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リゼルと離婚した後、父に呼び出されたあの日。

エドモンドは父が調べていたことを教えてもらった。

なぜ、それをもっと早く教えなかったのか。

それはエドモンドがシモーヌの虜になっていたからだ。
そんな状態のエドモンドに教えても信じなかったり、シモーヌに直接聞いたり、シモーヌの味方になるとも考えたからだと父から言われた。

そして、愚かなことをしていたエドモンドを、父はまだ信用していなかった。 
話し終えた父は、『アイツらと一緒に泥沼に沈みたいと思うなら私を殺しに来い』と言ったから。



父の話はエドモンドの卒業前から始まった。


「お前の卒業前に、シモーヌとの婚約解消の話をしたのは覚えているな?理由を覚えているか?」

「アストリー侯爵家が多額の負債を負った、と……それと、きな臭い仕事をしているかもしれないから。」

「そうだ。だがその直後にリゼルがお前を庇って怪我をしたことで彼女を利用した。」

「利用?」

「ああ。シモーヌの後の婚約者はお前を切りつけようとしたクロップ伯爵令嬢の予定だった。だが、彼女は事件を起こして自害したため、傷物になった責任という名目でリゼルをお前の婚約者にした。誰かを婚約者にしないと、お前はシモーヌから離れないと思ったからな。」
 

リゼルはエドモンドにちょうどいい婚約者がいなくなったために利用されただけだったのか。
婚約を解消されてまで……

それに、エドモンドをシモーヌと離すためにクロップ伯爵家の令嬢、確かメアリーという名の彼女と婚約をするはずだったのか?
メアリーは確か何度も好意を伝えてくれていた令嬢だった。
その彼女との婚約話が進んでいたというのに、なぜ彼女はエドモンドを切りつけようとしたのか。

その疑問を父に伝えると、父はため息をついた。


「おそらくだが、シモーヌが彼女の妹をさらわせたのだろう。卒業の少し前に行方不明になっていた。
そしてその犯人がお前だと嘘を吹き込んだ。証拠はないが、そんなところのはずだ。」

「シモーヌが?まさか。どうしてそんなことを……」

「お前と婚約解消する前に、いや、後でも既成事実を作って結婚するつもりだったのだろう。だが、私がすぐにリゼルと婚約させた。まぁ、それでもルキアの手引きで屋敷に通い、お前はリゼルを放置したようだがな。」


シモーヌに会わせないために婚約者としてリゼルを通わせていたというのに、そのリゼルを放ってシモーヌの相手をしていたことを父は未だに怒っているのだろう。いや、呆れているのか。

あの時、父がシモーヌを見かけなければ、そのうち既成事実に持ち込まれていた可能性は確かにある。

 
「エドモンド、お前はシモーヌと会っていた時と今と、何か違うと感じることはないか?」

「違う、とは?」

「シモーヌと婚約していた時は毎日のように会っていたはずだ。リゼルと婚約してからはルキアが呼んだときにお前も会っていたのだろうが毎日ではない。そして私が叱ったあの日以来会っていないはずだ。
あれほど盲目的にシモーヌが好きだったはずだが、今はどうだ?」


自分はシモーヌを愛している。だから、リゼルを突き放していた。リゼルは妻として子供を産む仕事をすればいい。そのために抱いていた。まぁ、性欲処理の意味でも抱いていたが。

そんな思いで今まで過ごしていたが、シモーヌを今でも愛しているかと聞かれれば、そうでもない。

どうしてだ?時が経ったからか? いや、ほとんど彼女を思い出すこともなかった。
 
それにようやく気づいて愕然とした。 



 
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