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側妃としてサニード王太子殿下と閨も共にする夫婦になる。

それはお飾りになるよりも、もっと私が望んでいないことだった。


「失礼を承知で申し上げますが、私は夫となる者を別の女性と共有することを望んでいません。万が一、クレオリア様との間に跡継ぎに恵まれなかった場合、王太子殿下には側妃が求められるでしょう。王族という立場で生まれ育った殿下はその可能性ももちろん考えておられることと思います。
ですが、その側妃は数年経った後に検討されるべきことです。私以外の側妃に相応しい令嬢を。
殿下の寵愛は正妃に。それが跡継ぎにも恵まれやすい結果だと思います。」

「……そうか。王族になるのはそんなに嫌か?クレオリア嬢とは違う魅力が好ましいが。」


我が儘と言っていたのに魅力的に思えるって、物は言いようよね。


「できれば辞退させて頂きたく存じます。どうしても、ということでしたら国王陛下のお飾り側妃でいかがでしょうか?」


この場にいる全員が目を丸くした。でも、それも王族でしょ?


「いや、わかった。そんなに王族になりたくないんだな。……私の側妃になど、若い聖女を手籠めにするような好色国王だと他国に思われてしまうではないか。」


そうかな?そこまで考えていなかったわ。


「だが、聖女としての役割を担ってもらう必要がある。王城内にある離宮に住んでもらいたい。他国に対し、聖女が王族と近い関係であると示さねば愚かなことを考える国も出てくるのでな。
アイビー嬢の婚約者は子爵令息だったな。その男と結婚することを望むか?望むのであれば結婚することを許すが子爵家の跡継ぎからは外れてもらうことになる。使用人の手配はするが、遊ばせるわけにもいかんので文官として働いてもらうことになるが。」


ちょっと待って。グリッチとの結婚なんて望んでないから!


「国王陛下、婚約者とは交流がありませんので彼との結婚を望んではおりません。彼との婚約は解消で問題ありません。」
 
「そ、そうか。」


アイビーの気迫に国王陛下は驚いたようだった。でも、グリッチとの結婚はなくなったと思っていたから、思わぬ提案に驚いてしまったのよ。ごめんなさい。


「では私から婚約解消を指示しておこう。結婚相手を望むのであれば探させるから言ってくれ。」

「ありがとうございます。卒業まであと1年半あるのですが、その間は学園寮に住みたいのですが。」


国王陛下は微妙な顔をしている。どうせまた、我が儘を言う聖女だとか思っていそう。
だけど、この10日近くも放ったらかしで学園寮にいたんだから同じじゃない?


「わかった。だが、依頼がある時は登城してほしい。他国からの依頼はほとんどが呪いの浄化だ。極秘での依頼がほとんどのため、教会へ連れて行くことも憚れる。来る日は事前にわかるため問題はないはずだ。
それと……明日の前聖女様の国葬後にも依頼が入っているので頼みたい。」

「わかりました。」


来るのが事前にわかっていると言いながら前日に頼むってどうなの?まぁ、いいけど。それよりも……


「国王陛下、明日の国葬時に私を新聖女と紹介することは聞きましたが、喪服でいいでしょうか?」


新聖女お披露目の衣装のことなど何も考えていなかったのだろう。みんながまた驚いた。




結局、時間もないということで喪服でいいだろうということになった。
ただし、念のためにと実家から持ってきたサイズが微妙に合わない喪服ではなく、王族用に仕立てられている華美でも質素でもない質の良い喪服ということに。


この国は聖女の代替わり毎にこうしてアタフタしてきたのかもしれない。

約65年後の次の聖女が貴族でも平民でも、今回を教訓にテキパキしてほしいなぁ。


 
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