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10日後、ローランドが王太子になることが公表された。

存在を知らなかった者は、非常に驚いたが、母親が側妃ネフェリーナと聞き、歓喜した。
 
なぜ秘されていたかは不思議がられたが、王族の継承権を巡るいざこざで第二王子を担ぎ出す貴族を警戒したのではないかと思われた。

通常、正妃の出自が側妃の出自よりも下になることなど、ない。

しかし、国王ルドルフの正妃と側妃が逆なのは公然の事実。

正妃の産んだ子供が跡継ぎとして優先されると決まっている以上、ローランドの存在は貴族たちに波紋を広げていることになるからだ。

結果、側妃ネフェリーナは我が子の存在に沈黙を貫き、国内が荒れることを望まなかった素晴らしい人格者であると称賛されることとなった。

『王妃の座をネフェリーナ様に!』という声が大きくなったが、ネフェリーナは側妃のままでいいと固辞したという。
 


グランツ殿下は、男爵令嬢コレットと結婚した。
もちろん、投げ文のことは伝えているらしいが、彼はコレットを信じたのだ。
コレットのお腹の子供に継承権がないことも伝えられた。

グランツは、王位の継承権も王族でもなくなり、男爵家の婿となった。
しかし、男爵家はコレットの兄が継ぐ。
コレットとグランツは単なる居候、同居人、穀潰しの存在である。

そこそこの金と共に婿入りしたが、コレットは『こんなはずではなかった』と頭を抱えた。
母ルネーゼリアに似た性格のグランツは、コレットの愚痴も気にしない。

すぐにコレットの兄は、自分は未婚のままコレットの子供に男爵家を継がせる決意をする。
妻と子がいなければ、自分は身軽なのだ。妹夫婦の存在が嫌になれば自分が逃げるつもりで。
腹の子がグランツの子でなくても、コレットの子なら男爵家の子なのだから。 




チェルシーとローランドの結婚式は、国内外から祝福された。

これでふらふらだった国が安定する。そう思った者は少なくなかった。

初夜も滞りなく終え、チェルシーとローランドは幸せだった。 
初恋が実り、自分たちの歩む道も定まった。

2人が国王・王妃になるのはそんなに遠い日のことではないという自覚もあった。




結婚式に参列していたある国が帰国の挨拶に訪れた。

国王ルドルフと側妃ネフェリーナ、そしてチェルシーとローランドで応対した。


「こちらはお祝いとは別で、わが国で研究・開発の末、作られた試作品でございます。
まだ精度としては確実とまではいかないのですが、親子の判定ができるものです。
小耳に挟んだのですが、疑惑のあるお子がおられるとか。
もう王族ではないということもわかっていますが、もし疑惑を解消したいのであればお使いくださればと思い、持参した次第でございます。」


親子判定。そんなことができるようになるとは。

グランツの子供のことだろう。
先日、女の子が誕生したと聞いたが思っていた予定日よりも早かった。
しかも、グランツに似たところはどこにもないらしい。

継承権がないにしろ、疑惑は晴らしておいた方がこちらとしても助かる。

チェルシーとローランドはそう思った。


ふと、側妃ネフェリーナ様が目に入った。
彼女は少し、青ざめていた。

そんなネフェリーナ様を不思議に思っていると、国王ルドルフがチェルシーを見ているのに気づいた。
彼はネフェリーナ様を見ていたチェルシーに、意味深に笑った。

チェルシーは目まいがして目を閉じた。

そういうことか。


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