好きな人に振り向いてもらえないのはつらいこと。

しゃーりん

文字の大きさ
上 下
55 / 72

55.

しおりを挟む
 
 
レイフォードからレーゲン公爵家での話を落ち着いて聞けたのは翌日だった。


「公爵様がね、お祖父様と呼んでほしいと言ったから、そう呼ぶことにしたんだ。そしたら、あのおじさんも父上と呼んでほしいって言うから呼ぶことにした。よかったかな?」


おじさん……エドモンドがおじさん……まぁ、28歳は子供から見たら微妙な歳よね?


「いいんじゃないかしら?お祖父様が3人、父親が2人いる。母親は……今のところ1人?」
 

帰り際の出来事をどう解釈すればいいのか、まだわからないから。


「あと、もうすぐ8歳だからプレゼントも貰った。」

「あら。よかったわね。……楽しくお話はできた?」

「うーん。楽しかったかと言われたら思い浮かぶような楽しさはなかったけど。難しいお話だった。」
 

おそらく、子供の扱いがわからずに部下に話すような口調で公爵家のことについて語ったのだろう。

レイフォードに公爵家で暮らしたいと思わせるような何かを企むようなこともなかったらしい。


「帰る時に、エドモンド様の奥様にお会いしたの?」

「会ったというか……いきなり現れて何か叫んでた。顔色が悪かったのに真っ赤になって怒ってた。」


レイフォードがエドモンドそっくりで驚いて青ざめたけど、隠し子を養子にすると思って腹が立った?
エドモンドは妻にどういう説明をしていたのだろうか。よくわからない。


まぁ、でも、公爵との面会が問題なかったのであればそれでいい。

それから年1回、レイフォードの誕生日前に公爵に呼ばれてプレゼントを貰って帰ってくることになるのだが、それは孫との接し方に悩む公爵の愛情表現の一種だとわかるのはそんなに先のことではなかった。




エドモンドがバーナー伯爵家を訪れた。

先日の、奥様のことを話に来たのだろうとわかった。


「レイフォードは、妻に会った後、怯えなかっただろうか?」

「大丈夫そうだったわ。やっぱり帰り際にお会いしたのは奥様だったのね。」

「ああ。……妻とは離婚することになるだろう。」

「え……?離婚?どうして?」

「彼女は私の妻でいる条件を破ったんだ。」

「条件って?」


リゼルはエドモンドから、レイフォードのことを実子と言わず養子とした経緯を聞いた。


「……つまり、初めにレイフォードのことを奥様に話した時は、妊娠可能な奥様を気遣って、というか、正直に話すと怒り出して私にまで八つ当たりしそうな感じだから、ひとまず養子ってことにしたのね。
でも、その後、奥様は妊娠できない体になってしまった。そして、そのまま結婚を続けるための条件の一つに養子になるレイフォードを疎ましく思わない、関わりは最小限という条件を付けたということね。」

「ああ。父がレイフォードに会うのが初めての日だったし、妻と会わせるのはもっと先にしようと思っていたんだ。体調も悪かったし部屋で寝ているものだと思っていたんだが、油断した。」


養子になるのがどんな子か興味がわいたのか、こっそり覗きに来たらエドモンドそっくりの子供だったので驚いたということだろう。

でも、それで離婚するのはどうなの? 



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嘘をありがとう

七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」 おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。 「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」 妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。 「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

ローザとフラン ~奪われた側と奪った側~

水無月あん
恋愛
私は伯爵家の娘ローザ。同じ年の侯爵家のダリル様と婚約している。が、ある日、私とはまるで性格が違う従姉妹のフランを預かることになった。距離が近づく二人に心が痛む……。 婚約者を奪われた側と奪った側の二人の少女のお話です。 5話で完結の短いお話です。 いつもながら、ゆるい設定のご都合主義です。 お暇な時にでも、お気軽に読んでいただければ幸いです。よろしくお願いします。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな
恋愛
 王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。 「お前との婚約を破棄する!!」  私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。  だって、私は何ひとつ困らない。 困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

【完結】離婚しましょうね。だって貴方は貴族ですから

すだもみぢ
恋愛
伯爵のトーマスは「貴族なのだから」が口癖の夫。 伯爵家に嫁いできた、子爵家の娘のローデリアは結婚してから彼から貴族の心得なるものをみっちりと教わった。 「貴族の妻として夫を支えて、家のために働きなさい」 「貴族の妻として慎みある行動をとりなさい」 しかし俺は男だから何をしても許されると、彼自身は趣味に明け暮れ、いつしか滅多に帰ってこなくなる。 微笑んで、全てを受け入れて従ってきたローデリア。 ある日帰ってきた夫に、貞淑な妻はいつもの笑顔で切りだした。 「貴族ですから離婚しましょう。貴族ですから受け入れますよね?」 彼の望み通りに動いているはずの妻の無意識で無邪気な逆襲が始まる。 ※意図的なスカッはありません。あくまでも本人は無意識でやってます。

[完結]思い出せませんので

シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」 父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。 同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。 直接会って訳を聞かねば 注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。 男性視点 四話完結済み。毎日、一話更新

(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?

青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。 けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの? 中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。

処理中です...