3 / 20
3.
しおりを挟む卒業パーティーで、チェルシーとグランツ共にお互いに愛はないとわかっている。
愛があれば、婚約解消した相手とは再婚約できないという王家の決まり事も関係ないと王妃は思っているようだが、その愛がない。
つまり、チェルシーとグランツの再婚約は、決まり事を破る必要もないのと同様にあり得ない。
「王妃様、愛はありません。よって、再婚約もありません。」
チェルシーはお馬鹿な王妃にわかるように、はっきりと伝えた。
「あぁん、もうっ!そこは嘘でも『グランツ様と再婚約できるなんて嬉しい!』って言うとこでしょ?
王太子妃よ?正妃ってことは、グランツが国王になれば王妃になれるのよ?それなのにいいの?」
「私は、グランツ殿下と結婚する気はありません。」
王妃が望めば、誰でも言うことをきくと思うのは間違いだとそろそろ気づくべきだと思う。
5人揃ってこのお茶会をボイコットすれば、思い通りにならないこともあるとわかったかもしれないけれど、一応まだ王妃だから、ね。
「やっぱり、チェルシーは可愛げがないからグランツに愛されなかったのね。
まぁいいわ。じゃあ、あなたたち。将来の王妃になれるチャンスよ?誰からアピールする?」
チェルシーを諦め、残る4人の令嬢にターゲットを変えた王妃は、誰もが我先にと手を挙げると思っていたのに誰も何の反応も示さなかったことに戸惑ったようだった。
「あ、あら?そうよね。そんなはしたない真似を王太子の婚約者候補のあなたたちがするはずがなかったわね。」
4人の令嬢がグランツの婚約者候補なのは王妃が勝手に思っているだけのことで実際は違うと口に出して言いたいのをみんな我慢していた。
しかし、我慢したところで話は先に進まない。
仕方なしに4人の中でも爵位が一番上の公爵令嬢が王妃に言った。
「失礼ですが、王妃様。私たちには既に婚約者がおりますので、グランツ殿下の婚約者候補になることはございません。」
「あら。それは気にしなくていいわ。王太子の婚約者になれたら、今の婚約者なんて捨ててしまえばいいのよ。ルドルフが何とかしてくれるわ。」
さすが、馬鹿王妃。政略結婚を軽く見すぎている。
しかも、国王陛下に後処理を丸投げする気だし。その権力の使い方はあってはならないこと。
でも、グランツが妊娠させたあの男爵令嬢を正妃にしてはいけないということはわかっているようね。
それはおそらく、実体験によるもの。
グランツの選んだ男爵令嬢コレットと同じく、王妃は元男爵令嬢だったのだ。
そしてある意味、グランツとコレットよりも非道なことを国王と王妃はやってのけた。
若気の至り、という言葉だけでは抑えることのできない、やり場のない怒りが未だ国内外に燻ぶり続けているのは、この馬鹿王妃のせいなのだから。
1,350
お気に入りに追加
1,615
あなたにおすすめの小説

王妃さまは断罪劇に異議を唱える
土岐ゆうば(金湯叶)
恋愛
パーティー会場の中心で王太子クロードが婚約者のセリーヌに婚約破棄を突きつける。彼の側には愛らしい娘のアンナがいた。
そんな茶番劇のような場面を見て、王妃クラウディアは待ったをかける。
彼女が反対するのは、セリーヌとの婚約破棄ではなく、アンナとの再婚約だったーー。
王族の結婚とは。
王妃と国王の思いや、国王の愛妾や婚外子など。
王宮をとりまく複雑な関係が繰り広げられる。
ある者にとってはゲームの世界、ある者にとっては現実のお話。

