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しおりを挟むライガーとミンディーナ、セラヴィの3人でお茶とお菓子を食べながら、トレッドのことを話した。
「さっきね、街を歩いていて思い出したの。
トレッドと領地の街を歩く時、彼は何度も隣からいなくなるの。
私に声をかけないで、一人で店に入っちゃって。いつも護衛が教えてくれたけど。」
「あーわかる。トレッドって自己中だもの。見てて腹が立ったことが何度もあるわ。
トレッドが自分勝手に行動したことの後始末をセラヴィがしてたから。」
「……後始末。そっか。あれはトレッドの後始末なのね。私がするものだと思っていたわ。」
「婚約者だから、でしょ?なんか、お世話させられてるなぁと思っていたの。
好きでやっているんだと思っていたけど、昨日の話の流れから言うと婚約者だから、よね?」
「……そうね。」
「つまり、トレッドはこれからセラヴィの手を借りないで過ごすのね。
いいじゃない。すごく復讐になるわ。」
復讐?そんな恐ろしいことになるの?
「ミンディーナ、セラヴィ嬢が戸惑っているよ。復讐なんて言ったら悪いことするみたいじゃないか。
彼は自滅するんだ。セラヴィ嬢が何かをするわけじゃない。」
「そうね。セラヴィが何もしないから、トレッド自身が自滅して落ちぶれることになるのね。」
自滅?落ちぶれる?
「私が後始末をしないだけで、トレッドは落ちぶれてしまうの?」
「そうよ?トレッドはなんでもかんでもセラヴィ頼りだもの。
自分から婚約解消したのに、今後もセラヴィに頼ろうだなんて図々しいもの。」
図々しい。確かに。そういえば私、トレッドに言ったわ。
「トレッドからの婚約解消を受け入れた時、言ったの。
『今後、私には話しかけないで。ナリアさんにもそう伝えて。』って。
だから、私に近づいて来ないわ。ナリアさんを頼るんじゃない?」
そう言うと、ライガーもミンディーナも目を見開いていた。
驚いてるわね。やっぱりキツイ言葉だったかしら。でもあの時はもう声も聴きたくないと思ったから。
「よく言ったわ。セラヴィっておっとりしているのに、カッコイイ。
今後もトレッドにいいように扱われるんじゃないかと心配だったけど、さすがだわ。
やっぱりあなたには芯がある。さすが侯爵令嬢ね。」
「うん。毅然とした態度で突き放すべきだと思う。彼は言われたことも忘れそうだからね。」
あら。きつく言ってよかったみたい。
でも、私に話しかけないでって言ったことを忘れる?……うん。彼なら忘れそう。
「いい?セラヴィ。絆されてはダメよ。トレッドが引き受けたことは彼に責任があるの。
あなたが今までトレッドを手助けした成果はトレッドの評価になってるわ。
今後、手伝わなくなってトレッドの評価が下がっても、セラヴィのせいじゃない。彼の実力。」
「ひょっとして彼はクラス委員なのか?」
「違うわ。前期でもう終わったけれど、トレッドは1年間、生徒副会長だったの。
そして生徒会の役員でもないセラヴィを自分の秘書として側においていたの。
それにクラス委員じゃないのに、安請け合いはよくしていたわ。」
そう。そうよね。どれも私の仕事じゃなかったわ。
生徒会長が第2王子殿下でお忙しい方だったから、ほとんど副会長に仕事が回っていたの。
議題案、手配案、日程案、スピーチなどの草案も手伝っていたわ。
クラスの勉強会もあったわね。
私がトレッドに教えて、トレッドが問題がわからない人に教えたり。
試験に出そうなところの目星も私がしていたわ。
……トレッドのお手伝い、というよりも、便利人扱い?
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