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しおりを挟む私がディート様に告白したのは、バンズ侯爵家から助けてもらおうと思ったから?
なにそれ?
私の疑問を無視してディート様は更に言う。
「君が私に告白したのが、バンズ家との婚約の3日前。
もし、私が君と付き合うことにしていたら、うちの公爵家を盾にできた。
しかし、私が断って君は婚約した。
その後、君が同じ曜日に一人でどこかに行くことに気づいた。
令嬢が一人で行動するのは珍しいだろう?
しかも、君はウンザリしたような疲れた顔で戻ってくる。
気になって後をつけると、金銭のやり取りをしていた。
学園では禁止事項だ。
それで何かあるんじゃないかと調べ始めた。以上。」
…うん。そうなのね?何かちょこちょこ引っかかる部分はあるんだけど、これが事実だ。ディート様はそう言ってるのね?じゃあ、私の告白もそれが事実なのね?ん?
「こらこら。ヴィッテ嬢、ディートに流されないで。ディートは肝心な部分を端折ったね?」
肝心な部分?
「ディート、ヴィッテ嬢の行動を見るようになったキッカケは?」
「…だから告白…」
「の時の最後の?」
「…笑顔。」
笑顔?
「…っはぁ。私が断った後、君は笑顔で礼を言って去っていっただろう?
他の令嬢には告白と断ると、泣かれたり、縋られたり、抱きつかれたり、怒られたりする。
悔しそうでもなく、悲しそうでもなく、あっさりと笑顔で去っていく令嬢は初めてだったんだ。
だから、笑顔の理由が気になって君を観察していた。
それで、バンズ家のことを知って、私に助けてもらおうと告白したんだと思った。」
なるほど?ん?
「私、好きですって言いましたけど?」
「……助けてもらうために言ったんじゃないのか?」
「いえいえ。元々は告白するつもりなんてなかったんです。無謀ですからね。
ですが、婚約することになって、その前にダメ元で告白したかったんです。
それで、やっぱり振られてスッパリ諦めて婚約しました。」
ディート様は何かに引っかかったのか首を傾げている。
クラウド殿下がディート様に代わって聞いてきた。
「じゃあ、前からディートに好意を持っていたってことなんだね。
ディートのどこがいいと思ったの?」
何で本人の前でクラウド殿下に話さなきゃいけないんだろう……まあ、いっか。
「実はですね、前に階段から落ちそうになったところをディート様に助けていただいたのです。
私を支えたせいで、おそらく腕に痛みがあったと思うのですが、『問題ない』と言われて。
その素っ気ない態度と、こっそり『痛っ!』って後で言ってる姿が可愛かったんです。
あと、あの反射神経が素晴らしかったですね。」
「あー。階段の令嬢は君だったのか。
咄嗟に手すりを掴んで落下を免れたって聞いたけど。何で落ちそうになったの?」
「……単に躓いたのです。お恥ずかしい限りです。
改めまして、ディート様。その節はありがとうございました。命拾いしました。」
「大げさな……でもないか?あのままだと顔面から落ちたかもな。」
「そうなんです。ですので、何か困ったことでもあれば言ってください。
私にできることならお手伝いしますので。」
「……じゃあ、何かあったときに。貸しということだな。」
クラウド殿下とディート様がバンズ家とうちに関わる出来事に関与してきた理由が納得できたような、そうでないような微妙な気持ちだったけど、もうバンズ家の人たちと関わらなくて済むと思うとどうでもよくなった。
話が終わり、誰も廊下にいないことを確認して私は応接室から出てった。
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