王太子殿下に婚約者がいるのはご存知ですか?
通木遼平
恋愛
フォルトマジア王国の王立学院で卒業を祝う夜会に、マレクは卒業する姉のエスコートのため参加をしていた。そこに来賓であるはずの王太子が平民の卒業生をエスコートして現れた。
王太子には婚約者がいるにも関わらず、彼の在学時から二人の関係は噂されていた。
周囲のざわめきをよそに何事もなく夜会をはじめようとする王太子の前に数名の令嬢たちが進み出て――。
※以前他のサイトで掲載していた作品です
お認めください、あなたは彼に選ばれなかったのです
めぐめぐ
恋愛
騎士である夫アルバートは、幼馴染みであり上官であるレナータにいつも呼び出され、妻であるナディアはあまり夫婦の時間がとれていなかった。
さらにレナータは、王命で結婚したナディアとアルバートを可哀想だと言い、自分と夫がどれだけ一緒にいたか、ナディアの知らない小さい頃の彼を知っているかなどを自慢げに話してくる。
しかしナディアは全く気にしていなかった。
何故なら、どれだけアルバートがレナータに呼び出されても、必ず彼はナディアの元に戻ってくるのだから――
偽物サバサバ女が、ちょっと天然な本物のサバサバ女にやられる話。
※頭からっぽで
※思いつきで書き始めたので、つたない設定等はご容赦ください。
※夫婦仲は良いです
※私がイメージするサバ女子です(笑)

【完結】元お義父様が謝りに来ました。 「婚約破棄にした息子を許して欲しい」って…。
BBやっこ
恋愛
婚約はお父様の親友同士の約束だった。
だから、生まれた時から婚約者だったし。成長を共にしたようなもの。仲もほどほどに良かった。そんな私達も学園に入学して、色んな人と交流する中。彼は変わったわ。
女学生と腕を組んでいたという、噂とか。婚約破棄、婚約者はにないと言っている。噂よね?
けど、噂が本当ではなくても、真にうけて行動する人もいる。やり方は選べた筈なのに。

【完結】無能に何か用ですか?
凛 伊緒
恋愛
「お前との婚約を破棄するッ!我が国の未来に、無能な王妃は不要だ!」
とある日のパーティーにて……
セイラン王国王太子ヴィアルス・ディア・セイランは、婚約者のレイシア・ユシェナート侯爵令嬢に向かってそう言い放った。
隣にはレイシアの妹ミフェラが、哀れみの目を向けている。
だがレイシアはヴィアルスには見えない角度にて笑みを浮かべていた。
ヴィアルスとミフェラの行動は、全てレイシアの思惑通りの行動に過ぎなかったのだ……
主人公レイシアが、自身を貶めてきた人々にざまぁする物語──
※ご感想・ご意見につきましては、近況ボードをご覧いただければ幸いです。
《皆様のご愛読、誠に感謝致しますm(*_ _)m》


「平民との恋愛を選んだ王子、後悔するが遅すぎる」
ゆる
恋愛
平民との恋愛を選んだ王子、後悔するが遅すぎる
婚約者を平民との恋のために捨てた王子が見た、輝く未来。
それは、自分を裏切ったはずの侯爵令嬢の背中だった――。
グランシェル侯爵令嬢マイラは、次期国王の弟であるラウル王子の婚約者。
将来を約束された華やかな日々が待っている――はずだった。
しかしある日、ラウルは「愛する平民の女性」と結婚するため、婚約破棄を一方的に宣言する。
婚約破棄の衝撃、社交界での嘲笑、周囲からの冷たい視線……。
一時は心が折れそうになったマイラだが、父である侯爵や信頼できる仲間たちとともに、自らの人生を切り拓いていく決意をする。
一方、ラウルは平民女性リリアとの恋を選ぶものの、周囲からの反発や王家からの追放に直面。
「息苦しい」と捨てた婚約者が、王都で輝かしい成功を収めていく様子を知り、彼が抱えるのは後悔と挫折だった。

婚約破棄は先手を取ってあげますわ
浜柔
恋愛
パーティ会場に愛人を連れて来るなんて、婚約者のわたくしは婚約破棄するしかありませんわ。
※6話で完結として、その後はエクストラストーリーとなります。
更新は飛び飛びになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる