10 / 20
10.
しおりを挟む公爵令嬢チェルシーが第一王子殿下グランツとの婚約を承諾したのは15歳のとき。
学園に入学する直前のことだった。
正式に顔合わせをしたとき、グランツ殿下はチェルシーに言った。
『美人だけど今まで婚約者がいなかったのは性格が悪いからなのか?』と。
この時点で、グランツとうまくいかないであろうことはわかりきっていた。
チェルシーが返答する前に、グランツの父、ルドルフが慌てて言った。
『グランツと婚約するために、努力してくれていただけだ』と。
何やら誤解が生じそうな言い方だった。
チェルシーが何事にも努力していたのはグランツのためではない。自分のためだ。
公爵家の令嬢として恥じない振る舞いを心掛け、国に貢献するためでもある。
そして、秘された王子ローランドが表に出てくる時、隣に立つに相応しい存在であるためだった。
しかし、グランツはそんなことを知るはずもなく。
彼は、チェルシーがグランツの婚約者になりたくて頑張ってきたのだろうと勘違いしたようだ。
訂正する気もおこらず、まぁ、別にどうでもいいとチェルシーは思った。
そして2人は学園に入学。
男爵令嬢コレットがグランツに擦り寄ってきたのは約1年後のことだった。
それまでも寄ってくる令嬢にデレデレしていたグランツは王子として相応しい振る舞いができていたとは言えなかったが、コレットに影響を受けて学業ももっと疎かになってきていた。
グランツとコレットが恋仲だと目され始めた頃、グランツの祖父である前国王陛下が退位、グランツの父ルドルフが国王、グランツが王太子となった。
そうなると、コレットはグランツのよそ見も許さないといった感じで自分に夢中になるように仕向けた。
そう。体を使ったのだ。ひとたまりもなかった。
グランツはコレットに夢中になった。
この時点でチェルシーはグランツとの婚約を破棄できた。
しかし、国王ルドルフは卒業まで猶予が欲しいと頼んできた。
卒業までまだ1年あったからだ。
その間にグランツがわが身を振り返り、行動を改めることができれば再度検討してほしい、と。
そこで、チェルシーは条件が満たされなかった場合の見返りを追加した。
条件は2つあった。
一つは、成績を上位で保つこと。20位以内であるべき。
もう一つは、特定の者と不適切だと判断される関係をもたないこと。男女問わず。
卒業までにこの条件が守られなかったと判断した時の見返りは、グランツ有責での婚約破棄を認めること。
そして、グランツは王太子に相応しくないためローランドを王太子とすること。
そこに、チェルシーは見返りをもう1つ追加した。
正妃ルネーゼリアに表舞台から消えてもらうこと。
結局、卒業まで待ってもたった2つの条件のどちらもグランツは守れなかったため、近々グランツはただの王子になる予定だ。しかし、卒業パーティーという公の場で醜態を晒したため、状況次第では王子でいられるかも怪しい。
そして、王妃ルネーゼリアは、自ら開いたこのお茶会が王妃の名で人を呼べる最後の場となるのだ。
1,450
お気に入りに追加
1,618
あなたにおすすめの小説
妹と婚約者を交換したので、私は屋敷を出ていきます。後のこと? 知りません!
夢草 蝶
恋愛
伯爵令嬢・ジゼルは婚約者であるロウと共に伯爵家を守っていく筈だった。
しかし、周囲から溺愛されている妹・リーファの一言で婚約者を交換することに。
翌日、ジゼルは新たな婚約者・オウルの屋敷へ引っ越すことに。
【完結】元お義父様が謝りに来ました。 「婚約破棄にした息子を許して欲しい」って…。
BBやっこ
恋愛
婚約はお父様の親友同士の約束だった。
だから、生まれた時から婚約者だったし。成長を共にしたようなもの。仲もほどほどに良かった。そんな私達も学園に入学して、色んな人と交流する中。彼は変わったわ。
女学生と腕を組んでいたという、噂とか。婚約破棄、婚約者はにないと言っている。噂よね?
