上 下
1 / 9

1.

しおりを挟む
 
 
2年前に結婚した王太子ベンジャミンには、まだ子供がいなかった。

王家では後継者を早く望まれ、2年を過ぎた辺りから側妃の話があがり始める。

例に漏れず、王太子にも側妃の選定が行われることが告げられた。けど……


「嫌です。」

「………え?」


告げた大臣は何を言われたか、一瞬理解できなかったようだ。


「まだ2年です。私もララベルもまだ20歳だ。二人きりの時間が欲しくて子作りが遅くなった。
 だから、あと2年あってもいいんじゃないですか?」


……嘘だ。実際は結婚当初から子作りに励んでいるが出来ない。


「っそれは困ります。今までに結婚から4年過ぎても子供がいなかった王太子などおりません。」

「私が前例になればいいんじゃないかな?後の王族にも喜ばれる。」

「その喜ばれる王族のためには、まず王太子殿下のお子様が必要です。」


水掛け論になりそうだな。鬱陶しい。


「私はララベルを愛しているから、側妃を抱くことはないよ?それでもいい?」 

「いいわけありません。殿下のお子を授かるために側妃になられるのです。」

「殿下、王太子妃殿下も納得の上、嫁がれているのです。
 自分が産めないのであれば、側妃が産む。王家の直系を守るためには当然のことなのです。」


王家の直系に生まれた義務。それはわかってる。……だけどなぁ。


「国王陛下には側妃はいないではないですか。」

「っ陛下はすぐに王太子殿下を設けられました。」

「でも、私一人しか子供はいない。父に側妃の案はなかったのですか?」

「それは…ですが、今は殿下の問題です。陛下の時とは状況が違います。 
 まずは一人、お子を設けてもらわなければなりません。
 側妃に一人でも産ませれば、妃殿下だけを愛そうが自由です。」
 

そんな条件で側妃になる令嬢いる?………いるか。いそうだな。将来の国王の母だもんな。
愛はいらない。地位だけほしい。正妃に優越感。うわー嫌だ。


「だから、無理です。ララベル以外抱きたくありません。」

「殿下。他の女性を経験することで妃殿下との閨も刺激になりますよ。
 嫉妬で妃殿下も妊娠しやすくなるかもしれません。
 愛人に対抗する正妻は多くいますからね。」


んなわけあるか!愛人と正妻が同時期に妊娠なんてすると産まれる子供にまで嫌われそうだ。


「せめて、あと1年待ってくれませんか?」


少しでも引き延ばしたい。


「…では、殿下の結婚3周年直後に側妃を迎え入れることでいかがでしょうか。
 皆様も殿下からの折衷案で納得いただけますか?」


大臣たちは、みんな頷いている。マズい。


「ちょうど良いのでは?今から内々に打診を始めることになります。
 まぁ、その前に公募をかけて側妃に立候補なさる令嬢の中から選ぶでもいいですね。」

「殿下との相性もありますし、直接面談をなさるのがよいのでは?」

「妃殿下との兼ね合いもありますね。
 いっそのこと妃殿下がお選びになられると不和にならなくて済むのでは?」

「いいですね。自分が産めなかった跡継ぎを産んでくれた側妃と仲が良い正妃。」


ちょっと待ってくれ。ララベルに選ばせるなんて正気か?
しかも、この1年の間にそんなことをさせると、ストレスで妊娠するわけないじゃないか。

 

こうなったら………もうあの手しかない。










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私ってわがまま傲慢令嬢なんですか?

山科ひさき
恋愛
政略的に結ばれた婚約とはいえ、婚約者のアランとはそれなりにうまくやれていると思っていた。けれどある日、メアリはアランが自分のことを「わがままで傲慢」だと友人に話している場面に居合わせてしまう。話を聞いていると、なぜかアランはこの婚約がメアリのわがままで結ばれたものだと誤解しているようで……。

私が我慢する必要ありますか?【2024年12月25日電子書籍配信決定しました】

青太郎
恋愛
ある日前世の記憶が戻りました。 そして気付いてしまったのです。 私が我慢する必要ありますか? ※ 株式会社MARCOT様より電子書籍化決定! コミックシーモア様にて12/25より配信されます。 コミックシーモア様限定の短編もありますので興味のある方はぜひお手に取って頂けると嬉しいです。 リンク先 https://www.cmoa.jp/title/1101438094/vol/1/

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

王子と王女の不倫を密告してやったら、二人に処分が下った。

ほったげな
恋愛
王子と従姉の王女は凄く仲が良く、私はよく仲間外れにされていた。そんな二人が惹かれ合っていることを知ってしまい、王に密告すると……?!

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

この婚姻は誰のため?

ひろか
恋愛
「オレがなんのためにアンシェルと結婚したと思ってるんだ!」 その言葉で、この婚姻の意味を知った。 告げた愛も、全て、別の人のためだったことを。

婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます

もふきゅな
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。 エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。 悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...