好きな人に振り向いてもらえないのはつらいこと。

しゃーりん

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エドモンドは思いついた案をビクターに披露した。


「リゼルがエヴァンではなく私を選べば、レイフォードは公爵家の籍に入れて公爵家で暮らす。
リゼルはエヴァンを形だけの夫として伯爵家でそのまま暮らす。他の子供たちと離れずに済む。
そして週末にレイフォードが伯爵家に泊まるとき、私も一緒に伯爵家に行きリゼルと過ごす。」


完璧だ。誰も不幸にならない。

だが、ビクターは難癖をつけたいようだった。


「はあ?エヴァンが形だけの夫?それってエヴァンに何の得になるの?」


そういえばそうか。エヴァンだけは不満か?ならば……


「エヴァンも愛人を作ればいいんじゃないか?」 

「あの男は家族を大切にする男だからそれはないんじゃない?形だけってことはエヴァンはリゼル夫人と閨を共にしないってことになる。妻なのに抱けないって生殺しよ?」


それもそうか。となると……


「仕方がない。それならば、週末以外はエヴァンの妻でいることを許そう。」

「え……?リゼル夫人をエヴァンと共有するの?」

「嫌な響きだな。だが、そういうことだ。別に他の男に抱かれろと言っているわけじゃない。元夫と現夫なんだ。
だがもし、リゼルが私以外にはもう抱かれたくないと言うなら、その時は離婚して子供と離れることを覚悟してもらわなければならない。」 


今は夫だからというだけでエヴァンに抱かれているにすぎない。
リゼルが私一人と愛し合いたいと言うのであれば、それを叶えるだけだ。

 
「ふ~ん。じゃあ、その案をエヴァンとリゼル夫人に持っていくんだ。他は考えずに?」

「ああ。完璧だろう?」

「どうだかなぁ……一応、さっきも言ったけど、彼女が愛人になる可能性は非常に低いと思うよ?」
 
「大丈夫だ。リゼルの思いを全て汲む案を出した私にエヴァンも同意してくれるに違いない。」


ビクターはまだ疑わし気な目でエドモンドを見ていたが、気にもならない。

リゼルという愛人と、レイフォードという息子が手に入る。その結果を見せてやろう。
 

エドモンドは二度目の話し合いのため、バーナー伯爵家を訪れる手紙をリゼルに送った。







「……あの人もこりないわね。また宛名が私だけ。ひょっとして、本当は常識がない?」


前回の話し合いにエヴァンもいたにも関わらず、またまたリゼルの名しかなかった。


「リゼルから聞いていたけど、エドモンドって本当に学園の中にいた頃と違うな。
だけど、今思えば、エドモンドは爵位が一番上の男だったから、揉め事でも何でもアイツが姿を見せれば爵位が下の者たちは歯向かうことはない。アイツが執り成したみたいになっていたが特に何をしたわけでもなかったよな?」

「……そうね。みんなが憧れた彼は虚構の人だったのよ。実際のあの人は意外と気弱で思い込みの激しい人だと思うわ。」


悪い人だとは思わないけれど、ちぐはぐな人だった。シモーヌ様に影響を受けすぎたのかしらね。

 
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