女神様、もっと早く祝福が欲しかった。

しゃーりん

文字の大きさ
上 下
8 / 23

8.

しおりを挟む
 
 
ある会議で、血縁判定の魔道具を貴族たちに見せた。

これが魔道具だと思わせるために、魔術師長だけでなく魔道具師長にもこの場に来てもらった。
魔道具師長にも女神様からの祝福物だと言うことは説明し、まだ公表するわけにはいかないので魔道具ということにしてほしいと説明している。


台座と水晶を含めた全体が魔道具だと説明した。
判定の仕組みが台座にあるように見せているのだ。
台座は簡単には持ち運び出来ないように重くしてある。

「これが血縁判定の魔道具だ。神殿に設置する。」

使用者は署名をしてから神官立会の下、判定が行われること。
水晶の中が金色にキラキラしている時に2人で手を置き、中のキラキラの渦巻き具合によって、親子、祖父と孫、従兄弟などがわかることを説明した。
血縁でなければ黒の渦巻きだとも。

「誰か試す気がある親子か兄弟がこの場にいるか?」

ある侯爵と伯爵が手をあげた。
それぞれ水晶に手を置く。すると、多くのキラキラが渦巻いた。

「兄弟であると証明されたな。」

魔道具師長が侯爵をその場に止めて2人で触れた。黒く渦巻いた。

「御覧の通り、血縁関係はありません。」

どっと笑いが起こったが、手をあげる者がいた。

「この魔道具は妻を信用していないことになりませんか?」

「妻を信用しているなら使わなくてもいいんだ。
 ただ、一つ例をあげると私の娘クレアが侍女の会話を聞いて自分が王妃の子ではないと勘違いした。
 見事この魔道具が証明してくれたが。」

「一体どういう会話が?」

「王妃とシェイアは似ている。クレアは王妃に似ていない。」

「クレア王女様は国王陛下の子供の頃にそっくりですよね?」

「そうだ。会話もそう続いた。だが、思い込んだら子供にはわからない。
 王妃と判定して水晶がキラキラしたら喜んでいたよ。」

魔道具師長が国王に続いて述べた。

「逆に、自分たちに顔も髪色も瞳も似ていない子供が我が子であるか疑う男も居ると思います。
 隔世遺伝と言われても信じたくてもどこか信じていない者も。
 そういう時は妻に黙って子供と判定すれば良いのです。
 万が一、自分の子じゃないと判明しても妻や子を追い出すのは止めてほしいですがね。
 特に自分も浮気の経験があるならば。
 理由や相手を確認して、正式な手続きを経て離婚するには構いませんが。」

そうなのだ。ひょっとしたら、離婚が増えるという恐れもある。
だが、判定に来る者は興味がある者と確認して安心したい者がほとんどであると思われる。
疑いを持って判定に来た者に対しては、妻子がどうなるか今後を注視するしかない。
浮気相手の子を跡継ぎにしようとした妻は自業自得だが、子に罪はないだろう。

「一度判定したら次に子が産まれるまでは必要ないから、この魔道具はあと数か所の神殿におく。
 流通させても仕方のないものだからな。」

他にも設置すると伝えることで、破壊しても意味がないと伝えておく。




会議が終わり、魔術師長が密かに設置していた4か所の映像記録の魔石を外す。

「面白がっていた者が多かったですが、数人は顔を強張らせていましたね。
 再度、映像を確認して怪しい素振りをした者は調査対象になります。
 その者が判定に来るかはわかりませんがね。」

「怪しい者が見つかることで女神様が危惧なさった問題が解決に向かえばいいんだけどな。」


まだまだ先が見えない。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

私はいけにえ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」  ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。  私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。 ****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

なんでも奪っていく妹とテセウスの船

七辻ゆゆ
ファンタジー
レミアお姉さまがいなくなった。 全部私が奪ったから。お姉さまのものはぜんぶ、ぜんぶ、もう私のもの。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

(完結)初恋の勇者が選んだのは聖女の……でした

青空一夏
ファンタジー
私はアイラ、ジャスミン子爵家の長女だ。私には可愛らしい妹リリーがおり、リリーは両親やお兄様から溺愛されていた。私はこの国の基準では不器量で女性らしくなく恥ずべき存在だと思われていた。 この国の女性美の基準は小柄で華奢で編み物と刺繍が得意であること。風が吹けば飛ぶような儚げな風情の容姿が好まれ家庭的であることが大事だった。 私は読書と剣術、魔法が大好き。刺繍やレース編みなんて大嫌いだった。 そんな私は恋なんてしないと思っていたけれど一目惚れ。その男の子も私に気があると思っていた私は大人になってから自分の手柄を彼に譲る……そして彼は勇者になるのだが…… 勇者と聖女と魔物が出てくるファンタジー。ざまぁ要素あり。姉妹格差。ゆるふわ設定ご都合主義。中世ヨーロッパ風異世界。 ラブファンタジーのつもり……です。最後はヒロインが幸せになり、ヒロインを裏切った者は不幸になるという安心設定。因果応報の世界。

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

魅了魔法の正しい使い方

章槻雅希
ファンタジー
公爵令嬢のジュリエンヌは年の離れた妹を見て、自分との扱いの差に愕然とした。家族との交流も薄く、厳しい教育を課される自分。一方妹は我が儘を許され常に母の傍にいて甘やかされている。自分は愛されていないのではないか。そう不安に思うジュリエンヌ。そして、妹が溺愛されるのはもしかしたら魅了魔法が関係しているのではと思いついたジュリエンヌは筆頭魔術師に相談する。すると──。

処理中です...