夫の子ではないけれど、夫の子として育てます。

しゃーりん

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フォルティアのお腹の子の父親がディカルドであろうがカールであろうが、侯爵にとっては血筋なので問題はない。
しかし、意外に愛妻家なのか侯爵夫人が気になり、なかなか認めるとは言わなかった。
 
となれば、金のことをちらつかせるしかない。


「お義父様、もし、お義母様の思いを汲んで私を追い出そうとなさるのでしたら、実家からの援助は全て引き上げさせてもらいます。お義母様の言動を止めない場合も同様に。」
 
「そ、そんな……それに、妻の言動をどうしろと言うのだ?」

「お義母様がこの子をディカルド様の子だと認めない限り、私は夫を裏切って不貞をした妻だと社交界に言いふらされてしまいます。そんなことになっていいのですか?ラフォーレ侯爵家の醜聞になりますよ。」

「しかし、だから妻は出て行けと言っているんだ。ディカルドが妻に裏切られた可哀想な息子だと言いたいのだろう。」 


それも醜聞になると思うけど。もう亡くなっているディカルドを悲劇の主役にでもしたいのだろうか。
 

「先日、お二人共にカールに私を襲わせようとしたことを認めていましたよね?」

「あ、あれは……………」


先ほども『あんな男に頼んだのが間違いだった』と口にしていたし。
 

「私とお義父様たち、どちらの主張もカールが亡くなったことで証明のしようがありません。ですが不利なのはお義父様たちだとおわかりですよね?」


フォルティアがカールを連れ込んで不貞したのだと主張しても、その不貞のことをカールから報告を受けたにも関わらず彼らはカールに罰を与えるでもなく、フォルティアにも問い質すこともしなかった。

お腹の子がディカルドの子ではないという主張も今更で、しかも彼は自分の子だと思っていたのだから。
 
 
「お義父様、これからも貴族でいたいのであれば、お義母様にはカールの虚言だったと報告してください。」


カールの虚言。
つまり、フォルティアの純潔を奪ったと報告したのは嘘だった。
そうなると、フォルティアのお腹の子はディカルドの子だと侯爵夫人は思うしかない。


「しかし、カールは死んだんだ。」

「死んだことを知らせなければ問題ないのでは?死ぬ前に話を聞いていたことにもできますし。」


そう。いつカールが死んだかまで侯爵夫人が調べるはずがない。


「私を追い出しても、ラフォーレ侯爵家に先はありませんよ。国王陛下はお義父様の管理責任を問い、罪に問うことでしょう。よくて平民ということになるでしょうね。」

「そ、そこまでか?」

「そこまでです。私の父は国王陛下からの頼みで私をディカルド様に嫁がせて援助しています。」

「国王陛下の頼み?!」

「ええ。私がここに嫁いだのは、そうなるように手回しされた上でのことです。」
 

ラフォーレの領地を立て直すための援助は、フォルティアの実家であるコールタッド伯爵家が様々なことを加味した上で適任だと判断されたからだ。
 
決して、ラフォーレ侯爵家に従う他なかったなどと、コールタッド伯爵である父が格上に屈してフォルティアを嫁がせたわけではない。


 

 

 
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