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しおりを挟む令息たちとの集まりが解散となってもタイラーは動けなかった。
そこにナイジェルが声をかけてきた。
「タイラー殿、少し2人で話をしましょう。」と。
ナイジェルは、妻の二コラから相談を受けたと言った。
二コラの友人ルチルはタイラーの妻。
二コラはルチルから、
『タイラーあるいは侯爵家の常識が世間とズレている気がする。確認し難くて困っている』
そう相談したという。
もちろん、それは夫婦の営みのことについて。
それを聞いて、ナイジェルがさっき話題を振ったところ、タイラーに動揺が見られたので話をしようと思ったと言った。
タイラーはナイジェルに言った。侯爵家で代々受け継がれている決まり事について。
結婚相手以外の女性と関係を持たない。
一般に出回っている閨の指南書は見てはいけない。
閨事は月に一度、妊娠しやすい日のみ。
希望する子供の人数に達すれば、閨事はしなくてよい。
挿入は浅いところで。子種を放つ時のみ奥まで突くこと。
妻に自身を触らせてはいけない。娼婦扱いしていると勘違いされる。
一緒に眠ってはいけない。
産後、一年間は閨事は禁止。次の妊娠しては困るため。
妻に愛の言葉を伝えてはならない。
馴れ馴れしい接触はしてはならない。
などなど、思いつく限りの決まり事をあげると、ナイジェルにはほぼ否定されたという。
結婚相手以外の女性と関係を持たない男はそこそこいるので問題ない。
娼婦を抱きたくない者や、婚約者を大事にしたい者などいろいろいるから。
だが、それ以外は侯爵家で起きた出来事や言われたことを参考に出来上がった決まり事ではないかということ。
夫に触れられたくない妻が閨事をするのは妊娠しやすい日一回に決めて、子供ができれば触れるなと言った、とか。
妊娠中に妻を抱いて奥を激しく突いたことによって流産したから、とか。
低年齢による続けての妊娠で命を落とした、とか。
寝相が悪くて一緒に寝ることを拒否された、とか。
閨の指南書の中級~上級に書かれているようなことを妻に求めた、とか。
愛を伝えすぎて信じてもらえなかった、とか。
代々の妻に言われたことの集大成のような決まり事を受け継ぐ必要性はどこにもない。
しかも、どれもこれも夫婦仲が悪くなるような決まり事のように思えると言われ、愕然としたという。
「タイラー殿、侯爵家の決まり事は忘れてしまった方がいい。
でないと、奥様との心の距離は開くばかりになる。
これは言わないでおこうかと思っていたけど、伝えておきます。
私の妻が『秘密の戯れ』を利用することを奥様に勧めました。」
「その『秘密の戯れ』とは何ですか?」
「男が娼婦を抱く、その逆で、男娼が女性に性的な満足感を与える仕事です。
しかし、男が不貞に等しい挿入を行うことに対し、夫がいる女性は大半が挿入を望まないそうです。
性的な『快感』を得て、夫に相手をされなくなった体に満足感を得る。
不貞という認識ではなく、マッサージ感覚で始まった戯れだそうですから。」
「つまり、妻は別の男に体を慰めてもらうつもりということですか?」
「まぁ、私の妻が唆したのですがね。
要するに、『快感』を得たことがないので月に一度のあなたとの閨事に困っていたようですね。
それで自分の体がどう反応してどう気持ちいいかを学べばいいと思ったようです。」
「そんな……私、私が学びます。妻に快感を与えられるように。」
タイラーは他の男が妻の体に触れてほしくないと思ったのだ。
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