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しおりを挟む神殿の水晶にもそこそこ貴族が訪れている。
ほぼ、親子が確認されて安心して帰る家族が多い中、愛人の子が自分の子ではないと判明したもあったそうだ。
順調に対象外が増えていっている。
あの8人は自分の子と判定してもおそらく親子だろう。
なぜなら、彼らは50歳前後の自分の親と判定しなくてはいけないのだから。
そうか。今50歳くらいの母親たちが8人の父親と関係を持ったことになる。
そこを調べる方が早いかもしれない。
できれば、母親から昔の話を聞ければいいのだが…
調査部門に、話を聞けそうな母親がいないか調べさせた。
いずれは全員に調査すべきであるが、とにかく父親の手がかりが欲しい。
そしてある夫人が王都にいるため、調査官が話を聞きに行った。
その夫人は、浮気などした覚えはないとはっきり否定した。
ならば長男を妊娠した当時で覚えていることは?と聞くと、恥ずかしい話だと言いながら教えてくれた。
新婚当初のある夜、伯爵家の夜会に参加したが、夫が酔いつぶれてしまった。
伯爵家が部屋を用意してくれたので、夫婦で泊まった。
着替えなどいろいろ気遣いを受け、自分も酔っていたのかあっという間に眠りについた。
朝、目覚めると夫も自分も裸で、酔いに任せていつの間にか性交していたようだった。
二人して酔っ払って記憶になく、しかもよその屋敷でやらかして恥ずかしかった。
その後妊娠して、あの夜の酔っ払った時の子だと笑った。
まだ新婚だったので、あと数か月は妊娠するつもりはなくいつもは避妊魔法をかけていた。
だから、いつ妊娠したのかがわかった。そう語ってくれた。
夫人は話しながら何故、調査官が浮気をしたかと聞きに来たかを悟り、途中からは涙を流しながら語ってくれたそうだ。
『長男は夫の子供ではないのか?』そう聞かれた調査官は『正確にはまだわからない』と答えたと言った。
30年ほど前、夫人が訪れた伯爵家は当時から他国の珍しい物や新しい物を取り入れて売ることで急成長した商会を持っている。
そのため夜会も頻繁に開催しており、人気があったそうだ。
その裏で、とんでもないことが起こっていたが、問題は犯人である。
当時の伯爵・長男・次男・三男・使用人・夜会参加者で伯爵家に泊まった者。
誰が犯人でもおかしくないのだ。
二人とも薬を盛られたのは間違いない。
服を脱がされ襲われても覚えていないのは酔っただけではありえないだろう。
残る7人の夫人にも同じ状況の者がいたとしたら、伯爵家の誰かが犯人あるいは共犯者なのは確実だ。
他の夫人にも調査官をむけるしかない。
30年も経って、息子が夫の子供ではないかもしれない。
そんな辛い思いをさせるのが申し訳なかった。
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