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しおりを挟むダイヤモンド鉱山がセラヴィのものなんだったら、交渉がし易そうだ。
侯爵だと話を聞いてももらえなさそうだしな。
それにちょっと早いかもしれないけれど、セラヴィと友人関係になるにはいい機会かもしれない。
復縁を迫られないように気をつけないとな。
そう思いながらやってきた侯爵家は、前みたいに簡単に入れてもらえなかった。
「セラヴィに会いたいだけなんだ。どうしてダメなんだ?」
「お約束はございますか?あなた様を通してもよいとの指示は聞いておりませんが。」
「いや、今までそんな約束なんてなくても入れてくれたじゃないか。」
「無関係となった方を勝手にお入れするわけにはいきません。
今後はお伺いを立てた上で了承の返事が得られた日時にお越しください。」
頑なに取り次いでもくれない門番に追い払われて、仕方がなくトレッドは帰った。
その後は先ぶれを出しても断られ、手紙を書いても『セラヴィは長期不在中』と未開封の手紙が送り返されて来た。
そんなにセラヴィは落ち込んでいるのか?
長期不在だなんて、泣き暮らしている顔を見せたくない言い訳か、侯爵が手紙を渡さずに勝手に送り返してきているに違いなかった。
それからトレッドは一日おきに侯爵家に通った。
毎日でも良かったけれど、誤解されては困る。しかし、話があることを知ってほしい。
そんな思いだったが、門を通ることはできなかった。
たまたま外出する侯爵や夫人の馬車に声をかけたが、セラヴィは不在だとしか言わない。
しびれを切らしたトレッドは、馬車が通れないように門の前に陣取り、侯爵が帰ってくるのを待った。
そうすると、侯爵は呆れたように話しかけてきた。
「君もしつこいな。セラヴィに何の用だ?」
「僕が話をしたいのはセラヴィなのです。取り次いでもらえませんか?」
「何度も言ったが、セラヴィは長期不在だ。学園後期が始まる数日前まで戻らない。」
あっそう言えば、婚約破棄する前に領地に行く約束をしていた。
セラヴィは一人で領地に行ったのか。ならいないのは仕方がない。
「実は、ダイヤモンド鉱山を返してほしいのです。セラヴィが所有しているのですよね?」
「鉱山を?返せと言われても、鉱山がある場所からもわかるように元々侯爵家の鉱山だ。
一時的に伯爵家に所有権が移ったが、婚約破棄により返してもらっただけだ。」
鉱山の所有権が移った両祖父の嫌がらせのような諍いについても説明を受け、伯爵家には何の権利もないとわかった。
「そんな……鉱山がないとナリアが婚約してくれないのに。」
トレッドは呆然としたまま侯爵の前から去った。
ダイヤモンド鉱山がないと………あ、そうだ。ナリアがうちの他の鉱山と取り換えてもらえばいいと言っていたな。
もうすぐ学園が始まるのでセラヴィにも会える。また侯爵家を訪れると侯爵に邪魔される可能性もあるから、学園で鉱山交換の交渉をしよう。
ナリアにも経緯を話し、学園後期初日にセラヴィに交渉した。
それなのに……鉱山はセラヴィのものではなくて侯爵家のものだと言うし、ナリアの狙いが鉱山でトレッドではないと非難されたナリアは僕に別れを告げるし。
その後、ナリアを追いかけたけれど、彼女は国に帰ると言った。
それから僕は考えた。どうすれば一番いいかを。
父からも、早くセラヴィの情にすがって友人になるようにせっつかれていた。
だから思いついたのに。
セラヴィと再婚約して鉱山を所有してもらう。結婚しても白い結婚でいいじゃないか。
その鉱山を白い結婚の3年間だけナリアに捧げれば愛人になってくれるのではないか。
3年が経てば、セラヴィと離婚してナリアと結婚する。
鉱山も侯爵家に戻るだろうが、ナリアもその頃にはダイヤモンドをたくさん手にして満足しているはずだ。
完璧な計画だったのに。セラヴィはこれっぽっちも情など残っていないとトレッドを拒否した。
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