次男だと思うということだった。顔知らないけど。
そして婚約者はいない。
それを知ったリリスは喜んだ。
「これってチャンスよね?話しかけたいけど、どこで会えるかな。
手紙も書いた方がいい?趣味って何かしら。あぁ、聞きたいことがいっぱい。」
……次男だよ?いいの?他の友人も誰も指摘しないわ。気づいているよね?本人がいいならいい?
リリスは手紙に何を書こうかと楽しそうにしていた。
普段から明るい子だけど、恋愛に浮かれると暴走しそうな子だと初めて思った。
この2か月、一緒にいる友人たちの中で婚約者のいる令嬢は1人しかいないくて、あまり恋愛の話にはならなかったから気づかなかったわ。
オシャレ好きな可愛い子っていう認識だったから。
うまくいってもいかなくてもリリスが納得できればいいと思っていた。
しかし、それから数日後、クレージュは父から婚約の話をされた。
相手はロメオ・ブラック。ブラック家の次男。
このオリーブ伯爵家の跡継ぎはクレージュなので、クレージュの家に婿入りすることになる。
「新しい事業絡みでね、いい縁だと思うんだ。明日、顔合わせに来られるから。」
「明日、ですか?いきなり?」
「まぁ、とりあえず顔合わせだ。
事業の話をもう少し詰めることになるから、婚約もそれに合わせて交わそうと思う。」
「……わかりました。」
まさか、リリスの思い人が婚約者になるとは。
だけど、政略結婚を友人の思い人だからと断るわけにはいかない。
そんなことを言っていたら、誰も婚約なんてできなくなってしまうから。
こんなことがあるかもしれないとわかっていたから、簡単に協力するなんて言えなかった。
だけど……嫌なタイミングだわぁ。。。
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