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しおりを挟む王妃ルネーゼリアには遠回しの言葉は通じない。
お茶会だというのに王妃のひとりの侍女以外、人を遠ざけているせいで新しいお茶すらもらえないという状況なのでチェルシーはそろそろ終わらせることにした。
「王妃様、グランツ殿下の妃はコレット男爵令嬢ただ一人で十分なのです。王太子の座を降ろされることになる殿下には妃を複数人持つことは許されないのですから。」
「何を言っているの、チェルシー。グランツは王太子よ?次の国王になるのよ?」
「いえ、グランツ殿下は王太子失格と大多数の貴族家から判断されました。
王族という尊い身を自覚せず誘惑にまけて種を吐き出す下半身のだらしなさ、政略結婚の意味すら理解することなく無責任な婚約破棄を公の場で宣言する稚拙さ、学びから逃げ王族に仕える国民の意義を惑わせる愚かさ、そのどれもがグランツ殿下が王太子であることを反対させるに十分なのです。」
「そんな……だって、それならルドルフは?国王になったじゃないの。私を妊娠させたのは結婚前だからグランツもルドルフと同じよ?あとは、えっと何だっけ?チェルシーがいっぱい言うから忘れちゃったじゃないの。」
馬鹿王妃だからね。一つしか覚えられないのよね。
「ルドルフ国王陛下も確かに王妃様の誘惑に引っかかって関係を持ち、更に非道な手段であなたを正妃にするという未だに非難されるべき行いをしましたが、それでも国王の座に就くことができたのは執務に問題がなかったことと側妃ネフェリーナ様のお陰です。正妃がすべき仕事を全部やってくださっていますからね。」
「だから、あなたたちの誰かがグランツの正妃になってくれたら解決するでしょう?」
「いいえ?誰が子供も産めず仕事だけさせられる妃になりたがるのですか。
国王陛下とグランツ殿下の違いは、まず本人の頭の出来、執務能力に明らかな差がありますよね。
それと優秀な婚約者だったネフェリーナ様を側妃とはいえ留めることができた国王陛下に対し、グランツ殿下は私と婚約破棄しました。
同じことをしたようでいて、全然同じではないのですよ。」
王妃は頭を捻りながらチェルシーが言ったことを考えていた。
「あれ?じゃあ、グランツは馬鹿なのにどうして王太子になれたの?」
「私が婚約者だったからですよ。一応、第一王子ということで前国王陛下が王妃様のためにグランツ殿下にチャンスを与えたのです。学園で真面目に学業に取り組み、王族に相応しい行動をとるかどうか。
結果は御覧の通りで、グランツ殿下は王太子ではなくなります。」
「でも、でも、グランツ以外に誰がいるの?まさか、チェルシーが王太子に?」
なぜそこで私?
「違いますよ。王太子になるのは第二王子ローランド様です。」
「ローランド?……第二王子?」
どうして私が第二王子の存在を伝える役目を負ってしまったのか。
それはルドルフ国王陛下にその勇気がなかったからだ。
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