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しおりを挟むシモーヌへの愛は過去のこと。
父と話しながらそう割り切れるほどに、エドモンドはシモーヌに未練はないつもりだった。
『情が全くないとは言えない』
今でもシモーヌが好きかと聞いた父にそう答えた。
だから、父はエドモンドを最後まで信用しなかったのだ。
情に流されることがないとは言えないから。
父の話が嘘だと、シモーヌに泣いて縋られると決意が揺らぐ可能性があるから。
薬物の影響が抜けきっていないかもしれない。
父はそれも考えているのかもしれないが、リゼルを大事にしなかったことが父の信用を得られていない一因であることは間違いなかった。
エドモンドは、以前、シモーヌではなく公爵家を選んだ。
母は今でもシモーヌと通じているのであれば父との離縁を選んだも同然。
2人を切り捨てる覚悟はもうできていた。
父から教えてもらった協力者の一人、ビクターに連絡を取った。
彼が女好きなのは元からだが、それは情報収集の一環でもあるという。
ビクターにシモーヌが来た際の協力を頼み、見事、目的は果たされた。
しかも、托卵を計画していたというオマケ付きだ。
女の恐ろしさを十分に理解した。
そして、父の元へと訪れた。
母は父が死ぬのを嬉しそうに待ち構えていたという。
やはり、女は恐ろしいと理解した。
そして、母の話から、母の実家、辺境伯家の次男ブレイクに国境検問の積荷検査をアストリー侯爵家はほぼ素通りとする約束を取り付けていたとわかった。
シモーヌが母に頼んでブレイクの婚約者候補として辺境を訪れる理由を作った。
そしてブレイクを篭絡して積荷検査を免れようとしたのだ。
海の藻屑となった積荷で大きな負債を負うことになったため、やはり陸路で違法な積荷を運ぼうとした結果、辺境にある国境の管理をしているブレイクを仲間にしようと思ったらしい。
母の兄である辺境伯が関わっているかどうかは、調査が必要になるだろう。
シモーヌは見事に母に裏切られた。
庇うどころか、すべてシモーヌに言われたことだと押し付けた。
実際にそうなのだろう。母は茶葉の影響で、ほぼシモーヌの言いなりだったのだから。
ただし、言われたことに対しては。ということだ。
つまり、自我はわりと残っている。
自分が重い罪にならないためには正直に話すことが一番だと母は判断したのだから。
元々、欲深い母は簡単に人を裏切ることができる。
それでも、心臓発作に見せかける違法薬物を父に飲ませたことで母は重罪になる。
そしてその薬を渡したシモーヌも。
2人は仲良く泥沼にはまった。
これで、他の調査と合わせてアストリー侯爵家は罪に問われることになった。
もう二度と会うこともないだろう。
父の回復、両親の離婚、証拠の提出に書類作業、使用人の解雇などで慌ただしく、疲れからか高熱を出して倒れたりもしながら気がつくと数か月が経っていた。
本当はもっと早くリゼルに謝りに行かなければならなかったが、勇気が足りなかった。
しかし、彼女には事実を知る権利はあるだろう。
今更だが、慰謝料も払わなければならない。
あるいは、彼女が許してくれれば……
そんなことを思いながら、リゼルの実家に連絡を取った。
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