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しおりを挟む自分が投げつけたカエルをアミーナに投げ返されて驚き、足を滑らせて怪我をした侯爵令息ルース。
どう考えても責任を取る必要はないのだが、周りにいたルースの友人たちがアミーナのせいだと騒ぎ立てたことでアミーナの父親は怪我の責任を取って婚約を受け入れることにしたのだという。
「相手が下位貴族だったら兄も了承しなかったでしょうけど、侯爵家だったからアミーナの嫁ぎ先には申し分ないと判断したようよ。」
「爵位としては確かにそうでしょうけど……」
リゼルが濁した言葉をアナレージュもわかっているのだろう。
ルースにはいろいろと問題があるのだ。性格も、顔も、体型も。
「顎の傷は綺麗に治ったし、歯も出っ歯だったのが1本無くなったことによって歯並びが改善されて唇から歯が見えなくなったらしいわ。怪我の功名よね。婚約を続ける理由はなくなったと思いたいわ。」
リゼルは挨拶しかしたことはないが、アミーナは可愛い令嬢で、婚約前までは明るい性格だったらしい。
だが、ルースとの婚約をきっかけにアミーナから笑顔が消えた。
元々、アミーナはルースのことを苦手に思っていたのに結婚相手となったのだ。そうなるだろう。
ルースはいつもニタニタと笑っており、小太りで、いたずら好きで、令嬢たちからは避けられるタイプの男なのだ。
「そのルースって子はアミーナ嬢が好きだったのでしょうね。」
「だと思うわ。ルースは怪我を理由に婚約を押し通した。兄は娘を単なる道具のようにしか見ていないからアミーナの気持ちを考えることなく騒ぎが大きくなる前に婚約を受け入れたのよ。」
「アミーナ嬢はお茶会でも令嬢とおしゃべりさせてもらえずにずっと彼の側に付き添っていて、とても可哀想に見えてしまって。婚約解消は難しいのでしょうか?」
「難しいわね。ルースの両親は子供に甘いようだけど、現実も見えているわ。ルースが令嬢から好意的に見られる体型や性格をしていないとわかっているようなの。
身長はまだまだ伸びるだろうから体型はマシになると思うけど、性格は難しいわ。
アミーナを逃すと、次の婚約者は貧乏貴族から金で令嬢を買うしかないでしょうね。」
ルースはアミーナが好きなのだろうから、婚約を解消するはずがない。
やはり、レイフォードの恋が実るのは難しいようだった。
しかし後日、アナレージュから新たな情報を得た。
リゼルからアミーナのことを聞かれたアナレージュは、姪が可哀想に思えて何か婚約解消できるような手段はないかとルースの侯爵家であるコリタック家を調べたというのだ。
すると、つい最近、ルースは女の体を覚えたという。
それから毎日娼館通い。娼婦の性技に骨抜きにされているらしい。
娼館通いはいずれ飽きて、そのうち愛人狙いの令嬢や平民に手を出すに違いない。
素行の悪さを集め続けることで、兄の気持ちを変えてみせる。
ルース・コリタックは女性で問題を起こし続けるに違いなく、アミーナが醜聞に巻き込まれる前に婚約を解消するべきだ、と。
そう手紙には記されていた。
リゼルはアナレージュに、レイフォードがアミーナのことが好きだとは伝えていない。
レイフォードから打ち明けられたわけでもないため、リゼルが勝手にアミーナのことを知りたかっただけなのだ。
なので、アナレージュは気づいていない。……はず。
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