夫の子ではないけれど、夫の子として育てます。

しゃーりん

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フォルティアを穢したという証拠をカールが口にしたかと思ったが、何もなかったようだ。
例えば、ホクロの場所とか、身体的特徴を述べていたら少し困ったことになるとは思ったが、侯爵夫妻は何も確認しなかったのだと知ってホッとした。

侯爵家の使用人たちも巻き込んでいないのだろう。
卑劣な手段が漏れてはいけないと用心したらしい。
ただ、フォルティアのベッドシーツに異変がないかだけ確認させたのだ。
おそらく、初夜があったはずだと匂わせて。
ディカルドのシーツのことは、使用人は報告しなかったのか、ディカルドが処分したのか。

息子ディカルドを酔い潰して眠り薬を飲ませ、フォルティアの部屋の鍵を開けておいたのも侯爵の仕業に違いない。

そして甥カールをフォルティアの部屋へと送り出し、自分たちは報告が来るのを待っていただけだ。

レニが戻ってきたことでカールは慌ててディカルドの部屋を通って逃げ、レニが追いかけて来ないことを確認した上で侯爵夫妻に報告をして、金を手にして自分の家に帰ったのだ。

しかし、手に入れた金で薬を買う間もなく、子供は亡くなった。
貴族の身分を捨てるほど愛した妻への思いが冷めたのも同時だったのではないか。
泣き暮らす妻を放って女遊びに走ったのだから。薬を買うはずだった金で。


あの夜、カールはフォルティアを抱きながらいろいろと愚痴を言っていた。
逃げられないフォルティアを前に、口が軽くなっていたのだ。

子供が病気になってから妻を抱けないとか、料理が不味いとか、実家の援助があればとか。
それを聞いて、フォルティアは顔も見えない男の正体が誰だか想像がついた。侯爵の甥だ、と。

しかもカールは、妻が他の男と経験があったのが悔しかったと言いながら、フォルティアの純潔を嬉しそうに奪ったのだ。

フォルティアは貫かれて純潔を失うとすぐに、カールに言った。

目的を果たしたのだから抜いてくれ、と。

だがカールは、久しぶりだから治まらないと何度もフォルティアの中に欲望を吐き出した。
カールに体を揺さぶられながらフォルティアはどこか冷静だった。
妊娠するだろう。そう予感めいたものも感じていた。
そしてそれは現実となった。


カールは金のためにフォルティアを抱いて妻を裏切ったのに、子供も亡くなったことで、今の暮らしにも嫌気がさして、ディカルドを脅すことにも繋がったのだろう。

やはり諸悪の根源はカールに頼んだ侯爵夫妻と言える。



侯爵は姉に会いに行き、カールの住まいを聞き出すことにしたようだった。
 


カールの遺体はどこかに埋めてしまおうかとも思ったらしいが、やはり死亡したことは明らかにした方が面倒事にはならないと判断された。

一旦隠したのは、ディカルドが何かに追われるように馬車道に走りこんだため、カールを殺したことが原因だったと思わせないためだったと言う。

フォルティアのお腹の子はラフォーレ侯爵家を継ぐ子になるのだ。
父親が人を殺して自殺したと思わせないために、時間差で『死んでいる人がいる』と通報したらしい。
カールは平民のため、事件だと疑われたり騒がれることもなく、不注意事故で処理された。




 
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