心の傷は癒えるもの?ええ。簡単に。

しゃーりん

文字の大きさ
上 下
16 / 36

16.

しおりを挟む
 
 
ライガーとミンディーナ、セラヴィの3人でお茶とお菓子を食べながら、トレッドのことを話した。


「さっきね、街を歩いていて思い出したの。
 トレッドと領地の街を歩く時、彼は何度も隣からいなくなるの。
 私に声をかけないで、一人で店に入っちゃって。いつも護衛が教えてくれたけど。」

「あーわかる。トレッドって自己中だもの。見てて腹が立ったことが何度もあるわ。
 トレッドが自分勝手に行動したことの後始末をセラヴィがしてたから。」

「……後始末。そっか。あれはトレッドの後始末なのね。私がするものだと思っていたわ。」

「婚約者だから、でしょ?なんか、お世話させられてるなぁと思っていたの。
 好きでやっているんだと思っていたけど、昨日の話の流れから言うと婚約者だから、よね?」

「……そうね。」

「つまり、トレッドはこれからセラヴィの手を借りないで過ごすのね。
 いいじゃない。すごく復讐になるわ。」
 

復讐?そんな恐ろしいことになるの?


「ミンディーナ、セラヴィ嬢が戸惑っているよ。復讐なんて言ったら悪いことするみたいじゃないか。
 彼は自滅するんだ。セラヴィ嬢が何かをするわけじゃない。」

「そうね。セラヴィが何もしないから、トレッド自身が自滅して落ちぶれることになるのね。」


自滅?落ちぶれる?
 

「私が後始末をしないだけで、トレッドは落ちぶれてしまうの?」

「そうよ?トレッドはなんでもかんでもセラヴィ頼りだもの。
 自分から婚約解消したのに、今後もセラヴィに頼ろうだなんて図々しいもの。」


図々しい。確かに。そういえば私、トレッドに言ったわ。


「トレッドからの婚約解消を受け入れた時、言ったの。
 『今後、私には話しかけないで。ナリアさんにもそう伝えて。』って。
 だから、私に近づいて来ないわ。ナリアさんを頼るんじゃない?」
 

そう言うと、ライガーもミンディーナも目を見開いていた。
驚いてるわね。やっぱりキツイ言葉だったかしら。でもあの時はもう声も聴きたくないと思ったから。


「よく言ったわ。セラヴィっておっとりしているのに、カッコイイ。
 今後もトレッドにいいように扱われるんじゃないかと心配だったけど、さすがだわ。
 やっぱりあなたには芯がある。さすが侯爵令嬢ね。」

「うん。毅然とした態度で突き放すべきだと思う。彼は言われたことも忘れそうだからね。」


あら。きつく言ってよかったみたい。
でも、私に話しかけないでって言ったことを忘れる?……うん。彼なら忘れそう。

 
「いい?セラヴィ。絆されてはダメよ。トレッドが引き受けたことは彼に責任があるの。
 あなたが今までトレッドを手助けした成果はトレッドの評価になってるわ。
 今後、手伝わなくなってトレッドの評価が下がっても、セラヴィのせいじゃない。彼の実力。」

「ひょっとして彼はクラス委員なのか?」
 
「違うわ。前期でもう終わったけれど、トレッドは1年間、生徒副会長だったの。
 そして生徒会の役員でもないセラヴィを自分の秘書として側においていたの。
 それにクラス委員じゃないのに、安請け合いはよくしていたわ。」


そう。そうよね。どれも私の仕事じゃなかったわ。

生徒会長が第2王子殿下でお忙しい方だったから、ほとんど副会長に仕事が回っていたの。
議題案、手配案、日程案、スピーチなどの草案も手伝っていたわ。
 
クラスの勉強会もあったわね。
私がトレッドに教えて、トレッドが問題がわからない人に教えたり。
試験に出そうなところの目星も私がしていたわ。


……トレッドのお手伝い、というよりも、便利人扱い?





