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しおりを挟む国王は魔術師長と調査官に考えた王命案についてどう思うか聞いた。
「これから結婚する者は、事前に血縁判定を受けなければならない。
これから婚約する者も、事前に血縁判定を受けなければならない。
これで、グラムの血縁者同士で結びつく可能性を減らせないか?」
「いっそのこと、あの愚か者がしたことを公表してはどうです?」
「それも考えたが、犯人を捕らえたことで今後の被害は出ない。
貴族の混乱を防ぐには、やはり宿泊客がわかれば早いのだが…
見つからないのか?」
「記録はつけていたそうですが、なぜか行方不明なのです。
やはり、使用人に協力者がいるのではないかと。」
「あるいは、グラムを慕っていた。犯行を知っていた?」
「30年に渡って犯行を繰り返している。気づく者がいたのかも。」
「記録が全部ないのなら、今、働いている使用人かグラムが捕まってから辞めた使用人だ。
使用人部屋も屋根裏も可能性があるところ全て探せ。
持ち出したのを誰か見てないか、グラムを慕っていた者を知らないか聞き出せ。」
「もし、見つからなければ?」
「公表するしかない。30年前から今までだと、どの貴族家も当然子供が生まれてるからな。
あの伯爵家に泊まった以外でグラムと関係を持った令嬢もいるかもしれないし。」
「血縁判定の相手はどうします?伯爵家の息子にお願いしますか?」
「そうだな。彼も辛いだろうが伯爵家の一員として協力してもらうしかない。
とりあえず、判明している11人のうち6人はグラムの子だと確定している。
残り5人とも血縁判定を行って確定してくれ。
そのうち2人は夫婦だ。兄妹で夫婦はこの国では禁忌だが例外として認める。
ただし、そのことは口外禁止だ。他に兄妹で結婚したい者が騒いだら困る。
新たに子を産むのは認めない。今いる子供は必ず血縁以外と結婚させること。
そう伝えてくれ。」
伯爵に、グラムが魔術に関する珍しい本を持っていなかったか、異国に怪しい知り合いがいることはなかったか確認した。
「私が結婚する前の年、あいつが学園に入学する前の年ですね。
2つ離れた国に父に付いて一緒に行きました。
ほとんど一緒に過ごしましたが、帰る前の日に一人でうろついてみたいと言うので少し時間をやったのです。
戻って来た時に、数冊本を持っていました。
言葉も文字も違う国の本など読めないと思ったのですが、どうやらこの国の古い魔術本だったようで、面白いと読んでいました。
今では使われていない魔法もあったようで。」
「その本はどこに?」
「あいつの部屋にないなら図書室か商会かじゃないですか?」
至急、探さなくてはならない。
グラムの部屋にあった押収物、伯爵家の図書室、商会の部屋を隈なく探し回った。
ようやく見つかったのは図書室。本の中をくり抜いて隠してあった。
かなり古い本。書き込みも多く知らない魔術がたくさん載っていたらしい。
その中に、眠らせる魔術も妊娠させる魔術も載っていた。
調査官がグラムを尋問した。
「眠らせる魔術と妊娠させる魔術を使ったな?」
「…見つかったのか、あの本。」
「あんなところに隠していたとはな。」
「いつか、伯爵家の誰かが見つけて使うと面白いと思ってね。」
ニヤッと笑うグラムに調査官は腹が立った。
自白剤の使用許可が出て、嘘がないか余罪がないか確認が行われた。
共犯者はいない。
自分で記録は残していない。
宿泊記録の行方は知らない。
子供を仕込んだのは、異国の愚王の後宮の女と子供の数が混乱を招いたと本で読んで、面白そうだと思ったから。
この件以外の余罪はなかった。
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