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リゼルはエヴァンと入籍し、2人の子を持つ母親となった。

そして結婚から3か月後、リゼルはエヴァンの子供を妊娠した。


入籍前、エヴァンには避妊薬の後遺症の話をしていた。
レイフォードを妊娠することはできたが、今後も影響が残っていないとは限らない、と。
もし、跡継ぎの男の子を望むのであれば、再婚の話はなかったことにするとリゼルは言ったが、エヴァンは構わないと言った。


「子供ができなくても跡継ぎはルティアがいるし、できても男が産まれるとも限らないだろう?自然に任せればいいさ。まぁ、リゼルとの間に子供ができたら嬉しいけど、年齢のこともあるし2年できなかったら割り切ろう。
2人いるんだ。賑やかに、楽しく暮らそうぜ。」
 

そう言ってくれて、すごく気が楽になった。 


まさか、こんなにすぐに妊娠するとは思っていなかったので驚いたけど、すごく嬉しかった。


両家の両親も喜んでくれたし、1歳を過ぎたばかりのルティアは何もわかっていなかったが3歳のレイフォードはリゼルのお腹に赤ちゃんがいると知って毎日お腹に向かって話しかけていた。 

あぁ、幸せだな。

至るところに愛が満ちていて、笑顔で過ごせる楽しい毎日。

バーナー伯爵夫妻の人柄の良さと、明るいエヴァン。

レイフォードのことも、血の繋がりなど関係なく可愛がってくれる。


一緒に暮らすということは、それぞれが少しずつ思いやりを持ち寄り気持ちよく過ごすための努力が必要だと思う。それは血の繋がりがあってもなくても同様で。


レーゲン公爵家は、公爵という爵位のせいだろうか、それとも家風だろうか、それとも子供が育てられる環境のせいだろうか、それとも嫁ぐ嫁の気質のせいだろうか。

家族という繋がりや温かみが感じられない貴族家だった。
 
リゼルが頑張ろうとしたところで、姑である公爵夫人に嫌われ、使用人は公爵夫人の指示に従う。
頼りにしていいはずの夫は会話を望まず、気まぐれに助けてくれるだけだった。 

好きな人に自分のことを好きになってもらいたい。振り向いてもらいたい。
そんな望みは抱く方が愚かなのだとわかった。

政略結婚なら似たり寄ったりのところもあるだろうけれど、リゼルの実家もここバーナー伯爵家も温かい家庭を築いているため、リゼルも結婚すればそうなるものだと思っていた。
  
だけど、憧れていたはずのエドモンドとの結婚を嬉しくないと思ったのも、エヴァンが憧れていたはずのシモーヌを妻にするには疲れそうだと思ったのも、リゼルもエヴァンも、自分たちの両親が築いている家族が理想だったからだろう。

あぁ、幸せだな。

そう思えることが嬉しい。




月日が経ち、リゼルは男の子を出産した。

ロイドと名付けられたこの子はバーナー伯爵家の跡継ぎとなることだろう。

祖父である伯爵と父であるエヴァンによく似ており、リゼルの要素は瞳の色だけだった。

4歳になったレイフォードと2歳になったルティアとは全然似ていないが、2人は弟ができたことをとても喜び、毎日頭を撫でにくる。

容赦なく。……禿げないか心配になるほどに。

でも、そんな姿にほっこりするのだった。
  


しかし数年後、そんな幸せな日々に突如割り込んできたのはレーゲン公爵家、エドモンドだった。

いつかはレイフォードのことを知るだろう。そう覚悟はしていたけど。


 
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