 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。

みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。 マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。 そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。 ※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓

双子の妹を選んだ婚約者様、貴方に選ばれなかった事に感謝の言葉を送ります

すもも
恋愛
学園の卒業パーティ 人々の中心にいる婚約者ユーリは私を見つけて微笑んだ。 傍らに、私とよく似た顔、背丈、スタイルをした双子の妹エリスを抱き寄せながら。 「セレナ、お前の婚約者と言う立場は今、この瞬間、終わりを迎える」 私セレナが、ユーリの婚約者として過ごした7年間が否定された瞬間だった。

神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました

青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。 それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。

父の大事な家族は、再婚相手と異母妹のみで、私は元より家族ではなかったようです

珠宮さくら
恋愛
フィロマという国で、母の病を治そうとした1人の少女がいた。母のみならず、その病に苦しむ者は、年々増えていたが、治せる薬はなく、進行を遅らせる薬しかなかった。 その病を色んな本を読んで調べあげた彼女の名前は、ヴァリャ・チャンダ。だが、それで病に効く特効薬が出来上がることになったが、母を救うことは叶わなかった。 そんな彼女が、楽しみにしていたのは隣国のラジェスへの留学だったのだが、そのために必死に貯めていた資金も父に取り上げられ、義母と異母妹の散財のために金を稼げとまで言われてしまう。 そこにヴァリャにとって救世主のように現れた令嬢がいたことで、彼女の人生は一変していくのだが、彼女らしさが消えることはなかった。

お姉様のお下がりはもう結構です。

ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
侯爵令嬢であるシャーロットには、双子の姉がいた。 慎ましやかなシャーロットとは違い、姉のアンジェリカは気に入ったモノは手に入れないと気が済まない強欲な性格の持ち主。気に入った男は家に囲い込み、毎日のように遊び呆けていた。 「王子と婚約したし、飼っていた男たちはもう要らないわ。だからシャーロットに譲ってあげる」 ある日シャーロットは、姉が屋敷で囲っていた四人の男たちを預かることになってしまう。 幼い頃から姉のお下がりをばかり受け取っていたシャーロットも、今回ばかりは怒りをあらわにする。 「お姉様、これはあんまりです!」 「これからわたくしは殿下の妻になるのよ? お古相手に構ってなんかいられないわよ」 ただでさえ今の侯爵家は経営難で家計は火の車。当主である父は姉を溺愛していて話を聞かず、シャーロットの味方になってくれる人間はいない。 しかも譲られた男たちの中にはシャーロットが一目惚れした人物もいて……。 「お前には従うが、心まで許すつもりはない」 しかしその人物であるリオンは家族を人質に取られ、侯爵家の一員であるシャーロットに激しい嫌悪感を示す。 だが姉とは正反対に真面目な彼女の生き方を見て、リオンの態度は次第に軟化していき……? 表紙:ノーコピーライトガール様より

両親から謝ることもできない娘と思われ、妹の邪魔する存在と決めつけられて養子となりましたが、必要のないもの全てを捨てて幸せになれました

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたユルシュル・バシュラールは、妹の言うことばかりを信じる両親と妹のしていることで、最低最悪な婚約者と解消や破棄ができたと言われる日々を送っていた。 一見良いことのように思えることだが、実際は妹がしていることは褒められることではなかった。 更には自己中な幼なじみやその異母妹や王妃や側妃たちによって、ユルシュルは心労の尽きない日々を送っているというのにそれに気づいてくれる人は周りにいなかったことで、ユルシュルはいつ倒れてもおかしくない状態が続いていたのだが……。

始まりはよくある婚約破棄のように

喜楽直人
恋愛
「ミリア・ファネス公爵令嬢! 婚約者として10年も長きに渡り傍にいたが、もう我慢ならない! 父上に何度も相談した。母上からも考え直せと言われた。しかし、僕はもう決めたんだ。ミリア、キミとの婚約は今日で終わりだ!」 学園の卒業パーティで、第二王子がその婚約者の名前を呼んで叫び、周囲は固唾を呑んでその成り行きを見守った。 ポンコツ王子から一方的な溺愛を受ける真面目令嬢が涙目になりながらも立ち向い、けれども少しずつ絆されていくお話。 第一章「婚約者編」 第二章「お見合い編(過去)」 第三章「結婚編」 第四章「出産・育児編」 第五章「ミリアの知らないオレファンの過去編」連載開始

私はどうしようもない凡才なので、天才の妹に婚約者の王太子を譲ることにしました

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 フレイザー公爵家の長女フローラは、自ら婚約者のウィリアム王太子に婚約解消を申し入れた。幼馴染でもあるウィリアム王太子は自分の事を嫌い、妹のエレノアの方が婚約者に相応しいと社交界で言いふらしていたからだ。寝食を忘れ、血の滲むほどの努力を重ねても、天才の妹に何一つ敵わないフローラは絶望していたのだ。一日でも早く他国に逃げ出したかったのだ。

処理中です...