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しおりを挟む結局、教育係というのは今の時代、必ずしも必要ではなく日々の暮らしの中で祖父母や両親から学ぶだけで十分なのではないかということになり、新たな教育係を公爵家から依頼してもらうのは断ることになった。
教育係から高位貴族の位置づけや心構え、役割を学ぶよりも、どちらかと言えばレーゲン公爵家の歴史や領地のことについて教わる方が将来のためになる。
今の時代、昔ほど高位貴族だからと言って優遇されるわけでもない。罪を犯すと罰せられるのだから。
エドモンドは納得したような、しないような。
自分が受けた教育が無意味だったのかもしれないと認めるような、認めたくないような。
どこか複雑な思いを抱きながらも、自分が正しいと言い切る思いもない様子で、リゼルとエヴァンの意見を受け入れて帰って行った。
そして、いよいよレイフォードがレーゲン公爵と対面することになった。
リゼルはもちろんエヴァンも付き添いたかったが、公爵が許可したのはレイフォードの他は従者一人だけ。
なので、レイフォードについている侍従と共に馬車で送り出した。
いつまでも馬車を見送っていると、エヴァンが聞いてきた。
「リゼル、どうした?」
「……いつまでも子供のままでいないことはわかっているけど、成長したなって思って。」
「まだあと10年はそばにいてくれるさ。」
「ふふ。結構、無茶な案だったのに公爵様が受け入れてくれて良かったわ。」
「公爵家の名に恥じない教育を受けていれば、どこにいようと構わないんだろう。子供の面倒を見なくて済むし、騒がれて日常が崩れるのを嫌がる男もいるからな。」
「あぁ、そう言えば、公爵様は妻でさえ煩わしそうにしていたわ。」
典型的な政略結婚の夫婦って感じがした。
でもそれも、公爵家の財力が夫人を満足させていたからこそのこと。
結局は、シモーヌの薬物の影響で、華々しい地位を捨てることになってしまったけど。
「レイが公爵家にどんな感想をもつか、楽しみだな。」
子供は良い意味でも悪い意味でも素直だから。公爵様を怒らせなければいいけど。
夕方、伯爵家に帰ってきたレイフォードは幼い弟妹に付きまとわれていた。
兄が半日いないことなど今までなかった。弟妹はいないレイフォードを捜し、何度もいつ帰って来るのかを聞いていたのだ。
「公爵家での話が聞きたいけれど……あの子たち優先ね。」
リゼルの言葉にエヴァンも苦笑した。先に一緒に公爵家に向かった侍従から話を聞くことにした。
侍従の話によると、公爵とエドモンドとは特に困った問題は起きなかったようだということだった。
侍従は部屋の中に入れなかったから具体的な話の内容は知らないが、出てきた時のレイフォードの印象からそう感じたということらしい。
だが、問題は帰り際に起こったことだと言う。
「おそらく奥様だと思われますが、レイフォード様の顔を見て『どういうことよ?!』と叫んでおられました。公爵様がすぐに馬車に乗るようにとおっしゃいましたので、レイフォード様を抱えて馬車に乗り帰ってまいりました。」
どうやらエドモンドは妻に、レイフォードが実子だということをまだ話していなかったらしい。
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