好きな人に振り向いてもらえないのはつらいこと。

しゃーりん

文字の大きさ
上 下
18 / 72

18.

しおりを挟む
 
 
リゼルと離婚した後、父に呼び出されたあの日。

エドモンドは父が調べていたことを教えてもらった。

なぜ、それをもっと早く教えなかったのか。

それはエドモンドがシモーヌの虜になっていたからだ。
そんな状態のエドモンドに教えても信じなかったり、シモーヌに直接聞いたり、シモーヌの味方になるとも考えたからだと父から言われた。

そして、愚かなことをしていたエドモンドを、父はまだ信用していなかった。 
話し終えた父は、『アイツらと一緒に泥沼に沈みたいと思うなら私を殺しに来い』と言ったから。



父の話はエドモンドの卒業前から始まった。


「お前の卒業前に、シモーヌとの婚約解消の話をしたのは覚えているな?理由を覚えているか?」

「アストリー侯爵家が多額の負債を負った、と……それと、きな臭い仕事をしているかもしれないから。」

「そうだ。だがその直後にリゼルがお前を庇って怪我をしたことで彼女を利用した。」

「利用?」

「ああ。シモーヌの後の婚約者はお前を切りつけようとしたクロップ伯爵令嬢の予定だった。だが、彼女は事件を起こして自害したため、傷物になった責任という名目でリゼルをお前の婚約者にした。誰かを婚約者にしないと、お前はシモーヌから離れないと思ったからな。」
 

リゼルはエドモンドにちょうどいい婚約者がいなくなったために利用されただけだったのか。
婚約を解消されてまで……

それに、エドモンドをシモーヌと離すためにクロップ伯爵家の令嬢、確かメアリーという名の彼女と婚約をするはずだったのか?
メアリーは確か何度も好意を伝えてくれていた令嬢だった。
その彼女との婚約話が進んでいたというのに、なぜ彼女はエドモンドを切りつけようとしたのか。

その疑問を父に伝えると、父はため息をついた。


「おそらくだが、シモーヌが彼女の妹をさらわせたのだろう。卒業の少し前に行方不明になっていた。
そしてその犯人がお前だと嘘を吹き込んだ。証拠はないが、そんなところのはずだ。」

「シモーヌが?まさか。どうしてそんなことを……」

「お前と婚約解消する前に、いや、後でも既成事実を作って結婚するつもりだったのだろう。だが、私がすぐにリゼルと婚約させた。まぁ、それでもルキアの手引きで屋敷に通い、お前はリゼルを放置したようだがな。」


シモーヌに会わせないために婚約者としてリゼルを通わせていたというのに、そのリゼルを放ってシモーヌの相手をしていたことを父は未だに怒っているのだろう。いや、呆れているのか。

あの時、父がシモーヌを見かけなければ、そのうち既成事実に持ち込まれていた可能性は確かにある。

 
「エドモンド、お前はシモーヌと会っていた時と今と、何か違うと感じることはないか?」

「違う、とは?」

「シモーヌと婚約していた時は毎日のように会っていたはずだ。リゼルと婚約してからはルキアが呼んだときにお前も会っていたのだろうが毎日ではない。そして私が叱ったあの日以来会っていないはずだ。
あれほど盲目的にシモーヌが好きだったはずだが、今はどうだ?」


自分はシモーヌを愛している。だから、リゼルを突き放していた。リゼルは妻として子供を産む仕事をすればいい。そのために抱いていた。まぁ、性欲処理の意味でも抱いていたが。

そんな思いで今まで過ごしていたが、シモーヌを今でも愛しているかと聞かれれば、そうでもない。

どうしてだ?時が経ったからか? いや、ほとんど彼女を思い出すこともなかった。
 
それにようやく気づいて愕然とした。 



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嘘をありがとう

七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」 おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。 「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」 妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。 「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

初恋が綺麗に終わらない

わらびもち
恋愛
婚約者のエーミールにいつも放置され、蔑ろにされるベロニカ。 そんな彼の態度にウンザリし、婚約を破棄しようと行動をおこす。 今後、一度でもエーミールがベロニカ以外の女を優先することがあれば即座に婚約は破棄。 そういった契約を両家で交わすも、馬鹿なエーミールはよりにもよって夜会でやらかす。 もう呆れるしかないベロニカ。そしてそんな彼女に手を差し伸べた意外な人物。 ベロニカはこの人物に、人生で初の恋に落ちる…………。

《完結》恋に落ちる瞬間〜私が婚約を解消するまで〜

本見りん
恋愛
───恋に落ちる瞬間を、見てしまった。 アルペンハイム公爵令嬢ツツェーリアは、目の前で婚約者であるアルベルト王子が恋に落ちた事に気付いてしまった。 ツツェーリアがそれに気付いたのは、彼女自身も人に言えない恋をしていたから─── 「殿下。婚約解消いたしましょう!」 アルベルトにそう告げ動き出した2人だったが、王太子とその婚約者という立場ではそれは容易な事ではなくて……。 『平凡令嬢の婚活事情』の、公爵令嬢ツツェーリアのお話です。 途中、前作ヒロインのミランダも登場します。 『完結保証』『ハッピーエンド』です!

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

【完結】ある公爵の後悔

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
王女に嵌められて冤罪をかけられた婚約者に会うため、公爵令息のチェーザレは北の修道院に向かう。 そこで知った真実とは・・・ 主人公はクズです。

[完結]思い出せませんので

シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」 父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。 同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。 直接会って訳を聞かねば 注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。 男性視点 四話完結済み。毎日、一話更新

(完)なにも死ぬことないでしょう?

青空一夏
恋愛
ジュリエットはイリスィオス・ケビン公爵に一目惚れされて子爵家から嫁いできた美しい娘。イリスィオスは初めこそ優しかったものの、二人の愛人を離れに住まわせるようになった。 悩むジュリエットは悲しみのあまり湖に身を投げて死のうとしたが死にきれず昏睡状態になる。前世を昏睡状態で思い出したジュリエットは自分が日本という国で生きていたことを思い出す。還暦手前まで生きた記憶が不意に蘇ったのだ。 若い頃はいろいろな趣味を持ち、男性からもモテた彼女の名は真理。結婚もし子供も産み、いろいろな経験もしてきた真理は知っている。 『亭主、元気で留守がいい』ということを。 だったらこの状況って超ラッキーだわ♪ イケてるおばさん真理(外見は20代前半のジュリエット)がくりひろげるはちゃめちゃコメディー。 ゆるふわ設定ご都合主義。気分転換にどうぞ。初めはシリアス?ですが、途中からコメディーになります。中世ヨーロッパ風ですが和のテイストも混じり合う異世界。 昭和の懐かしい世界が広がります。懐かしい言葉あり。解説付き。

【完結】愛くるしい彼女。

たまこ
恋愛
侯爵令嬢のキャロラインは、所謂悪役令嬢のような容姿と性格で、人から敬遠されてばかり。唯一心を許していた幼馴染のロビンとの婚約話が持ち上がり、大喜びしたのも束の間「この話は無かったことに。」とバッサリ断られてしまう。失意の中、第二王子にアプローチを受けるが、何故かいつもロビンが現れて•••。 2023.3.15 HOTランキング35位/24hランキング63位 ありがとうございました!

処理中です...