64 / 72
64.
しおりを挟む学園に入学すると、レイフォードとルースが同じクラスになり、アミーナは違うクラスになった。
これは、アミーナに少しでも楽しい学園生活を送ってもらうためにルースとアミーナを違うクラスにするように事前に根回ししておいたのだ。
もちろん、レイフォードがルースと同じクラスになったのも、ルースの行動を見張るためためだった。
ルースは相変わらず、ニタニタニヤニヤした笑顔で令嬢たちを物色するような目で見ているため、令嬢たちはルースと目を合わさないようにしているのだが、ルースはそれを恥ずかしがっていると勘違いしているような男なのだ。
男の自分でも気持ち悪いとレイフォードは思う。
アナレージュから受け取った報告書のことを思い出した。
娼婦が客であるルースの相手をするのは当然のことなのだが、指名の予約が入っていない娼婦が客に指名されるのを待っている場所にいると、『俺に抱かれたくて待っているのはわかっているが俺の体は一つなんだ。順番を待ってくれ』と訳の分からないことを言うらしい。
やがて、ルースの相手をした娼婦からあまり相手をしたくない客と聞き、ルースが来ると慌てて部屋を出るようになり、残っているのは必死で稼ぐ必要のある娼婦だけになったという。
街の平民女性もそうだ。
二階が連れ込み宿になっている飲食店で働く女性は王都を訪れた男相手に気が合えば体を許し、お小遣いを貰うということをしているが、それは女性が望めば一夜遊べるという暗黙の了解の場所なのだ。
そう。女性が男を選ぶ場所なのだ。
しかし、ルースは自分が女性に誘われないのは貴族相手に粗相をしてはいけないと萎縮しているのだと思っており、自分が狙った女性に金を渡すように侍従に頼み、大金に目が眩んだ女性が仕方なしに一晩相手をしているということに気づいていない。
つまり、ルースは自分が女性から嫌われているなど全く思ってもいない勘違い男なのだ。
それはもちろん、アミーナに対してもそうだ。
アミーナが命令を聞くのも、笑わないのも、ルースの指示に従っているから。
ルースは当初、アミーナに惚れる男を近づけないために笑顔を振りまくなと言ったのだが、その命令を取り消していないためにルースにも笑わないということに気づいていない。
アミーナが自分のものになったということが非常にルースの優越感を刺激しており、パーティー等で自分に付き従うアミーナへの扱いを非難されていることもわかっていないのだ。
そして、アミーナも自分のことが好きだと思っている。
『早く結婚してアミーナを抱きたい』『アミーナを悦ばせるためには多くの経験が必要だ』
ルースと関係を持った女性は、そう言っていたと証言していた。
レイフォードはそう書かれてあった報告書を汚らわしくて破り捨てたくなったのだ。
自分の性欲を満足させているだけのくせに、アミーナを口実にしている発言に腹が立ったから。
しかし、クラスメイトの令嬢たちを見ている限り、初めからルースの愛人狙いは誰もいないだろう。
確かにルースは侯爵令息だ。
だが、まだ婚約者のいない男はいるし、入学したばかりなのだ。ルースに絞る令嬢がいたら見てみたい。
1,540
お気に入りに追加
3,481
あなたにおすすめの小説
嘘をありがとう
七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」
おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。
「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」
妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。
「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」
【完結】会いたいあなたはどこにもいない
野村にれ
恋愛
私の家族は反乱で殺され、私も処刑された。
そして私は家族の罪を暴いた貴族の娘として再び生まれた。
これは足りない罪を償えという意味なのか。
私の会いたいあなたはもうどこにもいないのに。
それでも償いのために生きている。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
完結 婚約破棄は都合が良すぎる戯言
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子の心が離れたと気づいたのはいつだったか。
婚姻直前にも拘わらず、すっかり冷えた関係。いまでは王太子は堂々と愛人を侍らせていた。
愛人を側妃として置きたいと切望する、だがそれは継承権に抵触する事だと王に叱責され叶わない。
絶望した彼は「いっそのこと市井に下ってしまおうか」と思い悩む……
[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで
みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める
婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様
私を愛してくれる人の為にももう自由になります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる