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しおりを挟む王宮には、夫の部屋、夫婦の寝室、妻の部屋の3部屋が繋がった間取りがいくつかある。
例えば、国王夫婦、王太子夫婦、第二王子夫婦など、数組が同時に王宮で生活することがあるからだ。
国王陛下は元々はラフィーナとの続き部屋を使っていた。
しかし、ラフィーナが寝室に護衛騎士を引き入れたため、その後は違う一人部屋を使用していた。
そして、今回はラフィーナと使用した夫婦部屋とは違う続き部屋に移動することになり、妻の部屋をブライディアが使用することになっている。
まだ側妃扱いにはなるが、一日も早く子供ができることを望まれており、既に正妃扱いの部屋だ。
しかも、ブライディアは翌週にはやってきた。これには誰もが驚いた。
手続きを終え、正式に側妃となったブライディアを改めて見た国王ウラジールは戸惑った。
『どうしてこんなに素敵な令嬢に婚約者がいなかったのか』と。
要するに、一目惚れをした。年甲斐もなく。いや、年は関係ない。
ウラジールはこの容姿の女性が好みだということだ。
つまり、美人で見事な体形。容姿端麗な女性に。
ラフィーナとは少しタイプは違う。
しかし、ウラジールにはラフィーナに初めて会った時の胸の高鳴り以上のものがあった。
あの学園に入学したての頃とはもう違う。
ウラジールは今夜にもこの女性を抱けるのだ。つまり、肉欲を伴った感情であった。
しかし、さすがに今夜抱かれるのはブライディアの方が嫌かもしれない。
会話をしたのが今日初めてなのだから。
侍女たちは初夜の準備を進めてくれているが、寝室でブライディアに確認しようと思った。
すると、
「え?そのつもりで来ましたよ?今日からの数日間が妊娠しやすい時期なのです。
妊娠を望まれているのに、来月まで待つなんて意味のないことではないですか。」
もちろんこの言葉は嘘ではない。しかし、ブライディアもウラジールに一目惚れしていた。
「ブライディア、君の合理的な考え方はとてもいいね。
私は非常に君が気に入った。よろしく頼むよ。」
「はい。こちらこそ。よろしくお願いします。当然ですが純潔ですので……」
「わかっている。痛いことがあれば言ってくれ。
ブライディアは正直に口にしてくれそうだがな。我慢しなくていい。」
喘ぎ声もな。そう耳元で囁くと、さすがにブライディアも恥ずかしそうに真っ赤になった。
10数年は閨事から遠のいていたが、ソノ気になれば何の問題もない。
初めてのブライディアを優しく丁寧に、何度も気持ちよくさせた後に純潔を奪った。
ブライディアは、『こんなに気持ちいいとは思わなかった』と満足してくれたようだ。
それから数日間は毎日。妊娠しやすい時期を過ぎると一日おきに抱いた。
ブライディアはすぐに妊娠した。初夜と数日間のうちに授かったのだ。
さすがにウラジールは驚いたが、ラフィーナの時もそうであった。
ラフィーナは結局ブライディアを側妃にした半年後に亡くなった。
それに伴い、ブライディアは王妃となった。
ブライディアは男の子を出産した。2年後には女の子を。
ベンジャミンは三兄弟の長男になったのである。
ベンジャミンとララベルには互いが25歳の時に女の子が生まれた。
結婚して7年後のことだった。
『あと1年で生まれなければ側妃を娶るお約束でしたのになぁ』とある大臣に言われた時には、その話がまだ生きていたのかと驚いた。
いや、ちょっと待て。8年後と言ったのは5年前の話だ。まだ3年あったじゃないか。
うっかり騙されるところだった。でも、ララベルに子供が生まれなければありえたのか……側妃。
弟と妹が生まれた時点で、もうこのままだと思っていた。
……いや、それでも真実の愛を貫く使命が私にはあるのだ。ツライ。
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