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先ほど、真実の愛など気にせずに王家のために使命を果たす令嬢がいると言った宰相に聞いた。


「宰相、先ほど私に勧めた親戚の令嬢は今何歳なのですか?」

「…確か、18歳で既に学園は卒業しております。」

「どこの令嬢?」

「私の姪でして、リード侯爵家の令嬢です。」

「侯爵令嬢ですか。なぜ婚約者がいないのですか?」
 
「あの娘はブライディアと言いますが、婚約者候補の令息を言い負かす娘でして……
 勝ち気なのか、賢すぎるのか、男をたてることをしないらしく嫌厭されてしまうそうです。」

「なるほど。いいじゃないか。父の側妃、いや、実際は正妃みたいなものだ。
 どんな噂をされようが撥ねつける心意気がありそうだし。
 ねぇ、父上。まだあと10年は国王陛下でいてもらわねばなりません。
 国王の隣には適切な正妃がいるのが望ましいと思いますよ。
 是非ともブライディア嬢を父の正妃に。どうでしょうか、みなさん。」


うんうん頷いている者が多い。私には年下の義理の母にはなるがどうでもよい。


「ひとつ、確認いたしますが、陛下と殿下の双方に男子が生まれた場合はどうなさるので?」

「どうもこうも、父の子供は私の弟だ。普通に考えれば王太子の子供が後継者だろう?
 私の子供が娘で、父の子供が息子の場合は、私から弟に継承されると思えばいい。
 確かに私の母は元伯爵令嬢でブライディア嬢は侯爵令嬢だ。
 ブライディア嬢が息子を生んだ場合は弟の方が相応しいという意見も出るだろう。
 だが、ララベルの義父である公爵も、ララベルが息子を生んだ場合は譲らないだろう。
 しかしどの道、私が中継ぎをしないと、父から弟に継がせるのは年齢的に無理だ。
 ま、男子がいつ誰に生まれるかで、その時にまた議論すればいい。」
 

正妃と側妃が同時期に男子を産む後継者争いと似ているようで少し違う。
しかし、今から杞憂したところで生まれてもいないのだから。

 
ここで、ようやく父が話の流れについてきたようだ。


「ちょっと待ってくれ。私に側妃?いや、正妃?今更?」

「今更も何も、国王陛下なのですから子供があと一人二人いてもいいのでは?」

「18歳の令嬢が40男に素直に嫁ぐわけがないだろう?」

 
みんなが一斉に宰相を見た。誰も実際の令嬢を知らないから。


「……ブライディアなら、むしろ同年代よりもいいと思うかもしれません。」

「年の離れた後妻なんて、よくある話ではないですか。」

「……父上、まさか機能していないなんて言いませんよね?」


みんなの視線が机で隠れて見えないのに陛下の股間辺りを凝視していた。


「何をバカなことを。まだ機能している。問題ない。」


なぜか拍手が起こり、父が側妃を娶る方向で承認された。

ひとまず、側妃となり、時機を見て正妃にする方向で……
 
ブライディアにもブライディアの両親にも確認がとられないまま話は勝手にまとまった。

 

まさか、父だけでなく大臣たちまで私の口車に乗ってくれるとは……お陰で助かった。

   

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