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グランツ殿下に婚約を破棄すると言われたチェルシーは、すぐさま手続きをした。


「国王陛下、お忘れではないですよね?」

「……わかっている。明らかにグランツ有責の婚約破棄なのは間違いない。君に瑕疵はない。
ローランドを王子として正式に公表する際、王太子をグランツからローランドに変更する。
それから、ルネーゼリアを幽閉……しないとダメか?」

「はっきりと言わせてもらえば、ルネーゼリア様は邪魔です。
近隣国に嘲笑されているのを国王陛下もご存知ですよね?外交でも夜会でも、ずっと陛下の腕にぶらさがっている姿は国の恥です。」

「……可愛いんだけどなぁ。」


どこが?人目に晒しても恥ずかしいと思わない国王陛下の好みは特殊の域かもしれない。


「それに、ローランド様が王太子になっても、国王になるのはまだ先になります。 
ローランド様は国王陛下の裏切りの証。それをルネーゼリア様に見せつけても平気なのですか?」


国王陛下の顔色が悪くなった。

 
「ルネーゼリア様が王妃として表舞台に出続けるということは、王太子になるローランド様と常に顔を合わせることになるということをおわかりですか?」

「そうか。それは……よくない。ルネーゼリアが傷つく。」

「ええ。ですが、どちらが今後表舞台に必要かと言えば、ローランド様ですよね?」

「確かにそうだ。だから、ルネーゼリアに表舞台から消えろ、ということか。」

「王妃としての執務は元々ネフェリーナ様がされているので問題ありませんよね?外交も元々ネフェリーナ様だけで問題ないことですし。腕が軽くなって動きやすくなるのでは?」

「ははっ……まさか、ネフェリーナを王妃にしろと?」

「とんでもございません。今更、ネフェリーナ様が望まれませんわ。」 


奪われた正妃の座を取り返す気があったのであれば、何かしらの行動を取っていたはず。
ローランド様のことも、ルネーゼリア様に匂わせることはいつでもできたのだ。

そもそも、王妃ルネーゼリアの味方は国王ルドルフただ一人なのだから。
 

「はあー。馬鹿なグランツを国王にすることはさすがに難しいだろうとは思っていたが、やらかしてくれたなぁ。」

「そんなところだけは国王陛下に似てしまわれたのですね。」

「ローランドがいたから、馬鹿でも何とかなるかと気にしなかったのが悪かったんだな。」


スペアが存在することで、ゆとりが油断にもなる。


「ま、ローランドとチェルシーが誰もが認める王族のあるべき姿なんだろうな。」

 
国王陛下は窮屈な王族が嫌で、ルネーゼリア様みたいなちょっとお馬鹿な和み系に惹かれるのだろう。


「はあー。ローランドのこと、どうやってルネーゼリアに伝えようかな。」


そんなこと、知りません。





そして数日後の王妃のお茶会の前に、チェルシーは国王陛下から言われたのだ。
 
 
「頼む。ローランドのこと、ルネーゼリアに話してくれ。何なら、幽閉のことも。」と。


国王陛下はチェルシーに言い逃げして去って行った。

なるほど。この不思議な王妃のお茶会が実施されるのは、国王陛下が止めなかったからなのか。



 
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