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しおりを挟む公爵令嬢チェルシーは数日前、王太子殿下グランツとの婚約を破棄された。
にも関わらず、グランツの母である王妃ルネーゼリアのお茶会に招待されるという不思議。
招待されたのは、チェルシーだけではない。
公爵令嬢はチェルシーともう一人。
侯爵令嬢は2人。
伯爵令嬢は1人。
計5人が招待されていた。
5人の共通点は何かというと、高位貴族令嬢で未婚であるということと、裕福な貴族家であるということ。
そして、王妃の息子である王太子グランツと歳が大きく離れていないということである。
王妃の魂胆は見え見え。
この中の誰かにグランツの正妃になってもらいたいのだ。
それならば何故、グランツに婚約破棄されたチェルシーまで呼ばれているのか。
それは、チェルシーが再び婚約者になり、グランツの正妃になることが手っ取り早いからだ。
「お待たせしたかしら?来てくれて嬉しいわ。」
王妃ルネーゼリアがようやくやって来た。
お茶会の招待状が届いたのが昨日。日時は今日の14時。そして今は15時になろうとしていた。
招待客5人揃って『イラッ』としたことは言うまでもない。
「今日はね、あなたたちにいいお話があるの。グランツの新たな婚約者をあなたたちの中から選ぶわ。
嬉しいでしょう?一人ずつ、自己アピールしてくれるかしら。」
何を言っているのだろうか、この馬鹿王妃は。
数日前に自分の息子がやらかした婚約破棄事件を丸っと無視する気だろうか。
ここはまずチェルシーが口を開かなければ、あとの4人は何も聞けないだろうと思い、王妃に聞いた。
「王妃様、グランツ殿下の新たな婚約者はコレット男爵令嬢ですわ。」
「あの子はダメよ。男爵令嬢なんだからグランツの側妃になればいいわ。それをわからずにチェルシーとの婚約を破棄してしまうだなんて。私は認めていないの。
ねぇ、チェルシー。やっぱりあなたがグランツの正妃になるべきだと思うの。」
「王妃様はご存知ないのでしょうか?王族は一度婚約を解消した相手とは二度と再婚約できないことになっているのですけれど。」
グランツはもうチェルシーと婚約できないのだ。
なのにこの場にチェルシーを呼んだ王妃はやはり馬鹿だろう。
「ルドルフがそんなこと言ってたけど、そんな決まりはどうでもいいと思わない?愛があれば、どんなことも可能なはずよ!」
ルドルフというのは王妃の夫。つまり国王のこと。
そして愛はどこにある?グランツとチェルシーのお互いに愛はなかったとあの場でわかったはずなのに。
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