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45.
しおりを挟むエドモンドの生殖能力が無くなった原因である子種を殺す薬。
それは、いつ、誰がエドモンドに飲ませたのか。
「ルキアやシモーヌ、アストリー侯爵たちが捕まった少し後のことらしい。
うちで働いていた侍女が犯人だ。ルキア付きでもリゼル付きでもなかった侍女だからお前の記憶にもないかもしれん。子爵家の者でお前より年上だった。」
子爵家の令嬢か。結婚せずに働いていたのだろうか。
「その女はお前のことが好きだったらしい。
リゼルが避妊薬を飲まされていることは知っていたらしく、お前の子供を産めなくてざまぁみろと思っていたが、離婚したことで今度はシモーヌが戻ってきた。シモーヌが産むことも許せなかったが彼女はすぐ捕まった。
だが、お前はいつかまた結婚してお前の子供を産む女が現れる。それが許せない。
だから、大金をはたいて子種を殺す薬を買い、お前に盛った。」
「……シモーヌから貰った薬でもなく、シモーヌに命令されたわけでもない?」
「ああ。関係なかった。数日間、高熱で寝込んでいたことを覚えているか?あの時だ。」
あぁ、大勢の使用人を解雇したり、シモーヌに関係する証拠品の提出や取り調べなどで忙しかった中、倒れたことがあった。疲れかと思っていたが、あの時がそうだったのか。
「お前がアナレージュと再婚する少し前までうちで働いていたが、お前の再婚が迫るにつれて自分の犯した罪の重さに気づいて退職した。
実家にはとんでもないことをしてしまったから貴族籍を抜いてくれと言い、平民になった。
今は修道院に併設された孤児院で働いている。」
「……子爵家は娘が何をしたかを聞いていたのですか?」
「いや、頑なに言わなかったそうだ。今はその女の兄が爵位を継いでいる。
妹が何を仕出かしたかはわからないが、いつかこんな日が来るのではないかとどこか覚悟をしていた、まさか公爵家が関わっていたとは、と兄の子爵はショックを隠せなかったがうちからの沙汰を待つと言ったらしい。」
怒りのやり場がない。
その女は償いようのない罪を自覚し、自ら平民になり孤児を世話することで罪の重さを一生背負うつもりなのだろう。
それは当然受けるべき罰だとは思うが、隠すこともできただろうに正直に白状したということはもっと重い罰を受ける覚悟もあるということだ。
子爵家も、公爵家からの遣いが来なければ、妹が仕出かしたことが公爵家に関わりがあることだとは思わなかったのだろう。
妹個人の問題では済まないと悟ったのだ。
「父上の方は関係ないのですか?」
「ああ。私については、もうわからん。シモーヌの薬のせいかもしれんし、もっと昔の可能性もある。
避妊をしたわけでもないのに、お前以外に子供はできなかったからな。」
そうか。母はエドモンドを産んだせいで体の線が崩れたと文句を言い続けていたからな。
何人も産む気はなかっただろう。
母にはもう確認もできない。
「今更、子爵やその妹を罰しても、私の生殖能力がないということを社交界に広めるだけでしょうね。」
子爵家は何をして公爵家の怒りを買ったのか。話題を提供するだけだ。
悔しいが、体が元通りになることはないのだから。
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