王妃様には表舞台から消えていただきます

しゃーりん

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卒業パーティーで、チェルシーとグランツ共にお互いに愛はないとわかっている。

愛があれば、婚約解消した相手とは再婚約できないという王家の決まり事も関係ないと王妃は思っているようだが、その愛がない。
つまり、チェルシーとグランツの再婚約は、決まり事を破る必要もないのと同様にあり得ない。


「王妃様、愛はありません。よって、再婚約もありません。」


チェルシーはお馬鹿な王妃にわかるように、はっきりと伝えた。


「あぁん、もうっ!そこは嘘でも『グランツ様と再婚約できるなんて嬉しい!』って言うとこでしょ?
王太子妃よ?正妃ってことは、グランツが国王になれば王妃になれるのよ?それなのにいいの?」

「私は、グランツ殿下と結婚する気はありません。」
 

王妃が望めば、誰でも言うことをきくと思うのは間違いだとそろそろ気づくべきだと思う。 

5人揃ってこのお茶会をボイコットすれば、思い通りにならないこともあるとわかったかもしれないけれど、一応まだ王妃だから、ね。


「やっぱり、チェルシーは可愛げがないからグランツに愛されなかったのね。
まぁいいわ。じゃあ、あなたたち。将来の王妃になれるチャンスよ?誰からアピールする?」


チェルシーを諦め、残る4人の令嬢にターゲットを変えた王妃は、誰もが我先にと手を挙げると思っていたのに誰も何の反応も示さなかったことに戸惑ったようだった。


「あ、あら?そうよね。そんなはしたない真似を王太子の婚約者候補のあなたたちがするはずがなかったわね。」


4人の令嬢がグランツの婚約者候補なのは王妃が勝手に思っているだけのことで実際は違うと口に出して言いたいのをみんな我慢していた。

しかし、我慢したところで話は先に進まない。
 
仕方なしに4人の中でも爵位が一番上の公爵令嬢が王妃に言った。


「失礼ですが、王妃様。私たちには既に婚約者がおりますので、グランツ殿下の婚約者候補になることはございません。」

「あら。それは気にしなくていいわ。王太子の婚約者になれたら、今の婚約者なんて捨ててしまえばいいのよ。ルドルフが何とかしてくれるわ。」

 
さすが、馬鹿王妃。政略結婚を軽く見すぎている。
しかも、国王陛下に後処理を丸投げする気だし。その権力の使い方はあってはならないこと。

でも、グランツが妊娠させたあの男爵令嬢を正妃にしてはいけないということはわかっているようね。

それはおそらく、実体験によるもの。

グランツの選んだ男爵令嬢コレットと同じく、王妃は元男爵令嬢だったのだ。

そしてある意味、グランツとコレットよりも非道なことを国王と王妃はやってのけた。

若気の至り、という言葉だけでは抑えることのできない、やり場のない怒りが未だ国内外に燻ぶり続けているのは、この馬鹿王妃のせいなのだから。 


 

 

 
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