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数日後、ローランドが帰国したという知らせを受けてチェルシーは王宮へと向かった。
 

「ローランドっ!お帰りなさい。」

「チェルシー!ただいま。会いたかった。」


ローランドは以前よりも逞しくなっており、チェルシーをしっかりと抱きしめていた。

グランツ殿下と婚約してからは、誰も報告はしないと思いながらも浮気だと疑われないように距離感には気をつけていたし、ローランドが隣国に行ってしまってからは数えるほどしか会えなかった。

だが今はもうグランツ殿下と婚約していないのだ。
淑女としてはまだ婚約者でもない男女が抱き合うのはよくないことでも、3年前までは挨拶のようなものだったから構わないだろうと自分を甘やかす。
 

「やっと、表に出てチェルシーと一緒にいられる。」

「ええ。長かったけど、これからの人生の方がもっと長いわ。一緒にいろんなところを見に行きましょう。」


とは言ってもそれは公務でということになるだろう。正式に王族と公表しては自由は少ない。

ローランドとこっそり王都の街に行ったことはある。
だけど、基本的に彼は幽閉に近い暮らしをしていた。

ローランドが隣国の学園に行くきっかけは、チェルシーとグランツの婚約。
グランツはチェルシーが何をしなくても自滅したが、ローランドが表に出てくるにはグランツよりも優秀だと知らしめる必要があったのだ。

前国王陛下はローランドを王太子にしたかった。
いや、グランツの婚約者になるようチェルシーに頼み込んだが、結局はこうなることはわかっていた。
  
今となっては、国王ルドルフもわかっていて、チェルシーたちで遊んでいたのだと思う。

 
「10日後に、王太子の変更を正式に公表することに決まった。
その時に、チェルシー、君が僕の婚約者として発表される。結婚式が予定通りってこともね。」

「予定通りね。王妃様のことは?」

「あぁ、無期限の謹慎と発表される。グランツの管理責任を問われて。」


成人している息子の管理責任というのは、こじつけみたいなものだろう。
国中の反感を買ってしまった以上、表に出さない名目なのだから。


「グランツ殿下はどうなるの?」

「あー……ちょっとややこしいことになってて。例の男爵令嬢コレット?彼女がグランツ以外とも関係を持っていたって投げ文があったらしい。」

「投げ文?」

「なんか、こう、門の外から風に乗って飛んできた文に書いてあったらしい。」


それでは文の内容に信ぴょう性はない。
しかし、無視できる内容でもない。

王族からまだ籍を抜かれたわけでもないため、グランツ殿下本人にも一応継承権はあるのだ。
その子供の父親が誰かということは継承権にも関わってくる。

しかし、国王陛下はグランツ殿下の継承権をはく奪して追い出すだろう。
その際、子供の父親が誰であっても継承権を認めないとしてしまえば、問題はない。 

ただ、グランツ殿下はどう思っているだろう。
コレットを信じることができるだろうか。

まぁ、婚約破棄するほど彼女に本気なのだから、心配ないかな。
 

 
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