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ジェイコブ様に薬を預けてから2週間ほどが経った。

栄養を与える薬以外の目の良くなる薬2種類は、一日3回、3~10日間点眼するというものである。
一応、説明書きにも書いたしジェイコブ様もご存知だと思うけど、薬草の成分上、この点眼薬は半月ほどしか効能が保てない。つまり、そろそろ預けた薬は使えなくなるはず。
点眼なのだ。粉状と違って液状は腐りやすい。
追加で作成するようには言われていないので、この2週間のうちに点眼を終えたのかどうかはわからなかった。

目の良くなる薬に必要な薬草を中心にジャンカ国の薬草との比較を行っていたので、薬が出来上がってからは他の薬草も比較できるように分量を調べていた。 

そんな時、ジェイコブ様に呼ばれて部屋に向かった。


「あぁ、来たね。
 この目の良くなる薬だけど、結論から言うと失明の危険性はないから新たな被験者で検証する。」


成分的に大丈夫だとは思っていたけれど、ホッとした。


「新薬はね、どんな薬でも世に出るまでに何度も検証する必要がある。わかるね?
 この国では、というかどの国でも同じだけど重犯罪者にまず与えることになる。
 ……驚かないね。聞いたことがあったかな?
 この目の薬も3種類を3人ずつ見え方を聞きながら与えてみた。」


ここで、ジェイコブ様は大きなため息をついた。


「いや、栄養を与える薬の方は特に問題なかった。
 靄がかかって見えていた視界がハッキリしたとか、目がしっかり開くようになったとか。
 ただ、良くなる薬の方が、ね。
 軽度に目が悪い3人と、重度に悪い3人を選んで片方の目に点眼したんだ。
 それぞれ効果は表れた。だけど、文句を言うんだ。
 『片目だけ良くなったら見え方が気持ち悪い』ってね。
 だけど、経過も見たいからねぇ。そのまま我慢してもらうしかないんだ。」


文句を言われて気持ちはわからないでもないけれど、とジェイコブ様は呆れた顔を見せた。


「それとね、老眼ってわかるかい?
 40歳半ば辺りからの目の病みたいなものだけど、弱い方の薬はそれにも効くようなんだ。
 だから、軽度に目が悪い若者と50歳程度の老眼の者のどちらにも効くのか検証が必要なんだ。」

「それぞれ、効果があったようで安心しました。
 何人ずつくらいの被験者が必要なのでしょうか。
 弱い方の薬は倍の人数が必要だということですよね?」

「そうだなぁ。問題は片目ずつだと被験者からも文句を言われるから病人がいいかもしれん。
 ベッドで寝転んでいる者なら見え方が変でも転ぶことはないだろう。
 あとは、メガネをかけている者。お前さんほどでなくても何枚かレンズを重ねてるといいな。
 見え方が変でもレンズで調整できるだろう?
 試した囚人たちの様子をひと月は見てみたいからな。
 その間に、協力してくれる被験者を探してみよう。
 まぁ、数人しか集まらなくても効果がわかれば試したい者も増えるだろうし。」

「……私も試したいのですが。」

「う~ん。気持ちはわかるが、研究員が被験者になるのはおおよその検証が終わるまでダメなんだ。
 調整が必要になるかもしれないし、正直言って、薬として世に出る直前の方が効果的だ。
 君は最後の被験者として相応しい目だからね。」


確かに、私自身がメガネをしなくなると宣伝効果はあるのかもしれない。

だけど、私の目には10日間で効果が表れるのかな。
多分、点眼日数の違いは見え方の違いだろうけれど、私ほど目の悪い人がジャンカ国にいたのかな……
 


 
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