20 / 21
20.
しおりを挟むある日、ディートは両親からヴィッテに会いたいと言われた。
どうやらクラウドから国王陛下にディートとヴィッテのことが伝えられて、国王陛下から父へとヴィッテに関することが伝えられた。
どうやら、ヴィッテのパルテ伯爵家が侯爵に陞爵するらしい。
侯爵家が一つ減ったからな。あのバンズ家が。
なので、婚約を結ぶなら早い方がいいとのことだ。
婚約者のいない未婚の裕福な侯爵令嬢なんて、縁談が殺到するだろうから。
弟の婚約を結ぶのも、姉が公爵令息の婚約者だと繋がりを明確にしておいた方がいいだろうと。
毎週のようにデートを重ねて、ディートもそろそろ正式に婚約しようと思っていたところだ。
ヴィッテと過ごすのは楽しいし、口数も増える。
それに、婚約者になった方が、もっとヴィッテに触れられるしな。
週末に約束を取りつけ、両親とヴィッテを合わせた。
結果は合格。問題なく正式に婚約を結ぶことになった。
両親的にはディートの気持ちが7割、あとはヴィッテの性格と適正と会話力を確認したらしい。
母曰く、『計算と天然のどちらでもない間を無意識にすり抜ける嫌味のない令嬢』だそうだ。
なんとなくわかる気がする。
地味な装いをしていたこともあって、目立つ令嬢ではなかった。
だが、急に注目されても物怖じしている様子はあまりなかった。
学園でも、いつの間にか批判はなくなっていた。
まぁ、1人だけはまだうるさいが、侯爵令嬢になるならそれも問題なくなる。
正式に婚約したことが伝わったのか、その1人だけうるさい令嬢がやってきた。
スミソナ侯爵令嬢カサンドラである。
「ディート様、正気ですか?公爵令息が伯爵令嬢と婚約だなんて。
相応しいとは思えません。我が侯爵家の方がディート様の汚点にはなりません。」
汚点?伯爵令嬢が?クラスメイトたちはカサンドラの言い分に首を傾げた。
男爵令嬢ならば延々と話題になるかもしれない。でも、伯爵令嬢が?ナイナイ。
ここでディートより先にクラウド殿下が言った。
「ヴィッテ嬢のパルテ伯爵家はもうすぐ侯爵家になるよ?
ディートとの婚約は関係なく、パルテ伯爵家は貢献度が高いからね。
前からその予定だった。
だから、君が心配するディートの汚点にもならない。
なぜならヴィッテ嬢は君と同じ侯爵令嬢になるのだから。」
「え………」
「それに君の理論だと、爵位の一つ下までしか婚約者に相応しくないようだけど。
スミソナ侯爵家と王家は何度か縁組があったよね?王子とも王女とも。
王家が、他国の王族もしくは自国の公爵家との縁がなく侯爵家と縁を結んだことは汚点なの?
王家と実家のどちらもバカにしているのかな?」
「あ………」
「私はヴィッテが伯爵令嬢のままでも問題ない。
だが、君みたいに思う貴族は少なからずいるかもしれないから、いいタイミングだったな。」
これでもう批判される理由はないだろう?王族にまで関わる問題になるからこれ以上は口を出すな。
暗にそう語るディートにカサンドラは何も言えず、フラフラと出て行った。
ディートが好きだったのか公爵令息の婚約者になりたかったのかは不明だが、カサンドラがこの教室に現れることはもうないだろう。クラスメイトたちは自分のことでもないのにホッとした。
102
お気に入りに追加
1,343
あなたにおすすめの小説
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
恋という名の呪いのように
豆狸
恋愛
アンジェラは婚約者のオズワルドに放置されていた。
彼は留学してきた隣国の王女カテーナの初恋相手なのだという。
カテーナには縁談がある。だから、いつかオズワルドは自分のもとへ帰って来てくれるのだと信じて、待っていたアンジェラだったが──
やり直し令嬢は本当にやり直す
お好み焼き
恋愛
やり直しにも色々あるものです。婚約者に若い令嬢に乗り換えられ婚約解消されてしまったので、本来なら婚約する前に時を巻き戻すことが出来ればそれが一番よかったのですけれど、そんな事は神ではないわたくしには不可能です。けれどわたくしの場合は、寿命は変えられないけど見た目年齢は変えられる不老のエルフの血を引いていたお陰で、本当にやり直すことができました。一方わたくしから若いご令嬢に乗り換えた元婚約者は……。
婚約破棄イベントが壊れた!
秋月一花
恋愛
学園の卒業パーティー。たった一人で姿を現した私、カリスタ。会場内はざわつき、私へと一斉に視線が集まる。
――卒業パーティーで、私は婚約破棄を宣言される。長かった。とっても長かった。ヒロイン、頑張って王子様と一緒に国を持ち上げてね!
……って思ったら、これ私の知っている婚約破棄イベントじゃない!
「カリスタ、どうして先に行ってしまったんだい?」
おかしい、おかしい。絶対におかしい!
国外追放されて平民として生きるつもりだったのに! このままだと私が王妃になってしまう! どうしてそうなった、ヒロイン王太子狙いだったじゃん!
2021/07/04 カクヨム様にも投稿しました。
私が妻です!
ミカン♬
恋愛
幼い頃のトラウマで男性が怖いエルシーは夫のヴァルと結婚して2年、まだ本当の夫婦には成っていない。
王都で一人暮らす夫から連絡が途絶えて2か月、エルシーは弟のような護衛レノを連れて夫の家に向かうと、愛人と赤子と暮らしていた。失意のエルシーを狙う従兄妹のオリバーに王都でも襲われる。その時に助けてくれた侯爵夫人にお世話になってエルシーは生まれ変わろうと決心する。
侯爵家に離婚届けにサインを求めて夫がやってきた。
そこに王宮騎士団の副団長エイダンが追いかけてきて、夫の様子がおかしくなるのだった。
世界観など全てフワっと設定です。サクっと終わります。
5/23 完結に状況の説明を書き足しました。申し訳ありません。
★★★なろう様では最後に閑話をいれています。
脱字報告、応援して下さった皆様本当に有難うございました。
他のサイトにも投稿しています。
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。
しげむろ ゆうき
恋愛
姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。
全12話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる