上 下
13 / 15

13.

しおりを挟む
 
 
そこまでの話を聞いて、ルチルはこの後の話は聞きたくないと思っていた。

タイラーは、私に『快感』を与えるために娼婦か誰かから愛撫を学んだのだろうから。

タイラーが他の男に私の体を触らせたくないと思ったように、私も自分以外の女の体にタイラーが触れたと思うと苦しくなった。


「ナイジェル殿が、いろいろと助言をくれたんだ。
 まず、一般に出回っている閨の指南書を読むこと。
 その本には、女性がどこを好むのかが大体書いてあるから、と。
 それから、やはり実践が大事だけれど、実践は妻にするべきだから男娼から学べと言われて。
 何人もの女性の体を知っている男娼に、根掘り葉掘り絵を書いてもらって教えてもらったんだ。」

「………え?実践、は、していないの?」

「ああ。私は君だけでいいから。」


ホッとした。それと同時に申し訳なく思った。


「ごめんなさい。それなのに私は他の人に教えてもらおうと……」

「いや、ニコラ夫人がかなり強引に話を決めたと聞いている。
 ナイジェル殿からルチルではなく私が学ぶという話を聞いて、面白がっていたらしいから。
 だから、私を男娼役にしてルチルには伝えなかった。
 今思うと、彼女のイタズラは少しひどいよな。
 ルチルは私が相手だと知らないままなんだから。
 知らない君は、部屋に入ってニコラ夫人に断ろうとしていただろう?
 それに、寝室に来ても断ろうとしていた。
 受け入れたのは、相手が私だと気づいたから。そうじゃないのか?」

「……ええ。でも、ごめんなさい。
 私、『快感』が知りたかった。
 あなたはもう私の体に興味がないんじゃないかと思ったの。
 だけど、私が気持ちよくなれば、あなたがまた興奮してくれるかもって。」

「あぁ、ごめん。私のせいだ。
 あの時、勃っていなかったことを気にしていたんだな。
 あれは出産からまだ1年経っていないのに妊娠させてしまったらどうしようかと不安だったから。
 思いっきり勘違いだとわかったけれど。
 それからごめん。今日、私も君を試した。夫ではない男に挿入を望むかどうか。
 断られて嬉しかった。まぁ、君は正体を知っていたわけだけどね。
 でも素顔で交わることを選んでくれて嬉しかった。」

「あなただと気づかなかったら、やっぱり最初に断っていたわ。
 まだ、『秘密の戯れ』は私には早いと思ったの。
 知らない男の人と2人きりで過ごすのは、私には勇気が足りなかったわ。
 やっぱりあなたと話し合ってからでも遅くはないんじゃないかと思ったの。」

「そうだな。もっといろいろ話し合おう。
 我が侯爵家はもしかしたら他家とは違うことが多いかもしれないから。
 それにしても、あの侯爵家の決まり事が書かれたものはどうしようもないな。」

「ジェイドには見せられないわね。あなたで終わりにしないと。」


苦笑するしかない。


「ルチルが感じているのを見て、すごく興奮した。
 あんなに濡れてグチョグチョになった中に入れたら気持ちよくて溶けそうだったよ。
 男娼からいろんな体位も教わった。慣れてきたらいろいろ試そう。
 これからは、この夫婦の寝室で一緒に寝よう。
 君と交わる日もそうでない日も抱きしめて寝たい。
 どうかな。」

「嬉しいわ。あなたを愛しているわ。」

「愛してるよ、ルチル。いいもんだな。口にすると幸せな気持ちになれるよ。」

 
そう言って、キスをしてきた。段々と深くなり、舌を絡める。


「まだ下手だけど、これも気持ちいいな。」


そのままベッドに横たわり、本日4度目となる交わりが始まった。

とても幸せな夜になった。

 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

悪役令嬢はオッサンフェチ。

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ
恋愛
 侯爵令嬢であるクラリッサは、よく読んでいた小説で悪役令嬢であった前世を突然思い出す。  何故自分がクラリッサになったかどうかは今はどうでも良い。  ただ婚約者であるキース王子は、いわゆる細身の優男系美男子であり、万人受けするかも知れないが正直自分の好みではない。  ヒロイン的立場である伯爵令嬢アンナリリーが王子と結ばれるため、私がいじめて婚約破棄されるのは全く問題もないのだが、意地悪するのも気分が悪いし、家から追い出されるのは困るのだ。  だって私が好きなのは執事のヒューバートなのだから。  それならさっさと婚約破棄して貰おう、どうせ二人が結ばれるなら、揉め事もなく王子がバカを晒すこともなく、早い方が良いものね。私はヒューバートを落とすことに全力を尽くせるし。  ……というところから始まるラブコメです。  悪役令嬢といいつつも小説の設定だけで、計算高いですが悪さもしませんしざまあもありません。単にオッサン好きな令嬢が、防御力高めなマッチョ系執事を落とすためにあれこれ頑張るというシンプルなお話です。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる

奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。 両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。 それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。 夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん
恋愛
 こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。 *らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。

離縁希望の側室と王の寵愛

イセヤ レキ
恋愛
辺境伯の娘であるサマリナは、一度も会った事のない国王から求婚され、側室に召し上げられた。 国民は、正室のいない国王は側室を愛しているのだとシンデレラストーリーを噂するが、実際の扱われ方は酷いものである。 いつか離縁してくれるに違いない、と願いながらサマリナは暇な後宮生活を、唯一相手になってくれる守護騎士の幼なじみと過ごすのだが──? ※ストーリー構成上、ヒーロー以外との絡みあります。 シリアス/ ほのぼの /幼なじみ /ヒロインが男前/ 一途/ 騎士/ 王/ ハッピーエンド/ ヒーロー以外との絡み

優しい紳士はもう牙を隠さない

なかな悠桃
恋愛
密かに想いを寄せていた同僚の先輩にある出来事がきっかけで襲われてしまうヒロインの話です。

処理中です...