けど、噂が本当ではなくても、真にうけて行動する人もいる。やり方は選べた筈なのに。
王妃さまは断罪劇に異議を唱える
土岐ゆうば(金湯叶)
恋愛
パーティー会場の中心で王太子クロードが婚約者のセリーヌに婚約破棄を突きつける。彼の側には愛らしい娘のアンナがいた。
そんな茶番劇のような場面を見て、王妃クラウディアは待ったをかける。
彼女が反対するのは、セリーヌとの婚約破棄ではなく、アンナとの再婚約だったーー。
王族の結婚とは。
王妃と国王の思いや、国王の愛妾や婚外子など。
王宮をとりまく複雑な関係が繰り広げられる。
ある者にとってはゲームの世界、ある者にとっては現実のお話。
王太子殿下に婚約者がいるのはご存知ですか?
通木遼平
恋愛
フォルトマジア王国の王立学院で卒業を祝う夜会に、マレクは卒業する姉のエスコートのため参加をしていた。そこに来賓であるはずの王太子が平民の卒業生をエスコートして現れた。
王太子には婚約者がいるにも関わらず、彼の在学時から二人の関係は噂されていた。
周囲のざわめきをよそに何事もなく夜会をはじめようとする王太子の前に数名の令嬢たちが進み出て――。
※以前他のサイトで掲載していた作品です
婚約破棄って、貴方誰ですか?
やノゆ
恋愛
ーーーその優秀さを認められ、隣国への特別留学生として名門魔法学校に出向く事になった、パール・カクルックは、学園で行われた歓迎パーティーで突然婚約破棄を言い渡される。
何故かドヤ顔のその男のとなりには、同じく勝ち誇ったような顔の少女がいて、パールは思わず口にした。
「いや、婚約破棄って、貴方誰ですか?」
【完結】『お姉様に似合うから譲るわ。』そう言う妹は、私に婚約者まで譲ってくれました。
まりぃべる
恋愛
妹は、私にいつもいろいろな物を譲ってくれる。
私に絶対似合うから、と言って。
…て、え?婚約者まで!?
いいのかしら。このままいくと私があの美丈夫と言われている方と結婚となってしまいますよ。
私がその方と結婚するとしたら、妹は無事に誰かと結婚出来るのかしら?
☆★
ごくごく普通の、お話です☆
まりぃべるの世界観ですので、理解して読んで頂けると幸いです。
☆★☆★
全21話です。
出来上がっておりますので、随時更新していきます。
どうぞ、(誰にも真似できない)その愛を貫いてくださいませ(笑)
mios
恋愛
公爵令嬢の婚約者を捨て、男爵令嬢と大恋愛の末に結婚した第一王子。公爵家の後ろ盾がなくなって、王太子の地位を降ろされた第一王子。
念願の子に恵まれて、産まれた直後に齎された幼い王子様の訃報。
国中が悲しみに包まれた時、侯爵家に一報が。
【完結】婚約者?勘違いも程々にして下さいませ
リリス
恋愛
公爵令嬢ヤスミーンには侯爵家三男のエグモントと言う婚約者がいた。
先日不慮の事故によりヤスミーンの両親が他界し女公爵として相続を前にエグモントと結婚式を三ヶ月後に控え前倒しで共に住む事となる。
エグモントが公爵家へ引越しした当日何故か彼の隣で、彼の腕に絡みつく様に引っ付いている女が一匹?
「僕の幼馴染で従妹なんだ。身体も弱くて余り外にも出られないんだ。今度僕が公爵になるって言えばね、是が非とも住んでいる所を見てみたいって言うから連れてきたんだよ。いいよねヤスミーンは僕の妻で公爵夫人なのだもん。公爵夫人ともなれば心は海の様に広い人でなければいけないよ」
はて、そこでヤスミーンは思案する。
何時から私が公爵夫人でエグモンドが公爵なのだろうかと。
また病気がちと言う従妹はヤスミーンの許可も取らず堂々と公爵邸で好き勝手に暮らし始める。
最初の間ヤスミーンは静かにその様子を見守っていた。
するとある変化が……。
ゆるふわ設定ざまああり?です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる