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ある日、ディートは両親からヴィッテに会いたいと言われた。

どうやらクラウドから国王陛下にディートとヴィッテのことが伝えられて、国王陛下から父へとヴィッテに関することが伝えられた。
どうやら、ヴィッテのパルテ伯爵家が侯爵に陞爵するらしい。
侯爵家が一つ減ったからな。あのバンズ家が。


なので、婚約を結ぶなら早い方がいいとのことだ。
婚約者のいない未婚の裕福な侯爵令嬢なんて、縁談が殺到するだろうから。
弟の婚約を結ぶのも、姉が公爵令息の婚約者だと繋がりを明確にしておいた方がいいだろうと。
 
 
毎週のようにデートを重ねて、ディートもそろそろ正式に婚約しようと思っていたところだ。
ヴィッテと過ごすのは楽しいし、口数も増える。
それに、婚約者になった方が、もっとヴィッテに触れられるしな。


週末に約束を取りつけ、両親とヴィッテを合わせた。

結果は合格。問題なく正式に婚約を結ぶことになった。

両親的にはディートの気持ちが7割、あとはヴィッテの性格と適正と会話力を確認したらしい。

母曰く、『計算と天然のどちらでもない間を無意識にすり抜ける嫌味のない令嬢』だそうだ。

なんとなくわかる気がする。

地味な装いをしていたこともあって、目立つ令嬢ではなかった。
だが、急に注目されても物怖じしている様子はあまりなかった。
学園でも、いつの間にか批判はなくなっていた。
まぁ、1人だけはまだうるさいが、侯爵令嬢になるならそれも問題なくなる。



正式に婚約したことが伝わったのか、その1人だけうるさい令嬢がやってきた。
スミソナ侯爵令嬢カサンドラである。

「ディート様、正気ですか?公爵令息が伯爵令嬢と婚約だなんて。
 相応しいとは思えません。我が侯爵家の方がディート様の汚点にはなりません。」

汚点?伯爵令嬢が?クラスメイトたちはカサンドラの言い分に首を傾げた。
男爵令嬢ならば延々と話題になるかもしれない。でも、伯爵令嬢が?ナイナイ。

ここでディートより先にクラウド殿下が言った。

「ヴィッテ嬢のパルテ伯爵家はもうすぐ侯爵家になるよ?
 ディートとの婚約は関係なく、パルテ伯爵家は貢献度が高いからね。
 前からその予定だった。
 だから、君が心配するディートの汚点にもならない。
 なぜならヴィッテ嬢は君と同じ侯爵令嬢になるのだから。」

「え………」

「それに君の理論だと、爵位の一つ下までしか婚約者に相応しくないようだけど。
 スミソナ侯爵家と王家は何度か縁組があったよね?王子とも王女とも。
 王家が、他国の王族もしくは自国の公爵家との縁がなく侯爵家と縁を結んだことは汚点なの?
 王家と実家のどちらもバカにしているのかな?」

「あ………」

「私はヴィッテが伯爵令嬢のままでも問題ない。
 だが、君みたいに思う貴族は少なからずいるかもしれないから、いいタイミングだったな。」

これでもう批判される理由はないだろう?王族にまで関わる問題になるからこれ以上は口を出すな。

暗にそう語るディートにカサンドラは何も言えず、フラフラと出て行った。


ディートが好きだったのか公爵令息の婚約者になりたかったのかは不明だが、カサンドラがこの教室に現れることはもうないだろう。クラスメイトたちは自分のことでもないのにホッとした。
 
  

 

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