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しおりを挟むミーシャと俺の休みが合う日に、ミーシャがアロイスと会った教会に行かないか?と誘った。
彼女はすごく喜び、楽しみだと言ってくれた。
教会は王都の外れにある。
歩ける範囲にミーシャの元家族がいるかもしれないので、直接馬車で向かうことにした。
教会に入ると、誰もいない。
こじんまりとしているけれど、静かで清潔で落ち着く場所。
アロイスとミーシャが好んで来ていたのがわかる気がした。
何度も通りかかったこともある。入口まで来たこともある。
だけど、こんな風にのんびり座ったことはなかった。
「落ち着くな。」
「はい。ここでアロイス様にお会いしました。
それから裏の孤児院に連れて行ってもらって。
子供たちよりも何もできない自分を知って、驚かされました。
学園に行かなくていい。何もしなくていい。
そう言われて本当に何もしないで、誰ともほとんど話すことなく生きていました。
ここで、自分から動けばいいのだということを教えられました。
本があれば知りたいこともわかるし、勉強もできる。
教えることも教えてもらうことも、いろいろありました。
薬草も育てているんです。本と見比べながら、どんな効能があるのか調べました。」
「それが今の仕事にも繋がったわけか。」
「はい。自分で自分の目の薬を作ろうと思うなんて、思ってもいませんでしたけど。」
笑い合っていると、教会内に誰かが入ってきた。
「おや。お久しぶりですね。お元気でしたか?」
「神父様。はい。元気です。神父様もお変わりありませんか?」
「ええ。元気ですよ。
アロイス様は穏やかに逝かれたとか。ここと同じように楽しく過ごしていましたか?」
「はい。こちらはアロイス様のお孫さんでカーティス様です。」
「祖父がお世話になっていたようで。ありがとうございました。」
「いえいえ。こちらこそ。カーティス様は騎士様ですね。お見掛けしたことがあります。」
「ええ。何かあれば、いつでも言ってください。」
「有難いことに騎士様たちが見回ってくれるので安心しています。」
アロイス様が騎士の巡回ルートにこの教会も組み入れることをお願いしたそうだ。
騎士の見回りがある。それだけで治安は格段に良くなるから。
私が目の薬の研究をしている話をすると、とても喜んでくれた。
神父様にとっては、私は孤児院の子供と似た感じだったのかもしれない。
帰る家や親はいても一人だった私。
ただ、貴族というだけで捨てられなかっただけで。
孤児院の方にも顔を出し、みんなメガネで私のことを思い出してくれた。
子供の成長は早く、驚かされた。みんな、とても逞しい。
畑や薬草園の方も懐かしく思い、一回りしてから孤児院と教会から去った。
「久しぶりに教会に行けてよかったです。ありがとうございました。」
「いや。じー様がお世話になったのに個人的に挨拶したことがなかったからな。」
夕食を家で一緒に食べて、話があるというカーティス様とソファに座った。
そして、言われたことに驚いた。
「ミーシャ。俺と婚約しないか?」
………婚約。婚約とは結婚の約束という意味ではなかったかしら?
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