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しおりを挟むフォルティアが離婚するなら慰謝料を請求すると言ったことに侯爵は驚いた。
「ここはお義父様の屋敷です。
私は甥御様がいらしていたことも知りませんでしたし、部屋に鍵もかけていたのに部屋に入られたことになります。
そして甥御様の言ったことを真偽の確認をすることなく家に帰したお義父様。
つまり、甥御様が息子の嫁を襲ったことは侯爵様の指示だった。その結果、妊娠したことによる離婚。
そのように離婚裁判で主張させていただきます。」
「……だが、それはお前が引き入れたと言えばこちらが有利になるはずだっ!」
「そうでしょうか?見知らぬ男を引き入れて純潔を奪ってもらう必要がどこにあるのでしょう。
私は純潔のままなら次の結婚相手に困ることもありません。夫ではない男の子供を妊娠する必要がどこにあるのでしょうか?
構いませんよ?離婚裁判でどちらの主張が認められるか、確かめましょう。」
明らかな不利をようやく悟ったのか、侯爵の顔色が悪くなった時、ディカルドが駆け込んできた。
「フォルティア、君が妊娠しているって……」
フォルティアの姿を見たディカルドは、目を見開いて固まった後、言った。
「やはりそうか。あの日、あの日に僕は君を抱いたんだな……」
ディカルドの言葉に反応したのは侯爵夫人だった。
「何ですって?ディカルド、あなた、フォルティアと初夜がまだだって……」
「いや、ちょっと酔ってて記憶が曖昧だったんだけど、やっぱりそうだったんだ。
驚いたけど……うん。元気な子を産んでくれ。」
どこか照れた表情のディカルドを見て、侯爵夫妻はどうなっているのかわからなくなった。
「え、え……?お前の、子、なのか?」
「僕以外にいるはずがないじゃないか。」
不思議そうに言うディカルドに、フォルティアは教えてやった。
「お義父様たちは、私が不貞をしたのだと疑っておられるのです。だからこの子と共に追い出されるところだったのですよ?」
「不貞?!そんなことをしなくてもフォルティアは離婚して違う男と再婚できるじゃないか。
この結婚は伯爵家の援助が目的でいつでもフォルティアは離婚して出て行くこともできるのに、侯爵領の領民のためにまだいてくれていると聞いた。知らなかったから僕が養子を取るつもりだと言ってしまったことで、そのうち離婚することになると思っていたんだ。
だけど、子供ができたのなら離婚する気もないってことでいいんだよな?」
「そうですね。お義父様たちがこの子がディカルド様の子供だと認めてくださるのでしたら。」
侯爵夫妻は何がどうなっているのかわからず混乱していたが、離婚になれば慰謝料を請求されることになる。
つまり、フォルティアがここに留まるのであれば援助は続くのだと思い頷く。
「あ、ああ。その子はディカルドの子供だと認めよう!」
金に困らない暮らしができるのであれば、と侯爵夫妻はひとまず不貞騒ぎを収めることにした。
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