38 / 72
38.
しおりを挟むエドモンドは思いついた案をビクターに披露した。
「リゼルがエヴァンではなく私を選べば、レイフォードは公爵家の籍に入れて公爵家で暮らす。
リゼルはエヴァンを形だけの夫として伯爵家でそのまま暮らす。他の子供たちと離れずに済む。
そして週末にレイフォードが伯爵家に泊まるとき、私も一緒に伯爵家に行きリゼルと過ごす。」
完璧だ。誰も不幸にならない。
だが、ビクターは難癖をつけたいようだった。
「はあ?エヴァンが形だけの夫?それってエヴァンに何の得になるの?」
そういえばそうか。エヴァンだけは不満か?ならば……
「エヴァンも愛人を作ればいいんじゃないか?」
「あの男は家族を大切にする男だからそれはないんじゃない?形だけってことはエヴァンはリゼル夫人と閨を共にしないってことになる。妻なのに抱けないって生殺しよ?」
それもそうか。となると……
「仕方がない。それならば、週末以外はエヴァンの妻でいることを許そう。」
「え……?リゼル夫人をエヴァンと共有するの?」
「嫌な響きだな。だが、そういうことだ。別に他の男に抱かれろと言っているわけじゃない。元夫と現夫なんだ。
だがもし、リゼルが私以外にはもう抱かれたくないと言うなら、その時は離婚して子供と離れることを覚悟してもらわなければならない。」
今は夫だからというだけでエヴァンに抱かれているにすぎない。
リゼルが私一人と愛し合いたいと言うのであれば、それを叶えるだけだ。
「ふ~ん。じゃあ、その案をエヴァンとリゼル夫人に持っていくんだ。他は考えずに?」
「ああ。完璧だろう?」
「どうだかなぁ……一応、さっきも言ったけど、彼女が愛人になる可能性は非常に低いと思うよ?」
「大丈夫だ。リゼルの思いを全て汲む案を出した私にエヴァンも同意してくれるに違いない。」
ビクターはまだ疑わし気な目でエドモンドを見ていたが、気にもならない。
リゼルという愛人と、レイフォードという息子が手に入る。その結果を見せてやろう。
エドモンドは二度目の話し合いのため、バーナー伯爵家を訪れる手紙をリゼルに送った。
「……あの人もこりないわね。また宛名が私だけ。ひょっとして、本当は常識がない?」
前回の話し合いにエヴァンもいたにも関わらず、またまたリゼルの名しかなかった。
「リゼルから聞いていたけど、エドモンドって本当に学園の中にいた頃と違うな。
だけど、今思えば、エドモンドは爵位が一番上の男だったから、揉め事でも何でもアイツが姿を見せれば爵位が下の者たちは歯向かうことはない。アイツが執り成したみたいになっていたが特に何をしたわけでもなかったよな?」
「……そうね。みんなが憧れた彼は虚構の人だったのよ。実際のあの人は意外と気弱で思い込みの激しい人だと思うわ。」
悪い人だとは思わないけれど、ちぐはぐな人だった。シモーヌ様に影響を受けすぎたのかしらね。
2,206
お気に入りに追加
3,466
あなたにおすすめの小説

嘘をありがとう
七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」
おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。
「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」
妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。
「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」


ローザとフラン ~奪われた側と奪った側~
水無月あん
恋愛
私は伯爵家の娘ローザ。同じ年の侯爵家のダリル様と婚約している。が、ある日、私とはまるで性格が違う従姉妹のフランを預かることになった。距離が近づく二人に心が痛む……。
婚約者を奪われた側と奪った側の二人の少女のお話です。
5話で完結の短いお話です。
いつもながら、ゆるい設定のご都合主義です。
お暇な時にでも、お気軽に読んでいただければ幸いです。よろしくお願いします。

真実の愛は素晴らしい、そう仰ったのはあなたですよ元旦那様?
わらびもち
恋愛
王女様と結婚したいからと私に離婚を迫る旦那様。
分かりました、お望み通り離婚してさしあげます。
真実の愛を選んだ貴方の未来は明るくありませんけど、精々頑張ってくださいませ。

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
この作品は、小説家になろう様にも掲載しています。

あらまあ夫人の優しい復讐
藍田ひびき
恋愛
温厚で心優しい女性と評判のカタリナ・ハイムゼート男爵令嬢。彼女はいつもにこやかに微笑み、口癖は「あらまあ」である。
そんなカタリナは結婚したその夜に、夫マリウスから「君を愛する事は無い。俺にはアメリアという愛する女性がいるんだ」と告げられる。
一方的に結ばされた契約結婚は二年間。いつも通り「あらまあ」と口にしながらも、カタリナには思惑があるようで――?
※ なろうにも投稿しています。

【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました
紫崎 藍華
恋愛
ヘレンは婚約者のティルソンから、面白みのない女だと言われて婚約解消を告げられた。
ティルソンは幼馴染のカトリーナが本命だったのだ。
ティルソンとカトリーナの愛は真実の愛だと貴族たちは賞賛した。
貴族たちにとって二人が真実の愛を貫くのか、それとも破滅へ向かうのか、面白ければどちらでも良かった。

女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜
流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。
偶然にも居合わせてしまったのだ。
学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。
そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。
「君を女性として見ることが出来ない」
幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。
その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。
「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」
大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。
そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。
※
ゆるふわ設定です。
完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる