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しおりを挟むカーティスは、父の侯爵と兄にミーシャにつける護衛の派遣を頼んだ。
「研究所への送り迎えがほとんどだから、その時間だけでいいのです。
休日の外出はミーシャには前もって教えてもらうから、その時につけてほしい。」
「そうだな。日中は研究所から出ないから、一日中張り付く必要性はないな。
研究所にも警備員はいるし、騎士たちの巡回もある。
別邸にいた時に顔見知りになっている者たちがいるから、彼らに任せよう。」
「よろしくお願いします。」
「あの子が素直に受け入れるかが問題だけど、貴族籍で、しかも侯爵家だからね。
それを理由の一つとして納得してもらうしかないね。
あとは、貴族令嬢の怖さも早めに忠告しておくべきだよ。」
「わかってる。俺と歩いたのが失敗だった。」
「それはいいと思うよ。なんならこれからも二人で出歩くべきかも。
ミーシャちゃんがお前の特別枠だと認識されるようになれば、令嬢の目も他の男に向くさ。
お前はフリーだからこそ、狙われるんだから。」
兄の言葉に、そういう考え方もあるのだと思った。
確かに、俺の他にも令嬢に声を掛けられる騎士はいっぱいいる。
しかし、婚約者を大事にしていたり、結婚したりすると他の男に乗り換えたりする。
いくら冷たい態度で接していても寄ってくるのは万が一の可能性があるからか。
愛人や気が向いた時の体の関係狙いの令嬢も多くいるから……
既婚者を狙うよりも希望があるってことか。
「そうだな。
ミーシャを巻き込みたくはないが、今さら他の女性と同じように接することはできないし。
わざと一緒にいるところを見せつけるのもアリかもしれない。
見慣れたら寄って来なくなるかもな。俺にもミーシャにも。」
「ミーシャちゃんの方も後々のことを考えると男除けになっていいんじゃないかな。
侯爵家の庇護下にあると知って、言い寄ってくる男がいるかもしれないし。」
「そうだな。」
明日の朝から護衛を頼むことにして、ミーシャに説明しに行こうとしたところ、騎士団の仲間が侯爵家までやってきた。
「カーティス、ミーシャさんが男爵令嬢に襲われた!」
「えっ!ケガは?」
くそっ!一歩遅かったか。
「突き飛ばされたけど、ケガはない。被害は…メガネだけだ。」
「そうか。今は家か?」
「本部に。研究所と騎士団本部の間だったんだ。
少し離れたところで見ていた騎士がいたらしく、止めに入って2人を本部に連れて行った。」
「わかった。すぐに行く。」
ケガはなくても精神的なショックを受けているかもしれない。
この手の諍いはなかったことにされやすく、第二、第三と手口がエスカレートしやすくなる。
なので、初めが肝心でもある。
手を出した男爵令嬢を厳しく罰しなけば、今後も同じようなことが起こった時に悔やむことになりそうだ。
幸い、今回は男爵令嬢。
前侯爵未亡人のミーシャは侯爵家に籍があるので、うやむやにはさせない。
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